表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/32

(第四部:天正伊賀の乱編)第四話:第二次天正伊賀の乱

第一次天正伊賀の乱の勝利に酔いしれ、大宴会は来る日も来る日も続いていた。里の自治会から、特別給付金が支給され、酒が振舞われ、大宴会は十日ほど続いた。

「伊賀の里に手を出すからじゃ!」

「我が先祖は、奈良の時代から自治を保っておる」

「応仁の乱も切り抜けたぞ!」

「織田信長なんぞ、何するものぞ!」

「馬鹿息子をシバキあげたわ。泡を食っておろう」

「ぐわはっはっは~」


(あぶら)小路(こうじ)(うり)(まる)は嫌気がさしていた。

「またか・・・」

先日、決着がついたばかの『天正伊賀の乱』は終わっていなかった。戦に遺恨はつきもので、とことん行き着く所までいかなければ終わらなかった。今度は、織田家側で見届け人を任された。朱雀派の副師範である鵡川(むかわ) 六郎(ろくろう)()に呼び出され雀武帝親衛隊の指定麻雀牌を携え、戦に同行させられた。

「(大きな戦いに不破雷獣殿が参戦しないから、私のような下っ端に声がかかる。もっと働いてくれよ~)」紫電海と瓜丸に、仕事が殺到していた。

「(でも、輝雷美さんのお願いだしな~)」断り切れない事情もあった。

「パパは、具合が悪いの。瓜丸さ~ん、お願いね」とニコやかにお願いされては引き受けないわけにはいかなかった。しかし、背後にいた不細工だけが気に入らなかった。

「行け、行け、行ってしまえ。行けいいんだ。行って遊んでろ」上から目線で失礼極まりなかったのは、鎌田軟骨だった。関係者のような不躾な振る舞いで、ずっと「雀武帝親衛隊の屯所」に居座っていた。

「(あの輝雷美さんに馴れ馴れしくしていた不細工は一体誰なんだ?)」


鵡川と瓜丸が、比自山城を訪れると城内に緊張が走った。

「開門願おう!」鵡川は、堂々と言い放った。酒宴疲れで寝ぼけていた伊賀衆は、不意を衝かれた。

「何用じゃ!」虻蜂幻燈斎(あぶはちげんとうさい)は、状況が呑み込めなかった。

「朱雀派より『宣戦布告』でござる! 速やかに開門されたし! これこの通り、雀武帝親衛隊にも立会いをお願いした! 尋常に勝負されたし!」こうして、引き受けない訳にはいかなくなった。

「(懲りておらなんだか・・・)一刻(2時間ほど)待たれよ!」この間に、情報を集めさせた。2時間後に開門するまでに、戦闘態勢は、何とか整った。


―回想シーン―

「ええい、状況はどうなっておる!」幻燈斎は、怒鳴り散らした。

「北の雨乞山城(あまごいやまじょう)は、織田家の先鋒を務めた甲賀七虹士(こうかしちこうし)に蹂躙されています!」

「何だと? 藤林長門守(ふじばやしながとのかみ)よ、行って鎮圧してくるのじゃ!」

「御意!」藤林は、北に走った。

「東の壬生野城(みぶのじょう)は、織田家の先鋒をつとめた北条の風魔夢幻斎(ふうまむげんさい)に荒らされております!」

「何だと! 百地丹波(ももちたんば)よ、東へ向かえ!」

「御意!」百地は、東に走った。幻燈斎は、一気に追い込まれた。麻雀を打てる者が居なくなってしまった。

「う~む・・・。どうするか・・・。わしが一人で打つのか・・・。佐々木・村木・鈴木の『伊賀麻雀侍』は柏原城の守りの要じゃ。呼び戻すわけにはいかん・・・。一人でも残しておけばよかったのぉ・・・」思案に暮れているところに、カラスが飛んできて、座敷に止まって話し始めた。

「幻燈斎よ。困っておるようだの」

「黙れ、抜け忍め! 貴様の手など借りぬわ!」

「意地をはるな! 里を潰す気か? ここは、私の故郷でもある。里を守るため、手を貸そう。しかしこの次は、助けてもらうぞ」

「・・・」幻燈斎は、しばし思案に暮れたが思いなおしニヤリとした。実に腹黒そうな笑顔だった。

「そういう条件ならば、致し方ない。ここは、ひとつ手を借りよう。貴様の里を守るためだ!」

「・・・分かっておる」と言いながら、カラスは飛び去った。鵡川は、裏口から北に走る藤林と、東に走る百地の情報を得ていた。

「(くっくっく。藤林と百地を走らせたな。戦力はガタ落ちの筈だ。こちらの読み取りだ。これで、ここで負ければ柏原城に逃げるしかあるまい)」鵡川の巧妙な作戦だった。


2時間後に開門したが、麻雀対決は平楽寺で行うことになった。

「おのれ! いらぬ時間稼ぎばかりしおって!」鵡川の愚痴は止まらなかった。朱雀派の兵を残し、自身は平楽寺へ移動した。平楽寺では庭に座敷が用意され麻雀卓が準備され、一応日傘が差してあった。瓜丸の宣言で『第二次天正伊賀の乱』は始まった。


「それでは、これより『私闘制限の詔』に(のっと)り、『第二次天正伊賀の乱』を開始します。対局に参加する代表者は、前へ出てください」

朱雀派は、副師範の鵡川六郎太が前へ出た。

伊賀衆は、頭領の虻蜂幻燈斎が前へ出た。

そして、朱雀派の二人目は、青龍派三番手である青野潤吾だった。

「(こいつが、伊賀衆の頭領か。食ってやる!)」と意気込んでいると、伊賀衆の二人目が前へ出た。

「久しぶりじゃないか」という声に驚いたのは潤吾だった。

「お前は!」黒脛巾組の頭領の天翔一馬だった。

「お前、今は確か青龍派の天組三番手だったな。なるほど、朱雀派に通じていたか」

「くっ、バレたか」潤吾は慌て(あわて)狼狽(うろた)えた。一馬は、雀悟以上の麻雀打ちの筈だった。道場では、雀悟にすら土をつけられずにいた。

「知っていたさ、玄武流派との親善試合前から」一馬は、静かに応えた。

「・・・」潤吾は、言い返せなかった。そして、その冷たい眼差しと言葉に背筋がゾクリとし、冷汗をかいた。戦う前から一馬に飲まれていた。

「積もりに積もった借りを返してやれ!」鵡川にせかされた。しかし、青龍派で互いに修行していた時も、潤吾は一馬から直撃和了したことが一度もなかった。

「(しかし、乱闘戦なら・・・)」勝機を、ドサクサの勝利に託した。しかし、瓜丸から指示されたものは、乱闘戦ではなかった。


「この度の戦は、『第一次天正伊賀の乱』の結果を受けたものであります。従って、麻雀と戦で遺恨を残さぬために、前回とは異なった形で勝敗を決めて頂きます」

「・・・と、言うと?」鵡川は、出鼻を挫かれた。思惑が外れたためだ。

「親の権限を拡大させた【攻城戦】です」

「攻城戦は、チーム対抗には不向きなのではないでしょうか?」潤吾が食い下がった。

「『私闘制限の詔』は、武力で解決しないことを目的に発令されました。先日の『第一次天正伊賀の乱』は、詔の目的を台無しにするものです。雀武帝親衛隊本部からも、許可を頂いております」

「仕方ないのぅ」鵡川は食い下がらなかった。

「それでは、ルールの説明をします」


北に走った藤林は、甲賀七虹士と内通した。

藤林長門守(ふじばやしながとのかみ)】服部半蔵、百地丹波とあわせて「伊賀の三大上忍」と呼ばれていた。伊賀の北部を支配していたともされ、甲賀にも影響力が強かったらしい。その存在は謎に包まれており、正確な記述はほとんど残っていない。そのため、幾多の創作者の想像意欲を掻き立ててきた。戦国最強の武将である武田信玄に仕えた山本勘助に忍術を教えたという伝説すらあるが、息子に代替わりしている可能性もある。


藤林は、朱雀派の見張りをかいくぐり、甲賀の地に辿り着き、忍者屋敷の門を叩いた。

「おかえりなさいませ、王水どの」紫色の忍者服を身に付けた、老人の紫水(しすい)が跪いて藤林を迎えた。

「うむ。伊賀攻めが始まった。直ぐに甲賀を撤退させよ」藤林は命じた。

「ははっ」隣にいた青い忍者服の女性である清水(せいすい)が走り去った。

「織田家との約束は、戦闘開始の案内人役だけじゃ。問題あるまい」

「王水どのは、この戦をどのように捉えておいでですか?」

「幻燈斎は、自分勝手な男じゃ。信用が出来ん。しかし、くみとが連れてきた黒幅脛組の頭領は厄介だ。敵に回すと面倒な男だ。油断できん。ここは、『第二次天正伊賀の乱』を見届ける。それから、我々の立ち位置を考える」

「御意!」紫水は、静かに消えた。

「ふ~、幻燈斎次第だ・・・。しかし、あの小僧(百地丹波)は大丈夫か?」百地丹波はこのとき25歳、脂の乗り切っていた藤林長門守から小僧扱いされていた。こうして北の戦は、一旦鎮火した。甲賀衆が姿を消したので、朱雀派も勝負の成り行きを静観した。


東に走った百地丹波は、壬生野城(みぶのじょう)で風魔夢幻齋と激闘を交わしていた仲間たちと合流した。

「五右衛門、助太刀に来たぜ!」

「おおぉ~! 心強いです!」百地の援軍は、味方を勇気づけた。

「本陣は大丈夫なのか?」

「北は、藤林が向かった。麻雀は、黒幅脛組の頭領が参戦してくれている」

「伊達の忍びが? 信用できるのか?」

「元頭領のくみとが、伊賀の抜け忍らしい。今の頭領は信用できそうだ」

「ならば、抜こうは問題ないな。こちらは、風魔の忍びが厄介だ」

「よし、蹴散らそう!」


石川五右衛門(いしかわごえもん)

安土桃山時代の実在した大盗賊。伊賀の石川村の生まれだという。秀吉の宝を盗もうとして失敗し、息子とともに釜茹での刑に処された逸話(いつわ)は余りにも有名。百地丹波に忍びの術を教わったという。歌舞伎、文学、ゲームなどにも登場した超の付く人気者。


伊賀衆は、壬生野城を中心にゲリラ戦術を展開した。百地丹波の弓で夢幻斎の陣を攪乱し、侵入を幾たびも退けた。

(らち)が明かないな」夢幻斎はしびれを切らした。陽が傾き始め、夕刻に差し掛かっていた。

「(この夕闇を利用するか・・・) むんっ!」と印を結ぶと、味方の兵を数万に見せる術を放った。

「わしの術は、卓内でも、野外でも効果的だ、伊賀の者どもめ! 狼狽(うろた)えよ!」数万の兵に見える影は、城を覆いあちらこちらから攻撃を仕掛けた。火の矢が無数に飛んできて、場内外を焼き始めた。鎮火に走る伊賀衆は翻弄された。

「! いったいどこから湧いて出た?」

「夕闇に紛れているだけだ! 狼狽えるな!」

「鎮火にあたれ! 急げ!」

「火の矢だけだ、今のところ襲撃はない!」言うや否や、そこここで爆竹と銃撃の音が散乱し、伊賀衆を一層狼狽えさせた。そこに五右衛門が放っていた斥侯(せっこう)が戻ってきて報告した。

「全軍あわせて5万の織田本軍が迫っております。四方六方から押し寄せております。明日の朝には到着する模様です! 風魔は、(おとり)部隊(ぶたい)に過ぎません!」

「なぁにぃ~!」百地丹波は顔をしかめた。しかし決断は早かった。

「比自山城まで、撤退する! 犠牲を出すな!」

「御意!」


〔第五話:攻城戦〕に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ