表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Gronwidz Girl  作者: 白先綾
最終「界泣」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

8無し7.6「透明な想い」

 14歳世界の果実に何も先達の想いが籠って居ないのか、と言う話は実際そうではない。むしろ緑に染まっているクリネにも緑に染まって居ないクイナにも等しく食の癒しを与えられていたそれは属性的には透明な液体側の、エコーの科学が発展しない時代から脈々と受け継がれて来たほぼ緑の声を知らない死者の蓄積だった。

 クイナは今ひどく悲しい心境に在った。相棒も喋られない挙句苦しい状況で、追い掛けた涙の行方も分からず彷徨う事しか出来ない。川を自身の編み出した作戦で決死の想いで乗り越えた結果がこれでは浮かばれない。クイナには今出来て以前では出来なかった事がある、自身の血を長時間見る事だ。クリネの浸食防止で流れ出る血を見続けると死を否応にも実感せざるを得ない。恐怖、諦念。自分はここまで来ておいて結局選ばれた回のカイナ・クイナでは無いのか…。

 血は地面に落ちた瞬間、不純物交じりの液体と化す。仮に水分を弾く種類の地面だったとしてその後体内に戻ったとしても人体を支える血の巡りの中に入る事はもうない、むしろ健康を酷く損なう。それは或る種空気に触れても不純さは一緒だ。だからこそ血はデリケートで扱いは慎重にならなければならない。浮遊していた透明な涙と並ぶ純粋さを誇る血、そのこの世界における在り(よう)…。

 涙はクリネの落下とほぼ時同じくして消えた。涙は何処かへ向かっていたのでは無く、クリネの限界を引き出す亡霊でしか無かったのでは無いか。つまり、あの円模様の位置には然程重要な意味がない、たまたまあそこになった。自身が亜神、この世界の化身だとすれば、重要なのはむしろクリネそのものだ。クリネは今限界まで緑に染まっている、多分15歳世界の果実を啄みなどすれば即座にこの世界から命の灯を失い去る事になる。朦朧とした意識の中しきりに果実を啄もうとする手の内のクリネをクイナは何度止めただろう。クイナは思い立ち、クリネが落下した地点こそ目的地だったと言う仮説を実証すべく当て所無く彷徨っていた場所から戻る。当初ただの血だまりだった様に思われたが、今となっては赤土、と言っていい様な円模様がそこにはあった。この世界で初の、クイナの血が地面と交わりかつ停滞しそのステータスを維持している部分。ならばあの涙側の円模様はこれの影だ。あそこに混ぜるべきは、15歳世界の果実の苦みを知る前の美しく壮健だった頃のクリネの、緑。閃いたクイナは涙の円模様にゆっくりと近付く。果実とクリネを優しく置いた後ポケットから羽根を二枚取り出し、その上下に付いた緑色を確認する。これを癒したら終わりだ…扱いは慎重に、デリケートに。そして火に薪をくべるかの様に二枚で互い違いになって居る羽根の緑側の方を円模様に付着させた。大部分の14歳世界の先達の涙、そして少数の15歳世界の先達の涙、その両者が実りを迎える(とき)は今ここに来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ