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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
最終「界泣」

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は7し「光の砂時計」

 何度目かのクリネの上空逃避を経て、二人は空気の壁にぶつかった感覚が有った。正確には壁と言う事は無く激突して負傷をしたと言う様な話では無いが、感覚的には今までの風を感じるかの様な有機的な橋の上での滑走には無かった新しい変化を齎す地点が確かに在った。そのぶつかる周期は段々と(せば)まって行き、ぶつかった後の余韻が消えないうちに次が来る様にまでなった所で二人は一瞬で視界が切り替わった事に気付く。橋の上には居るが、間違いなくここは数瞬前に自分達が居た橋の一地点ではない、滑走によるワープ擬きでは無く完全にワープが有ったのだろう。現に景色に今まで見た事も無い様な大穴が広がっている。緑の血の海を丸ごと飲んでいる大口かの様なその大穴は二人の心を奪った。それこそ歌で伴奏で励まし合うその余裕が有るどころの話では無かった、恐怖、畏敬、そう言った感覚に二人は圧倒的に飲み込まれている。クリネは思う、これは「心」なのか? いや、スケール感が我々に収まっていない、これは有機物の橋を胃腸に準えた例を取るなら正に心臓だ、緑の血の還り着く場所。大口が満杯になったならどうなるのか。物事には必ず限界が有るもので、この大口の許容範囲を超える流血の歴史が積み重なるともはやこの血塗られた試練が実施される会場すら与えられる事は無いのではないか。カイナ・クイナの屍で構築されたカイナ獏の砂遊びの場グロン。だが獏とて遊びが永遠に続く物とは思っていないだろう、クイナが流血した時舐め取った様なその鮮血は彼の体に蓄積し限界に近付く筈で、それが分かった上で彼は遊んでいる、人類の行く末を見つめている。赤を空虚な緑にその姿を変えた血だった筈の液体はこうして大口に集う事で何を成そうとしているのか。緑の海の全てが一遍に流れ込んで行かない様大口の境目にある一定の()き止めが機能しているのを見るにある種の大きな砂時計なのか、全てが大口の下の受ける側に流れ落ちた時、人類には何が待っているのか。そんな事を考えていたらまた大きな空気の壁にぶつかる感覚があり、二人はまたワープさせられた。

 二人が振り返っても大口は無い。また大口の向こう側に出たのではなく元居た場所に戻されただけだと仮定し前を見ても今の所は何も見えない。やるべき事は緑の怨嗟に耐えながら希望への渇望を受け取りワープ擬きで前に進む事だ。この世界の「心」ならぬ「真」を見た二人は何かしら燃える闘志を宿していた。あそこが、これから辿り着く場所に関係する何らかのゴールだ。クリネは今まで先も見通せない中でじっと緑の亡霊との格闘に(いそ)しんで来たが、これからはもう少しクイナの行く末に関して案じながらその格闘で相手が繰り出す拳を()なす事が出来る様になっただろう。それこそ、9割の黒い怨念に交じる1割の光の砂の蓄積が折れそうになった彼の心を再度奮起させ昂らせ始めていた。そしてその光の蓄積の中心点にはクイナの思いやりの歌声が有った事は言うまでもない。

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