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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第三界「sight無」

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3トーリー「お祭り、その終演」

 一度悪戯心でクイナは空が茜の時の川に近付いて行く進路を取った事が有る。クリネは意図に気付いた時表情から何かを読み取ろうとしたがやっぱりなと言う顔つきだった。彼女は鼻歌交じりの事が多いがこう言う鼻歌が男性ボーカル由来の時は何かを企んでいるのだ。魂が元々男性な彼女はかなりお転婆なのに加え近くに居る異性の気を引きたかったのもそう言った行為の裏には有ったのだが、緑の一線の広がり方を調整する時以外触らない様に細心の注意を払っているクリネの右頬をわざと撫でる素振りをする前、いつもは50cm程度に抑えている小飛翔を1mにする前、ポケットの羽根を(おもむろ)に取り出してクリネをくすぐろうとする前、彼女は決まって鼻歌を変調させる。普段は可愛さを追求する意味で女性ボーカルもので統一されているそれを変えて来るので実に分かり易かった。

 暫くして彼女は鼻歌を辞めた。何となく足取りのスキップを交えた軽やかさも失われ憑りつかれた様に平坦なリズムになって来た。段々と小走りになった時このまま行くと危ないなと理解したクリネは先の男性ボーカル鼻歌の伴奏を大音量で彼女に送り込んだ。そこではっとなったクイナは我に返り歩を止めて自分と川の距離感を確かめる。いつか丘で見た時よりも近い。逆に距離は有ったとしてもあれだけの美しさを目の当たりにしたのだ、もう今回の件の火付け役はあの時の光景だったのだと言っても差し支えないだろう。

「ごめんクリネ、どうしても川の水が飲みたい衝動に襲われて無我夢中で走り出しそうになってたよ。無理の無い悪戯に留めないとこの世界は渡り歩いて行けないか…」

 と独り言ちる様に呟くと、クイナは進路を正しい川から離れた物に即刻修正すべく踵を返したのだった。


 二人はもう旅が終盤に差し掛かっている事を予期するにつれ、旅のお供としての楽曲に勇壮な力強い歌を多くセレクトする様になっていたし、鼻歌よりも実際のボーカル付きを選びがちにもなっていた。行軍における行進歌と言った風情だったがクイナは段々と自身の女性としての可愛さを追い求める哲学にそぐわない違和感が募り出していた。そこで音遮断のタイミングを見計らって時々優しい女性ボーカルの歌を挟んでいたのだがそんな器用に歌い分けられる訳でも無く、音遮断が終わってもそちらを歌い続けてしまうケースも有りメインが勇壮な物可愛い物どちらとも言い難い複雑なメドレー形式になる事が多くカオスな様相を呈して居た。それに付き合うクリネもどんどん急変するパートへ対応する柔軟な伴奏力が研ぎ澄まされて行ったが明らかに能力の無駄遣いだなと自分でもおかしかった。<きっとこのサキにこうイう『カオス』がマっているよ>と脳伝達で彼女に送ると、

「カオスにはカオスをぶつけないとね。ただのストレートな行進歌じゃこの歪な世界には似合わないよ。紆余曲折あってようやく辿り着く果てへの旅路の演出としてはこの上無い物に仕上げないと」

 と意気込み上々だ。二人は二人で居る限り性別を奪われようが人間の肉体を奪われようが一騎当千の軍神足り得ると、この時二人は強く信じ込めていたのだった。

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