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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第二界「Q in 無」

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はな4「二人だけの”N”orchestra」

 ここで言う緑の水摂取で獲得した所における心の声とはああすれば良かったこうすれば良かったと言う死に至ってしまった後悔、怨嗟(えんさ)の面が強く彼の魔眼からしても果実の「技」と並ぶ結実としての「心」には及ばないと言うそう言う実感はあった。この真心や心の温かみと言った概念から縁遠い世界において心を実感させる存在とは如何許(いかばか)りか、そんな事に想いを馳せながら彼は実を食べ終えた。緑の水を食事の補佐で取り込む訳にも行かないなりに水分含有量に優れた果実ではあった。そして彼女の方が流石に早かったので幾らかは彼女側には待ち時間が発生したがそれでも彼女が目を丸くして興奮気味に驚く位には彼の速度は異様だった。

「凄いねクリネ。鳥さんの食事会なんか有ったら飛びっきりで一等賞なんじゃない?」

 拍手しながら感嘆の言葉を並べる彼女。それに彼も勝ち(どき)とも取れる鳴き声で応じる。初めての食事会お開きの合図だ。


 お守りの羽根は朧気な半覚醒の時には二枚なのか三枚なのかよく分からなかったがその実三枚有った。二枚を両のポケットに入れ、そして最後の一枚を彼女の金の髪飾りに差して飾る。折れない三本の絆の矢と言った体だった。それを終えると今度はぽんぽんと反重力的なまるで月の様にも思える地平で彼女はスキップして遊んでいる。先程食後にと思った右頬と左頬の扱いについてを尋ねる前の食休みをしている様だ。宙返りでもしようかな、と思ったが流石に丁度地面に対し身体が逆さの時に重力が殺意を抱いて襲って来るとまずいのでそれは心の隅に留めた。

 ハミングもしてみた。音が途切れ出す時にそれを止め、再開タイミング前にまたし出すと言うのが成功するとなかなか面白かった、分かりやすい音遮断ご苦労様です、と言った風情だ。またそれはハミングである必要はないのだがまだ本格的な歌の慣らしの準備段階としての物であった。と言うのも彼らは現実社会の「夢」の一つの結晶である歌の知識だけは前世同様豊富だった。親の夢見麻薬の薄さによる生き辛さに関しては歴代の現代っ子カイナ・クイナもこの恩恵によって少しは癒されて居たと言う見方も出来る。

 そうこうしているとハミングに伴奏が混じった。彼女は心底驚いた、果実摂食で見える幻覚の世界が顔を出したのかと一瞬疑って信頼している鳥使徒の方に助け舟を求めた、がそれは取り越し苦労だった。何やらクリネはこちらを見ながら楽し気に身を揺すっている。ハミングには大本の歌詞付きのれっきとした歌が存在したのだが、その歌を二人は共通知識として持って居た。それは14歳としては早熟でおませな印象も有るカラオケを共にしていたのだろう現代社会の友人同士だから不思議ではない、だが脳伝達と言うものがここまで常軌を逸していようとは彼女も彼自身も思っていなかった。予想を遥かに超える自身のスペックが嬉しくてクリネは身を揺すり音楽に合わせ踊っていたのだった。

Norchestra(ノーケストラ)だねこれはもう…」

 思わず呟くカイナ・クイナ少女。有り得ないのノー、脳内のノウ、そして二人で奏でているにしては規模の大きな物であるとして少し大袈裟なきらいもあるがオーケストラ、この三つを組み合わせた単語が脳内でも飛べるハミングバードと言う決め手によって完成した。むしろ重力の天邪鬼さに引っ張られない分、こちらでの彼の飛翔、飛躍加減の方が本分なのかも知れない。

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