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ルイ・ワイス男爵のほろ苦い恋  作者: 栗皮ゆくり
2/3

2.寄り添われたら

 傷付いた気持ちを抱えて屋敷に戻ると、ケビンが待ってくれていた。


 僕の顔を見ると、何も言わず背中を2回ポンポンと叩いて、「またな」と言って帰った。


 「やっぱりケビンは優しい男だな。だからモテるのかな……」

 

 爵位でも容姿でもなく、彼の人柄が魅力でもてはやされているとしたら……。


 「僕は本当に何の魅力もない男ってことなんだろうな」


 ちょっと親し気にされたからって、ひとりで舞い上がって告白までして、自分が情けなく滑稽に感じた。


 「もう今日は寝よう」


 じんわり目に涙が滲んでも、拭う気にもなれなかった。


 ◇


 それから何日も経ったが、失恋の傷は一向に癒える気配が無かった。


 「ルイ……そんなに好きだったのか? レナ嬢のこと、ほとんど知らないだろ?」


 僕のあまりにもの落ち込んだ様子に、ケビンは不思議そうにしていた。


 「ケビンは失恋したことがないから分からないんだよ。失恋の痛手は、親密さと比例するわけじゃない」


 「なんだよ、その哲学者みたいな言い草は。まぁ、あんまり思いつめるなよ」


 そうは言っても今回の失恋は、なかなか気持ちの整理がつかなかった。


 「失恋なんて初めてじゃないだろ……」


 ある天気の良い昼下がり、ひとり呟きながら気晴らしにシュマン通りを歩いていた。


 通りにできた新しいカフェには、恋人たちが仲睦まじくお喋りをしている。


 「つまらないな……」


 ふと向かいの通りに目を遣ると、レナ嬢の親友のミケット・ラキーユ伯爵令嬢の姿を見つけた。


 自然と足がミケット嬢の方へ走り出していた。


 「ミケット嬢!」


 「……ワイス男爵様、ごきげんよう」


 ミケット嬢の瞳が小さく揺らいだ。


 きっとレナ嬢から僕の告白を聞いているのだろう。


 声を掛けたものの、その後の会話が思い付かず、まごまごしているとミケット嬢が口を開いた。


 「そんなに気まずそうにしないで。レナも気にしていたわ……傷付けたようだって」


 僕が何と言っていいか分からず黙ってると、ミケット嬢は目の前にある老舗のカフェに誘ってくれた。


 「すみません、気遣って下さっているのに何も言えなくて」


 「それだけレナのことを好きだったんでしょ? 恋は実らなかったけど、その想いは尊いわ」


 ハッとしてミケット嬢の顔を見た。


 「親友さえも気づかない、僕が一番聞きたい言葉をミケット嬢が言い当てるなんて……」


 「ふふふ、親しくなくても分かることもあるわ」


 「僕の恋の師匠と呼ばせて欲しいくらいです!」


 「そんな……大げさよ。私も恋はほとんど知らないの。だけど、レナのことを好きになったあなたの気持ちは分かるわ」


 「分かってくれます!?」


 「当たり前よ! だってレナは私の親友ですもの」

この作品は、「それぞれの恋」シリーズの一編です。 以下の順で読むと、登場人物たちの心情やすれ違いをより深く味わえます。


・ミケット・ラキーユ伯爵令嬢の不条理な初恋


・ケビン・シェロー伯爵の気まぐれな恋


・ルイ・ワイス男爵のほろ苦い恋


※各話は独立していますが、順番に読むと余韻が深まります。


※ 2025年7月には、レナ・ジュラン子爵令嬢の視点から描かれる物語も公開予定です。

 7月8日(火)公開予定!

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