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第一章 航宙試験 (4)

第一章 航宙試験

(4)

「アルテミス9宙港センター。こちら第17艦隊旗艦アルテミッツ。全艦出港準備完了」旗艦アルテミッツの航路管制官が自分のコムに向かって言うと少し経ってから

「第17艦隊旗艦アルテミッツ。こちらアルテミス9宙港センター。全艦の出港準備完了を確認した。第一層第1番ゲートより順次エアロック解除。エアロック解除を確認後、誘導ビームに従い順次出港せよ」やがて、アガメムノン級航宙戦艦のドックヤードの巨大なドームが閉じ始めた。完全に閉まると航路管制官が、

「エアロック解除確認。ランチャーロック解除。出港します」艦本体がゆっくりと下がった。やがてゆっくりと誘導ビームに沿って艦が動き出すとシノダ中尉はシートにホールドされた体で覗き込むようにスコープビジョンを見ていた。

そしてアルテミス9の宙港を離れると改良された多元スペクトルスコープビジョンがミルファク恒星を中心とした映像と自艦の位置を映し出した。星系外の星や星系は近くの星から全てADSWGCナンバーが順次表示され始めた。

新たに開発されたスコープビジョンは、映像に奥行きがあり、素晴らしい宇宙の情景を見せていた。シノダ中尉だけでなく、艦橋にいる他の管制官も声が出た。

シノダ中尉は右前方に座るヘンダーソン中将を見ると

「提督、素晴らしい光景ですね」と自然と口から言葉が出た。

ヘンダーソンは左後ろを振り返り頷くと「確かにな」と言った。

同じ層から出港するアルテミス級航宙空母が航宙戦艦の反対側から出港し始めた。

他の層からもワイナー級航宙軽巡洋艦やヘルメース級航宙駆逐艦、ホタル級哨戒艦が出港し始めたのが見えた。「すごい、これが艦隊の出港風景か」シノダ中尉は初めて見る映像に興奮していた。今回の「第321広域調査派遣艦隊」に含まれるのは、正規の艦数に戻った第17艦隊712隻の他、強襲揚陸艦60隻、それに搭乗する陸戦隊3000名、工作艦24隻そして民間技術者と探査機材を乗せた輸送艦30隻である。


 1時間後、全艦艇がアルテミス9を右に見て所定の位置に着くとハウゼー艦長から

「提督、全艦艇、所定の位置に着きました」それを聞いたヘンダーソンは、ヘッドセットのコムを口元に動かすと

「第321広域調査派遣艦隊の全参加艦艇に告ぐ。私は第17艦隊司令長官ヘンダーソン中将だ。我々は、これから新しい航路の開発と資源星系を求め出発する。アルテミス9を出発後、ADSM24の跳躍点に向かう。そしてADSM24に跳躍後、ADSM67跳躍点とは別にある未知の跳躍点に入る。それから先は何があるか解らない。よってどの様な状況であっても総司令部の指示に従うこと。単独の判断による行動は全体しないようにしろ。全員が無事に航宙をする鉄則だ」そこまで言うと少し間をおいて、「今回の出動の成功と全員無事の旗艦を約束する。全艦発進」

 スコープビジョンに映る、先頭に位置するホタル級哨戒艦のグリーンマークが順次ブルーマークへシフトし始めた。

哨戒艦が動き始めたのだ。興奮冷めやらぬシノダは、食い入るようにスコープビジョンを見ていた。やがて艦隊はミルファク恒星を右に見て右舷120度、下方30度に進路を変更し、ADSM24跳躍点方面に向かった。跳躍点まで後、6光時約2.5日の行程だ。

ヘンダーソンは、全艦が標準航宙隊形で発進した事を確認するとアッテンボロー主席参謀、ホフマン副参謀そして新たに第17艦隊司令部に加わったウエダ副参謀に声をかけた。 その後、ハウゼー艦長に「空戦隊長のユール准将を呼んでくれ」と指示すると3分後待っていたかのようにすぐにアルテミッツの司令階にユール准将の映像が現れた。それを確認するとヘンダーソンは、

「ミルファク星系内にいる間に、この艦を含め推進エンジンに改良を加えられた艦の航宙試験を行う。単艦でのテストは終わっているが、複数の艦の行動を伴うテストはまだ、行っていない。もっとも今回の派遣はそれも目的の一つだが。そしてその後、新型戦闘機「アトラス」の試験飛行も行う。こちらもカワイ大佐の単独飛行によるテストは終了しているが複数機によるテストは行っていない。どちらも集団で統一行動を取れることが実用の最低条件だ。今から2光時航行して衛星の公転軌道に交差しない位置まで航宙後、テストを開始する。テストの詳細は、同行している開発部員から送らせる。それまでに目を通しておくように」

「はっ、了解しました」ユール准将の返事と共に映像が消えた。各参謀も敬礼すると自分の席に戻った。その様子を確認したヘンダーソンはハウゼー艦長に

「艦長、頼みがある。シノダ中尉に艦内を説明してくれ。だれか適当な人はいないか」

「解りました。すぐに当直外の者をアサインします。少しお待ちください」と言ってシノダ中尉の方を一度向くとすぐに自分席の前にあるパネルに何やら打ち込んだ。



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