もの5たり「緑のバラ」
彼は答える。<ああ、これはミドリのカワのミズをノんでしまったからだよ>緑の川はそれを一部取り込んだ彼からすれば多大なる蓄積、カイナ・クイナ達の流血の歴史そのものだと思われる。少女が落下時に巫女服に染み込んだそれも蒸発した訳では無くその何処かへと向かう流れの礎となった公算が高い。彼女自身はケロッとしているので代わりの血としての物もこの夢世界は補償してくれているのだろうが転んでタダで起き上がれるとは考えにくいこの世界、その元気さの代替物としてこの世界は緑色の血流の闇を深めている筈だ。これは今彼が思い付いた事と言うよりは集合知に因る物、数多の故カイナ・クイナの心の声を何処か宿しているからで、この世界の全てが分かる訳では無いが今や彼はそう言った想いの集合体にアクセス可能な状態になって居ると言えるだろう。その負荷がどう身を滅ぼすのかは置いておくとしても彼は只の知性を備えた鳥と一線を画す存在になっている。
その規格外の知識をして思うが多分その朱き血で緑の傷を癒した場合翠の水を中和している訳だから世界の意志に逆らっている分補償がしっかりとしているとは考え辛い、等量そのものではないにしろ彼女は恐らく体内の血液量が減っている。果実でなんとか回復になる部分があるにしても最大許容量と言う発想で行くと最大値が減って居そうなそんな嫌な予感はする。
「川か…こんな綺麗な色した川だなんてなんだかロマンティックだね。カイナクイナも一緒に行ってみたい気もするけど…飲んでクリネの顔も変わっちゃうしそれを触ったら血が出ちゃう様なバラの棘みたいな話だもんね、やめといた方が得策かも」
彼女も転んでタダでは起こして貰えなかっただけではなく自身もタダでは起きていなかった。二回も流血した中で獲得した経験則の様な物はあるのだ。クリネは相方の頼もしい賢明な判断に安堵した。<それがいいよ>こう伝えると暫し二人は完食に向け食を進めた。二人の進行具合はそう変わらない。先述の負荷の一環かも知れないが何故かしらクリネは少女とは言え自分より遥かに体格のいい人間と変わらないペースで食べていた。量が多いとして食べ残すとまたそれをどっちが処理するかの間接キス問題再発で揉めるかも知れない事を考えるとそれはそれで話が早いのだがそれでもその構図は何処か漫画絵の様相を呈していた。彼女も食欲旺盛な小さな相棒の一生懸命食べ進める姿に微笑ましさを覚えるのだった。




