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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第二界「Q in 無」

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3トーリー「束の間のお祭り」

 彼らには転生前のきっちりとした記憶は失われてしまっている。あまりそう言った物がしっかり残っているともう二度と戻る事の無い現世への未練としての想いが増幅してしまい試練の日々の邪魔となる可能性が高いのも有るが、それでも現代の「夢」である創作物の一つである歌、音楽、こう言った物の記憶は割とはっきりしていた。夜空の星座を眺めて人生に想いを馳せる、では無いが、彼らが元居た世界を推し量り望郷の念に駆り立てられる上でこれ程便利で好都合な星座相当の物もまた無かった。この世界にはちゃんとした夜は無いが黄昏を彷徨う世界だけあって昼から夜のバリエーションとしてのカラーリングだけは各種取り揃えていたので、蒼の薄明に空が染まる時特にこの二人は前世での歌の知識を実際に喉で、脳内ハミングで披露し合う事になるだろう。そしてそれは二人の安らかな時間を演出する何よりの助けとなる筈だ。

 時は今に戻るがまた今代のカイナ・クイナはよしよしと脳内ハミングバードの左頬を撫でている。彼はあまりに愛撫が強烈なので右頬にまで指先が回ってしまうのでは無いかと何処か不安だったのだがそれは杞憂で、彼女は右頬に触れない限界を計算し尽した上で自己満足とも言える獣的な愛撫を自身も楽しんでいたのだった。

「ねぇねぇカイナクイナの優秀な相棒さん。右はこのまま緑のキリっとした線が入ったカッコいいイケメン顔を維持して貰って左はナデナデし易い穏やかな顔で居て欲しいんだけどどうかな? 何か言いたい事が有るなら鳴く、それでいいよって事ならさっきの歌の続きを届けてくれる?」

 多分前者を取るとほぼ鳴き声が悲鳴としか言いようが無い程の永遠撫で回しの刑が待っているんだろうな、と諦念を覚えたクリネは伴奏の続きを選択した。が10秒程音遮断が邪魔したので結局撫で回しの追加分まで強行されてしまってくたくたになった。やったー!と撫で回しから離れてそこら辺を不用意に飛び回るカイナ・クイナ少女。下手すれば足を挫くと言うのに元気が(ほとばし)っているのはいい事だがクリネからすると優秀と言うより危なっかしい相棒である。だが、何事も中庸とはよく言った物で両の頬を緑在り、または緑不在としてしまうと恐らく何もかもの歯車がずれて来る。一回取り入れた以上もし知識アクセス手段が無くなるともうメンタルのバランスが維持出来ないだろう。そして彼女の癒しの朱が無くなれば無くなるで過剰なストレスや緑の死の浸食にそれこそ潰されかねない。お祭り騒ぎをしているカイナ・クイナ少女は己の欲望に従う事でその実十分世界の綱渡りを上手にこなしている名アクトレスだった。であれば自分はせいぜい名バイプレイヤーを目指すとするか、彼女を中心とした歌劇の花道を演出し終える一生もまた一興だと彼はあまり穏やかな顔とは言えない毛先の乱れた左頬そのままに決意を新たにした。

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