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衣服を溶かす魔法18



「『衣服を溶かす魔法』その限界は衣服に留まらない。具体的に言うならば、人が身につけている全てのものを溶かす事が出来る魔法と言うのが、正しいだろう」


「……全てのものを溶かせる、か。服を溶かす以外にどのように使う。僕には未だ分からないな、ヴァンダイン」


「私がそれに可能性を見出したのは、彼女の顔を見た時だった」


 皆の視線はリシェルへと飛ぶ。血色が悪く、肌が白い、大人の女性の素肌らしいそれが顔の全てをありありと表現する。皆の視線が更に深く集まると次第にリシェルの血色は良くなっていく、ほんのりと肌に赤みが浮かぶ。


「あまり見ないでください、恥ずかしいです……。意識がないままにここでお風呂にでも入ったのかもしれませんが、気がついた時にはすっぴんだったんです」


「なるほど」マルコは何かに気がついたのか、一つ小言を言うと、頷く。


「人が身につけているものを溶かすと言うのは、つまり生体以外の全てを溶かすと言う意味なのか。それが如何様に立体的さを保持していなかったとしても、それが薄く塗っているだけの化粧だとしても」


「そう言う事だ。リシェルは意識を失っている間に、全身に魔法をかけられた。それによって彼女は衣服のみならず、化粧までを落とす事になってしまった。今朝の彼女の姿の原因はそれだ。オルセンにもその魔法はかけられていたが、それはカモフラージュだろう」

「そして、そこからの利用方法がこの事件の鍵となる」


 ヴァンダインは説明に一息置く。


「22時と数十分。オルセンとリシェルがどのように部屋の中に入ったのかという所だが。私の推理では、オルセンは部屋に入ってくる時点で死んでいた」

「宿主が見た、オルセンとリシェルの姿は、姿を変えている犯人と眠らされていたリシェルの2人だった。殺されたオルセンは背負った荷物の中に入れられていた。犯人は部屋に入った後、オルセンの死体をベッドの上に投げると、それを事件の撹乱の為『打撃を与える魔法』によって損壊させる。そして、彼女にオルセンの姿の化粧を施す」


「待て待て、その化粧っていうのもそうだが、どうやってオルセンの姿になった犯人は顔馴染みの宿主を通り抜けた?犯人の体に『偽装の魔法』などがかけられていたのなら、それこそ魔痕探知師の君に見つけられる」


「魔法では無いからだ。犯人は魔法とは別の技術でその姿をオルセンの姿にしていた。その方法というのが、化粧という事だ」


「化粧などで何を誤魔化すというんだ。肌でもくすませるのか?」


「分かっていないな、マルコ。あの夜、多くの人物がその姿を見ていたはずだ。それもかなりの長い時間、嫌になるほどに見せられていたはずだ」


「あっ!」リシェルが大きく声を上げる。

「見ました。私、それを見ました。確かに嫌になるくらいに」

「彼の映画。彼の半生が描かれた冗長とした映画。その中の主人公は主演俳優の姿が分からなくなるくらい、オルセンの姿そっくりにマスクと化粧を施していました。あの技術ですね!」


「そう、マスクと化粧。それを犯人は奪うと、自分にその処理を行って、オルセンの姿で薬物で眠らせたリシェルと殺したオルセンを持って宿に向かった。先ほど言った、作業を済ませたのち、リシェルをドレッサーの前に座らせて、マスクと化粧を施し、その後『衣服を溶かす魔法』を時限的にかけておく。犯人は23時の部屋が閉まる前に廊下の窓から脱出する。窓の鍵は後で魔法で閉まる故に証拠は残らない」

「眠らされていたリシェルは今朝発見された場所と変わらずドレッサーの前にずっと座っていた。マスクと化粧、朦朧とする意識の中で、彼女は鏡に映る自分の姿を見る。そこには殺されたオルセンとそっくりの自分の姿があったという事だ」

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