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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
最終「界泣」

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8な4「高度飛翔の成就」

 クイナの川越え作戦はこうだ。崖際を進み、川の誘惑がこれ以上は危ないと言う地点からその距離を参考に半径を設定して、川の崖に流れ込むポイントを円の中心とした崖側での半円を描く様にして飛翔し川向こうに辿り着く。こうすれば上手く行った場合地面に激突する事を避けつつゴールを迎える事が出来る筈だ。

「クリネもある程度あの大口を見た後は橋の上で余裕が有りそうだったじゃない? 何と言うか、前に居た崖向こうの一帯より重力に祝福されている感じは受けるよ。大丈夫、今までだって全てどうにかなった」

 クリネも頷く。それとは伝えられないがクリネの頭に反響する種類の言葉も昔よりは大分穏やかだ。それがここまで来てくれたねありがとうと言う祝福と呼べる物なのか遂にここまで来てしまったかと言う諦念なのかはクリネには判然としないがそれでもクイナが祝福と言う言葉を咄嗟に出す感性は微笑ましかった。彼女は彼女なりのアンテナでこの世界を感じ取っているのだ。

 川にはすぐ辿り着いた。川と言うより小川か。ちょぼちょぼと崖に弱弱しく滝とも呼べない下方への水流を形成している。もうここで流血したカイナ・クイナは数える程しか居ないのだろう。しかし割合と言う事で言うときっと九分九厘上手く行かず死んでいる。供養の意味込みでクイナの作戦は是非成就させたい物だ。クリネもクリネで誘惑に打ち勝つ抗体が有る訳では無いので自身の逃避的飛翔を行い向こう側で待つ事にした。

 クリネが向こう側に辿り着いたのを合図にクイナも自身の人としての恐らく最後の大飛翔を敢行する。大体川までの距離、15m。前に走り出してクリネに止めて貰った時より大分近い。近付けると言う事は誘惑する力も川の横幅に応じて弱まっていると言う事か。半径の規模がこじんまりとして居なければ現実的では無いのでこれは随分と好都合だ。その目的の都合上別にこないだの崖際で行った高さ方面での10mトライアルの様に高さ自体は求められては居ないがどの道重力発現を相手取れば英字のW軌道を辿る事になるのでクイナはある程度の高さ、つまり地面と同程度の位置をキープ出来るバランスは維持しようとしていた。最初の重力発現、彼女は見る見る落下して行く。だが落ち着き払ってそれを凌ぐ。中心角で言う45°まで来た、残り4分の3。重力遮断が帰って来た時、彼女は上昇しながらクリネにピースサインをしてみせた。何かを企んでいる様だ。残り半分、つまり崖が無ければ川が続いている筈の丁度その先にクイナが来た時、彼女は進むのを止め上昇のみに主眼を置いた動きを始めた。一度二度と重力発現でそれがリセットされても諦めず、地面から遂に10mのポイントまで来た時に、

「スキー!」

 と叫び体で大の字を作る。高度飛翔、その悲願成就の瞬間であった。

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