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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
最終「界泣」

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8なし6「君は可愛い」

 ……いいに込めたる想いの半分は今渡す、もう半分はもし渡せなくても構わない。それはそれでこの世界に敗北したと言う事だ、冥土の土産にするのも一興だろう。それでも「心」の発見に伴って絶対に届ける所まで行ってみせる。込めた、とは言っても後々の出来事に準えた後付けでは有るがそれなりに彼女の届けてくれた絶唱に並ぶ位の自信は有った。後はその想いごと世界の残された謎に体当たりでぶつかると言うだけの事だ。

「クイナ、君は可愛い」

 その時クイナには脳伝達を超えたれっきとした発声が耳に届いた様な幻覚めいた物が生じていた。その時とはクリネが二つ目の果実を切り落とした時の事だ。それを最後に頭の中でクリネとの繋がりに関しての何かが捻じ切れショートした様な感覚が有り、そのショックでクイナはしゃがみ込んでしまった。独り、孤独、暗がり、暗澹(あんさん)。勿論クリネ自体は居る、独りである筈がない。だが今まで通常では考え得ない様な精神の温かな繋がりが有った心にはそう言った伽藍洞としての心象風景が入り込んだ。今までのクイナの緊張の糸として存在していたかの様なその絆とも呼べそうな共有感覚はクリネの中にもかつて有って、そして今は無い。一個目を落とした後のクリネが最悪の事態として予期した通り、脳伝達の機能は役目を終えたのだ。「技」として自分が格闘するであろう方の一個目で留めておけば良かったか、いやそれをどうするかで揉めている時間などは無い。多分クイナが食べる事自体は極力止めなくてはならないだけの不穏さはあるがそれでもこれからの旅程で果実を持たずに行けば消耗している彼女の精神衛生上良くない展開になるのは目に見えている。今まで緑の声に纏わる物を届かせまいとして来たクリネの苦渋の独断だった。

 暫くしてクイナはまた野放図に広がった左頬の緑の線を治癒しようと動いたがそれをクリネに(つつ)いて咎められた時、彼女は潔く諦めた。何しろもしかしてクリネの知性の方にも何か問題が生じたのではと言う悲しい疑いが有ったので、そのクリネが(いさ)める為に知性を発揮して動いた事でしゃがみ込むだけではなくなる程度にはクイナのメンタルにとってのいい風が吹いた。クイナの治癒は己の血を代償とした補填行為である、それは施術をする側のクイナが一番よく分かって居たのでクリネの意志は尊重したい、もうそんな左頬の愛らしさ確保などと遊び人をやって居られる時間や立場は、終わったのだ。

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