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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第二界「Q in 無」

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は7し「近くて遠い距離」

 悠々と流れていた川、結局の所あの(みどり)の水は癒しの(あか)き手を持つ彼女の喉を刺す凶器になりかねないだろう。旨過ぎて死ぬなどと言う生温い段階を飛び越えて喉が焼け(ただ)れると言った方向性での壊死も有り得る。植物と人間の間に立つ者が居るとするならそれは或る意味動物であり、クリネが翠の水と交わったその観測結果としての緑の瞳の一線は仮に人がそうした場合のマイルドな中間の反応と言えそうな(てい)が有った。

 では果実はどうか。この芳醇な果実にもたっぷりの水分量が含有されている。かと言ってこれを食わずに進む選択肢など無く不可抗力な面が有るが心配事としてはどうしても浮上して来る歪な模様のこの二対の果実ではある。赤と白と言う色合いからするとまだ動物寄りな存在感を披露しているので自分が毒見すればまだいいか、と足の爪で傷付いた方をクリネが(ついば)もうとすると唐突に視線を感じた。撫でるのを一旦辞め食事する事に同意したカイナ・クイナ少女の物だった。何か言いたい事が有る様だな、と感じたクリネは毒見への動作を止め彼女を見やる。

「綺麗な方を食べて欲しいんだけど…」

 何か言いにくそうにしている。功労賞として綺麗な果実を自分に寄越すと言う考えなのだろうか。いやそうだとしても主従の間柄は前提として有るので今回はそれを有難く受けるにしても毎回となるとちょっと受け付けない部分はある。それを言葉にしていい物だろうか、何か思い至って居ない部分は無いか。彼らは知性存在としてそれぞれ転生した。自分は鳥、カイナ・クイナ少女はでは一体何がどうなったのだろう。人から転生すると言う時に器が動物へと代わった自分が居るのならこちらの少女もまた元が男性であったりするのだろうか。<ヒトつキかせてホしい、『前世』のキオクはある?>少女に要求の是非を問う前にこう尋ねた。少女は首を横に振る。なるほど、と思う。彼らは魂の繋がり方に自覚的である。赤の他人同士がこの異世界にアトランダムに押し込められた訳では無いと言う所までは共通の理解があり、その発露がクリネの献身的な態度でありこの少女の褒美としての愛撫であった。だが尋ねたクリネ自身前世の記憶らしい物は朧気だ。自身も元女性かも知れないな位のやんわりとした出自に対する理解しか今まではなかった。

 少女が何を嫌がっているか、それは嘴で運んで来た方を食す事による間接キスである。前述の通りこの世界はカップルでは同性同士、同性の友人同士だと異性としての転生が待っている。どちらにしろ初めの第一歩としての所では性的接触が躊躇(ためら)われるのが道理の関係性と言う事になる。魂の繋がりの割に自身の目の前の異性への拒否反応が強い事に少女は気付き始めていた。

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