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Gronwidz Girl  作者: 白先綾
第二界「Q in 無」

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6のがたり「魔眼の追う先」

 鳥使徒は脳伝達で<『主』たるカイナ・クイナ、よくキいてホしい>とこう続けた。(我々は多分転生前距離感が丁度いい二者だった。それはきっと人として友達だったという事。男性同士、女性同士、そこは分からない、でも多分異性同士ではない)脳伝達は音遮断のタイミングを含めずともたどたどしくそう言った込み入った内容を告げるのには向いていないが、少女は注意深く脳の中の言葉を受け取り繋げて行った。(女性だったのが男性になり鳥になってしまうともう私は何を以って私を私と定義すればいいのか分からない、だから元々男性側なのが自分だと思いたい。そして同じく男性であった筈の君の方が女性と言う新たな器を授かったのだと思う。君が言い出しにくそうにしているのは皆までは言わないがそう言う所なんじゃないかな)

 なんとなく降りて来た感覚での拒絶心に(もた)れ掛かる形で二人は自身らの関係性の言語化を試みている、そして彼女は言い出した責任感から要求の理由を遂に告げた。

「そう、ちょっと間接キスになっちゃうと色々…だってきっとカイナクイナの為にこれを毎回クリネが取って来てくれるんだよね? そこはこう、神主側として襟を正したいと言うか」

 そう言って胸を張った彼女だったが生理的欲求には逆らえずお腹が鳴ってしまった。<はいはい、カワイらしいカンヌシサマのオオせのままに>と彼は一先ずの問題が解決した安心感で彼女に右頬を見せる形で嘴で運んで来た方の果実に向き直る。彼女も爪痕の残る方の果実を手に取りながらその頬をじっと眺めた。左頬は撫でる為に出来るだけ緑の線を消し、右頬は残酷なのかも知れないが眺める為に残しておきたいと思わせる位に透き通る色合いの緑は美しい。食後彼はこの提案を受けてくれるだろうか、と言う様な事を思いながら一口。空腹と言うスパイスが活きたその味は格別で甘く香ばしい。鳥にはなったとは言え彼もこの味覚を共有している筈で、彼女はそう言った平和な日常の喜びがこの異世界に落ちた日々の中でも永遠に続いて行ってくれればいいな、とそう願った。


「ねぇ、クリネはどうして頬に緑の線が入ったの? 何か悪い物でも食べたの?」

 半分も食べ終わらないうちに疑問を口にする少女。ああ、とクリネは思った。この緑の根源にだけは彼女を触れさせてはいけない。まして体内に取り込むなどと。触れさせる、触れさせない。これは多分この世界における最終回答の一つの筈だ。彼は緑を取り込んだ事でこの世界の成り立ちを幾ばくか理解出来た、先程の出自に関するやり取りにはそこはあまり手助けにはならなかったにせよ、果実がこの世界に降り立った数々のカイナ・クイナが成り果てた屍の一部である事を彼は魔眼で察知した。敵を知り、己を知れば百戦危うからずとは言うが彼のミスはミスと言うだけでは無い。むしろ従者なりに彼女より敵対存在としての世界が見えている者としての先導が可能な痛みを伴う正解であったかも知れない。心技体、これを人の構成要素の言葉として敢えて借りるなら果実は恐らく人を生命として駆動させる「技」を司る心臓を意味している。心が、体がどこでどのような形で待ち受けているのか、彼の魔眼はまだ視るべき物全てを見終えた訳では無い。

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