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ルイ・ワイス男爵のほろ苦い恋  作者: 栗皮ゆくり
1/3

1.女心が分かれば苦労しない

 僕はしがない男爵だ。


 もっと高い爵位、もっと恵まれた容姿なら……と何度思っただろう。


 そんな風に思うのは、何もかも手にしているケビン・シェロー伯爵が親友だからかもしれない。


 「ごめんなさい……ルイ様は私のタイプじゃないの」


 今回もこっぴどく振られた。


 社交界では、お喋りでうざったいと令息たちからは敬遠されているレナ・ジュラン子爵令嬢。


 でも僕は、彼女は底抜けに明るくて、お喋りなのも相手を楽しませるためだと知っている。


 だって、いつも相手を傷付けたくないと思っている僕と少し似ているから。


 そう思って密かに慕っていたのだけど……。


 ◇


 レナ嬢をイメージして明るい色のチューリップの花束を準備した。


 少しでもカッコいい紳士と思って欲しくて、ケビンと同じブティックで衣装も誂えた。


 「ケビン、どうかな? 様になってる?」


 「ハァー、ルイ、本気でレナ嬢に告白する気か?」


 僕はケビンに何度も告白することを止められていた。


 「僕を止めることはできないよ。運命の人だってビビッと来たんだ!」


 「ルイ、そのセリフ何回目だよ。毎回一目惚れしては振られているだろ」


 「今までの相手は僕を知らなかったけど、ルナ嬢とはちゃんと接点があるんだから……」


 「ハイ、ハイ、もう勝手にしろ。接点って……図書館で少し会話しただけだろ」


 「フンッ、気のない相手に自分の本を貸してくれたりしないだろ」


 きっとケビンみたいに、数えきれないほど令嬢たちから告白される人には分からないんだ。


 僕たちの純粋で控えめな恋心を……。


 (ケビンだって平民の女にいれあげて、報われない恋愛をしているくせに)


 普段は絶対口にしない悪態を心の中で呟いて、レナ嬢に告白するために図書館へ向かった。


 ◇


 図書館に着くと、レナ嬢がいつものソファで本を読んでいた。


 (あっ、いた!)


 花束を後ろ手に持って、そーっとレナ嬢に近づく。


 「や、やあ、レナ嬢! 今日も恋愛小説を読んでいるの?」


 「えっ? あっ、ルイ様、こんにちは」


 レナ嬢は目ざとくチューリップの花束を見つけて指さした。


 「わぁ、綺麗なチューリップ! どなたに? 恋愛小説はそのためのお勉強だったの?」


 屈託のない笑顔で、僕の腕をレナ嬢は揶揄うように肘でつついて来る。


 「レナ嬢が貸してくれた本が参考になったのかも……」


 「あら! それは良かったわ」


 「ほら、君、端を折っていたページ……レディをイメージした花束を贈って、ナイトが告白するシーン」


 「私、その場面が大好きなの! 憧れるわ……」


 突然、チューリップの花束をレナ嬢の目の前に突き出した。

 

 「えっ……?」


 閉じてしまった目をゆっくり開けてレナ嬢の表情を窺うと、そこには僕が期待していた笑顔は無かった。

この作品は、「それぞれの恋」シリーズの一編です。 以下の順で読むと、登場人物たちの心情やすれ違いをより深く味わえます。


・ミケット・ラキーユ伯爵令嬢の不条理な初恋


・ケビン・シェロー伯爵の気まぐれな恋


・ルイ・ワイス男爵のほろ苦い恋


※各話は独立していますが、順番に読むと余韻が深まります。


※ 2025年7月には、レナ・ジュラン子爵令嬢の視点から描かれる物語も公開予定です。

 7月8日(火)公開予定!

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