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和紙の里の秘密  作者: JIN
7/10

ラブコメ編第2話


「いちか、いきなり高校に行くつもりか?」


刹那が尋ねると、いちかはふいに悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「あら~? 刹那くんはロリコンなのかなぁ~?」


「は? 何を言って…っ!」


刹那の言葉が途中で止まった。目の前のいちかの姿が、みるみる小さくなっていく。制服がぶかぶかになり、あっという間に小学生くらいの姿に変化した。


「どーん! 小学五年生バージョンだよ♪」


「お姉ちゃん!?」いちごが悲鳴のような声を上げた。「嘘でしょ、嘘よね? 刹那くん、これって…」


いちごが刹那を激しく揺さぶる。刹那は目を丸くしたまま、小学生姿のいちかをまじまじと見つめていた。


「いや、その…」


「あれ~? 中学生の方が刹那くんの好みかな?」


ぱっとまた姿が変わり、今度は中学二年生くらいのいちかがウィンクした。


「どっちがいい? 小学生バージョン? 中学生バージョン? それとも…」


元の高校生の姿に戻ると、いちかは刹那に密着距離まで近づいた。


「このままの私が一番いい?」


「ちょっと! お姉ちゃんったら!」


いちごが真っ赤な顔で割って入った。その目には涙が浮かんでいる。


「どうしてそんな…そんな姿を刹那くんに見せるのよ! ずるい! 私だって…私だって…!」


「あれ~? いちご、嫉妬しちゃってる?」


「ち、違うわよ! ただ…ただ…!」


いちごは刹那を睨みつけた。


「刹那くんはどっちがいいのよ!? 小学生? 中学生? それとも…」


「待て待て! 落ち着け! お前まで巻き込まれるな!」


刹那は両手を上げて必死に宥めようとした。頭の中は完全に混乱していた。確かにどの姿のいちかも可愛いが、そんなことを口に出したらさらに事態が悪化するのは明らかだった。


「あのさ、まずいちかが学校に行くこと自体は…」


「あ! 話題そらし!」


「そうよ! はぐらかさないで!」


双子の声が同時に響いた。刹那は思わず後ずさりした。


「わかったわかった! とりあえず…元の姿が一番落ち着くよ」


「ふ~ん」いちかが不満そうに頬を膨らませた。「じゃあ高校生の私でいいのね?」


「そ、そうだな…」


「ちなみに私の高校生の姿はいちごのデータを忠実に再現してあるわよ?」


いちかが誇らしげに胸を張った。その瞬間、いちごの顔が真っ青になった。


「嘘!いつそんなことを…」


「え~?一緒にお風呂入った時、いっぱいチェックしたじゃない♪『お姉ちゃん、そこ触らないで!』って可愛らしく逃げるいちごとスキンシップしたでしょ?」


「あ…あれは…!」


いちごの顔が真っ赤に染まった。


「まさか私の体のデータを…あの時に盗んだのね⁈」


いちかは悪戯っぽく笑いながら、刹那に近づいていく。


「どう?私のこの姿、いちごと寸分違わないでしょ?もっと近くで見てみる?」


「ちょ、お姉ちゃん!私と同じ体で刹那くんに迫らないで~!」


いちごが慌てていちかを引き離そうとするが、いちかはすり抜けるようにして刹那の背後に回り込んだ。


「ねえねえ刹那くん、私といちご、どっちが好み?」


「そ、そんなこと…」


「お姉ちゃん!もうやめて!」


いちごが必死にいちかを引き離そうとするが、今度はいちかがぱっと小さくなり、小学生姿になって刹那の膝の上に座った。


「じゃあこの姿ならどう?」


「やめてよ~!」いちごが泣きそうな声を上げた。


刹那は完全にパニック状態だった。目の前で繰り広げられる双子の攻防に、どう対応すればいいのかわからない。


「あのさ、二人とも落ち着いて…」


「「落ち着いてないのは刹那くんでしょ!」」


二人の声がぴったり重なった。その調和の取れた反応に、思わず笑ってしまいそうになるのを必死にこらえた。


「わかったわかった!とにかく…いちかは元の姿に戻ってくれ。いちごも、そんなに怒らないで…」


「ふ~ん」いちかは不満そうに元の姿に戻った。「じゃあ、明日から高校に行くってことでいいんだね?」


「そ、そうだな…」


「やった~!」いちかは嬉しそうにはしゃいだ。「いちご、制服貸してね!あ、でもデータ取ってあるから自分で作れるかな…」


「もう…お姉ちゃんったら…」いちごは呆れながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべていた。


「でもたまには小学生姿も…」


「ダメです! お姉ちゃん!」


二人の姉妹げんかが再開する中、刹那はそっと縁側から逃げ出した。社務所の陰で深いため息をつきながら、空を見上げた。


「じいちゃん…これも全部計算ずみだったのか…?」


夕焼け空からは、何の答えも返ってこなかった。ただ、社殿の方からはまだ双子の元気な声が聞こえてくる。


「まったく…賑やかすぎるぜ…」


そう呟きながらも、刹那の口元は自然と緩んでいた。神社に活気が戻ったのは、確かに悪いことじゃない。ただ…これからどうなるのか、考えるだけで頭が痛くなった。

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