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衣服を溶かす魔法14



 路地裏。湾口都市の路地は都市部のそれとは様相が異なる。陰気で埃の溜まった都市とは違い、陽は朗らかに影を落として、風が隅に潮気を貯めていく。


「まだ聞かなくてはいけない話もある。待っている者もいる。急ぐぞ」


 市警の視線がギリッと強まる。食い縛る歯が口から剥き出しにされて、感情が露わになる。出会った時の規律を守る市警と言った風貌はもう見て取れない。


「何をするつもりだ。お前、分かっているのか。市警には市民を守る責務と攻撃する特権がある。このような人目のつかない場所に入り込んで有利になるのは俺の方だ。俺を上手く利用としようともそうはいかない」


「……はぁ、君は馬鹿か。そもそも、衆目の場である方が私に有利であることなど、私だって分かっている。魔法戦闘においても、徒手空拳でも戦闘だとしても、私の方がかなりの不利だ」


「だったらなんだ、お前は何がしたい。俺はお前に付き従う理由もなければ、立場でもない、それに力もないと来ている。俺は捜査の妨害をされたと訴え出ても良い。俺についている魔痕が見えた事とその強気なブラフで騙そうとしてもそうはいかない。やはり、そこらの魔痕探知師の輩と何ら変わらない詐欺師の紛い物だ」


「よくそこまで言葉に出来るな。動揺の激しさから見れば、お前が何かを隠しているのは必定。ならば、そこに出来事を推理する事ができるというのに」

「愚かにも、大人は無駄に魔法を使ったりしないし、知ろうともしない」


「何が言いたい」


「魔痕が体に残っている時点で疑わしい。それが『衣服を溶かす魔法』というのなら尚更、用途は偏る」

「マルコが言っていたな、君は昨晩、六区の市警庁に居たと」


「あぁ」


「そんな、人間の体に何故その様な魔痕が残る?」

「偶然に魔痕を部屋に見つけるのはともかく、体につけるなんて事は極めて珍しい。意図しない魔痕など無い」

「お前は昨晩、『衣服を溶かす魔法』を自分に向けて使った。どこで?そんなものは決まっている。上司であるマルコには知られてはいけない場所、それはベッドの上だ」


 市警の顔は青ざめる。今までにないほどに鮮烈に。恐怖に見違える感情は真実をそこに証明する。


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