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衣服を溶かす魔法4



「手紙で言ったとおり、今朝方、宿主の発見によってオルセンの死体は見つかった。このベットの上でボロボロの状態で発見され、部屋からは運び出された」


「ボロボロの状態とは詳しくどう言ったものなんだ?」


「あまりキアンの前で詳しく表現したくは無いが。必要であろう情報だけを抜き出して言えば、内側からも外側からも激しい損傷行為が行われていた。簡潔に言えば、その状態からは死亡時刻が断定できないほどだ」


「なるほど」


 部屋の中にはゆらめく光だけが動く。燭台の温もりが側にいるキアンにだけ伝わる。ヴァンダインは鼻をクンクンと動かし、その蝋の溶ける匂いを鼻腔で感じる。


「マルコ、何故カーテンを開けないんだ。態々、火を灯すまでも無く、朝日は昇っているだろう?」


「時間的にはそうなんだが。まぁ、開けたら分かる」


 誰も何も答えず。キアンは足早に窓に近づき、カーテンを開ける。


「わぁ、暗いですね。真っ暗です。真っ暗な壁」


 後ろに面している建物の壁が窓のすぐ側にまで迫っており、日の光を遮断している。この分だと一日中、外から光は差さないだろう。


「この土地は宿場町として人気の土地となり始めているらしくてな。どんどんと高値で買い叩かれ、昔からある建物は全て新しい宿へと作り替えられている。これはそれを推進したい人間の嫌がらせの一つなのだと」


「ひどい話ですね」


「ここの宿主はそれでも昔からのこの店を守りたいからと下がる売り上げを常連に感じさせない様に今も経営しているという事らしい」


 マルコは感情が乗らないように冷静を装って宿の経営状態を述べる。ヴァンダインもまた思いを表情に乗せたりはしない。


「向かいの建物との距離はかなり短い。人の体が通り抜けられる幅すらない」


「鋭いな。そうなんだ、犯人はここから出る様な事は出来なかった」


「そうだ、文書には密室だったと書かれていたな」


「窓はこの寝室と先ほどまでいた2つの部屋に一つずつ。言ったとおり、この2つの窓は壁との距離が狭い為に道にはならない」


「入り口は一つか?」


「あぁ、一つだけだ。表の部屋に一つだけ」


「ではその扉が犯行時刻に閉められていたという事だな。だが、犯人は分かっているのだろう?」


 マルコは苦々しい顔をする。頭を少しだけカリカリとし、ヴァンダインを見つめる。


「分かってはいるのだが、犯人が犯人らしくないというか。この部屋は密室だった時には殺されたオルセン以外に1人の女性が居たんだ」


「そう書いてあったな。けれど、状況から見れば、犯人はその女性以外にはあり得ないのだろう。であれば、お前の直感がどうであれ検挙して仕舞えば良い」


「おいおい、冷たい奴だな。君はさっさと検挙して、手柄を上げたい若手の市警と同じかい?」


「事件に私見を持ち込み、特別扱いするのも、随分とその他大勢に冷淡だと思うが」


「普段なら僕だって平等に判断するところのだが、今回はどうもな」


 煮え切らない態度のマルコを見て、ヴァンダインは責めあぐねる。


「まぁ、ヴァンダインに偏見を持って欲しく無いから、僕の私見がどう言った理由で生まれたかは今は伝えないでおくよ。先に、君の意見が聞きたい。彼女は隣室で待機しているから、面会はその後にでもしよう」



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