8なし「亜神と亜人」
世界の腕、疲弊し切った現代世界が腕枕として微睡む為の裏世界。そこでは男が女、女が男としての可能性世界を歩んで行く。とは言え現実ほどの整合性が有るでもなく、他愛もなく連続性の怪しい事象が軒を連ねているだけ。時折自分の周囲に描かれる事象は自分が知覚した瞬間にだけ訪れる後付けの作り物なのでは無いか、と言う妄想が囁かれるものだがそれをそのまま当てはめたのがこの世界だと言っていい。ある種世界の転換点となる様な発明なり偉業なりを達成した人が異性としてのifを歩むとそれの発生確率にブレが生じる訳で、そう言う多元宇宙と言うよりも密接な関係性で裏表の両面とでも言うべき両世界が存在しているとどちらかの世界が描画の後付けに誤魔化された世界となってしまう、と言う物理法則に支配されたのが世界のカイナ、亡き物としての世界である。もはやそうなって来るとこの世界に歴として存在していると言えるのはただ一人、中心として世界が後付け描画をされ続ける人物だけだ。
この両面世界が非科学的な思考が主体であった原始時代から永くに渡り世界の嘘を嘘として封じ込めている人類への罠は、出産の際に男女の認識を間違えてはならない、と言う事。例えば男として期待したならその後男として産まれなかった場合、もう既にそのカップルは微睡世界に子供が墜ちる罠に掛かっている、夢見た間違った期待に基づく幻想をカイナと言う獏に食われてしまう。エコー検査が可能な現代ではその気付きが早期に訪れるのでまた話が変わって来る、早い話がエコーをすると確実に微睡世界での子供の在り方が変わる、と言う事だ。そしてその取り決めとは運命付けられた枠組みとでも言うべきレベルの話だ、今日死ぬ人は絶対的に死に、それを知覚する人は知覚ししない人はしないで日々をそれぞれ過ごして行くと言う様な。受精卵発生の段階で生物学的には性別が決まっている以上、間違った認識を持つカップルは居るしそうでないカップルも出て来る、それは避け様の無い話だ。
この両面世界は「核を発明する文明に未来は有るのか」、と言う事へのアンチテーゼとして存在しているかの様な所がある。核を作るのではない、人そのものを、核と並び立つレベルへ昇華させる。そう信じ切った両面世界の規範への拘束力は強く男女認識の誤りは犯罪と言うより原罪として扱われる、犯罪なのだから現実世界において処罰されると言う事にはならないにせよそう言う社会的な処刑と言うよりもっと単純に微睡世界カイナ側へと子供を否応無く吸収される可能性が出て来る。そして選び抜かれたたった一人のその中心人物はそれと知らないまま、神そのものになるのだ。神が生前深く関わってしまった民に自由に生きる術は無く、微睡世界で神となる者が与えられるべき試練に向かうと順次その後出来るだけ世界に歪を拡大させない形でその命を天寿を全うする前に絶たせられ神の使い、使徒として同じく転生する。存在そのもののステータスは現実世界が上だがこと存在の軸の部位に関しては微睡世界に優位性が有る。
だがここで問題となるテーマがある。「神のそばにいる近しい人物が先に死ぬと歪はどうなるのか」、と言う事だ。答えとしてはどうあがいても死ねない、と言う事なのだがはっきり言ってそれだけ世界に影響を与えられるなら後に死するともその人物も亜人、神に近しい存在である。また神単体においても唯一神と言う発想が有るがその意味では微睡世界カイナの神もまた絶対的ではなく周りに揺さぶられる影響力不足さのレベルにおいて亜神と言うべき者かも知れない。




