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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第三界「sight無」

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6のがたり「薄明の星の川」

 クイナが果実をやたらと触っているのはこれが抱き枕代わりとして機能している面があるからだ。体が睡眠を求めている事の証として今夜の相方の成熟し具合を触感で確かめ楽しんでいるのであった。クリネは実は間接キスはともかく抱き枕は自分でもいいんじゃないかとジェラシーに似た期待を抱いていた。

 はっきり言って丘に辿り着くまでがピクニックの全容と言っても差し支えなかった。と言うのももう果実を手にした段階で条件反射的に半分クイナは覚醒状態を辞めている、寝入る準備を脳の神経が伝達しているのだ。それでもどうしても眠るのは蛍の圧倒的な光の群れを確認してからにしたかった。その光の記憶をいつもの悪夢の闇を振り払う足掛かりとしたかった。

 クイナは記憶の大半を占める男らしい歌を大っぴらに歌うのを嫌っていてそれでも他に選択肢があまり無い以上大体がメロディーラインだけを追うハミングを選択していたのだが、今回はその短い旅程において歌詞付きの歌声を選択していた。女性ボーカルでは有るが女性の歌寄り過ぎない中性と言ってもいい位の平和で牧歌的な一番星についての歌だ、女性要素と男性要素の程良い彼女に似つかわしい選曲と言えそうだ。

 クリネはその歌を知っていたが悪戯心でロック調にした伴奏を流した、作曲の才能が有る訳では無いのだが歌に関する記憶のパズルを組み合わせる事でこの夢世界ではそんな事も実現してしまう様だった。クイナは一瞬怒りんぼの顔をして拳を作ったが眠たくなって来ている自分の覚醒を維持するのにはちょうどいい選択でもある事に気付き、そんなクリネの優しい配慮交じりのちょっかいを止めようとした事を少し後悔した。拳は哀れな果実に振舞われ、お手玉の時の様に一時(いっとき)果実が宙を舞った。


 丘に着いた時には音遮断の度に歌い直していた歌もぴったり位で終わっていた。起きている部分と寝ている部分が丁度半々位の、まだ視界がぼやけては居ない程度の状態で丘に辿り着けた彼女は感嘆の吐息を漏らした。

「こんな血生臭い世界でも綺麗な物は有るんだね…ちょっと記念写真」

 と指でシャッターを切るマネをする。もう一回、とクリネもその指カメラの範囲に収めて再度シャッターを切る。最後にと架空の撮影者に向けてピースサインをしてクリネとのツーショットを収めた体でその戯れは終いとなった。

「ふわぁもう眠くなっちゃった…今日はクリネを抱き枕にしようかなぁ」

 と言うが早いか選択の余地無くクリネに覆い被さって来るクイナ。クリネは憧れて居た抱き枕としての喜びを嚙み締めつつ徹底的なクイナの美意識の籠った右頬に彼女が触れる事の無い様にその頬を地面に擦り付けて眠り付いた。

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