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異世界でスパイになった俺、どの国にも味方せず暗躍していたら戦争の引き金を全部握っていた  作者: 桜庭ユウト


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第30話:均衡の価格

 均衡は、守られた。


 だがそれは、

 誰もが満足する形ではない。


 荒野での会合から、三日後。

 世界は、何事もなかったかのように動き出した。


 王国は、国境警備を通常水準に戻した。

 帝国は、輸送計画を修正した。

 灰の都市は、取引を再開した。


 表面上は、平穏だ。


 だが、水面下では——

 確実に何かが変わっていた。


 王都。


 ヴァルター・グレイヴは、王の前に立っていた。


「彼は、誰の味方でもありません」

「しかし、敵でもない」

「今回の衝突は、回避されました」


 王は、安堵したように息を吐いた。


「では、彼は——」

「危険です」


 ヴァルターは、はっきりと言った。


「敵としても、味方としても」

「そして、制御不能です」


 王は、言葉を失った。


「だが、排除すれば」

「帝国が動きます」

「都市も反発します」


 つまり——


「彼は、触れない方がいい存在です」


 王は、静かに頷いた。


「……距離を置こう」

「賢明な判断です」


 その決定は、

 一つの意味を持つ。


 ——守られる代わりに、見捨てられる。


 一方、帝国。


 アシュレイ・ノックスは、報告を聞き終え、苦笑した。


「やられたな」

「彼は、どこにもつかなかった」

「だが、我々の選択肢を潰した」


 副官が、慎重に問う。


「次は、どうしますか」

「長期戦だ」


 即答だった。


「彼を排除する計画を立てろ」

「だが、直接ではない」


 視線が、鋭くなる。


「世界の方を、動かす」


 それが、帝国の結論だった。


 灰の都市。


 評議会では、静かな合意が形成されていた。


「彼は、価値が高すぎる」

「だが、都市の外に置くべきだ」


 セレイン・ヴァル=ノクスは、結論を述べる。


「彼を、都市の“資産”から外す」

「今後は——」


 一拍置いて。


「ただの、通過点とする」


 守らない。

 だが、敵にもならない。


 それが、都市の選択だ。


 夜。


 俺は、灰の都市を離れていた。

 護衛はいない。

 見送りもない。


 リュシアだけが、同行している。


「……全て、うまくいったはずです」

「そう見えるな」


 街の灯りが、遠ざかる。


「戦争は起きなかった」

「多くの命が守られた」

「それでも——」


 彼女は、言葉を探す。


「あなたは、どこにも居場所がない」


 正しい。


 俺は、歩きながら答えた。


「均衡を守る者に、居場所は要らない」

「ですが、人は——」

「人は、いずれ疲れる」


 それも、分かっている。


 足を止め、振り返る。

 遠くに、灰の都市が見える。


「今日から、俺は——」


 一拍、置く。


「誰にも守られない」

「王国にも」

「帝国にも」

「都市にも」


 完全な無所属。


 それが、均衡の価格だ。


 リュシアは、拳を握った。


「それでも、あなたは——」

「続ける」


 迷いはなかった。


「均衡は、一度守っただけでは意味がない」

「壊れ続ける世界を、支え続ける必要がある」


 それは、英雄の役目ではない。

 国家の仕事でもない。


「誰にも属さない者の役割だ」


 夜風が、強く吹いた。


 その瞬間、

 遠くで雷鳴が響く。


 嵐の前触れだ。


 帝国は、動く。

 王国も、変わる。

 世界は、次の段階に入る。


 均衡を守った代償として、

 俺は——


 完全に、盤面の外に出た。


 だが、外にいるからこそ、

 見えるものもある。


 信用されない男の戦いは、

 ここから——

 もっと過酷になる。


(第3章・了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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