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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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閑話 小児科

「みなとせんせい!……みなとせんせい?」


「………………」


「みなとせんせい」

と、小さい手が頬に触れた。


「えっ?」


「みなとせんせい泣いてるの?」

と、院内学級という病院内にある施設で、声を掛けてきた女の子は、生まれた時から腎臓機能が悪く透析が必要な入院患者の1人だ。


「えっ! 違うよ絵本を読んで感動していたんだよ」

と、手にしていた絵本を見せて答える。


「えっ? みなとせんせい小さい子の絵本で泣くの?」

と、その女の子の側で腕を頭に組んで言ってくる男の子は、生まれた時から膵臓機能の一部が働いていない1型の子だ。


院内学級に来れる子供達は、薬や治療で生命維持が出来る子達でもある。

この二人は生まれつきというハンデを、理解し努力し我慢をしてこの病院で生活している。


院内学級に来れないベットに横たわる同じ年頃の子にも、自分達が動ける範囲で看護師や先生に許可をもらい側に付き添う。


ここに入院している子供たちは、同じ時間同じ空間で過ごす家族のみたいな関係性になる。


小児科を専門と言っても、新生児から15歳と幅があれば、治療法が分かっている病気であっても、身体の成長を待たなくては出来ない治療法であったり、移植手術待ちや、ドナー待ち、治療法が国内で認定されず認定待ち、大人の患者より制約が多い。

我慢して我慢して心の成長だけが早く育つ過程を観るのは、小児科にいる先生だけでなく、スタッフ全ての精神負担にしかならない。


でも、その精神負担を癒してくれるのも、我慢して病気に向き合う子供達の笑顔だったりする。




「なぁ、みなとせんせい。もうすぐここの研修終わるんだろう」

と、1型の男の子が言ってくる。


「そのはずよ。ねぇっ! みなとせんせい!」

と、俺の代わりに女の子が答える。


「やっぱりそうだよなぁーー」

と、男の子は言ってくる。


「次の先生もみんなを好きな先生が来てくれるよ」

と、俺が言えば、


「小児科を選んでくれるだけで、子供が好きな先生だって知ってるし、分かるよ!」

と、男の子は言ってくる。


「だってこんな邪魔くさいとこ無いんだよ。新生児の赤ちゃんから、誰のお兄さんお姉さんって聞いちゃうぐらい大きい人までいるんだよ」

と、女の子が言えば、


……なるほど、小児科は0歳児から15歳までをいうが……


「僕も見たよ。僕と同じ病気で入退院繰り返してたお兄さん、何処かに出す証明書がいるからって看護師さんに聞いてたし、あんなに大きくなれたらいいなぁ」

と、希望がある発言をする。


……学校でも企業でも難病指定申請でも、本人の経過病状を年に一回は、提出しなければいけないケースもある。


国に市に、自分はどんな病気ですと出さなければいけない書類なんて、親でも子でもなりたくてなった病気じゃないのに。


それでも必要なデーターであることは、分かってはいるが。


「みなとせんせいの知り合いに、僕たちみたな子がいるのか?」

と、男の子が聞いてな来た。


「どうして、そう思うんだ?」

と、聞き返せば、男の子と女の子は顔を見合わせて、


「たまに、みなとせんせいみたいな顔をする先生が来るんだよ」

と、男の子が言えば女の子はうなずく。


「うまく言えないし、なんとなくだけど同じ様な顔をするの」

と、女の子は付け加える。


「俺に似てるのか?」


「似てるとかとは違うよなぁーー」


「なんだろう、みなとせんせいはカッコイイし笑ってくれるし」


「誰だって笑うだろう?」


「ううんーーん、私たちの回りの人は楽しいから笑うのかなぁ?」


「無理じゃないけど、笑ってくれてる気がする」

と、二人は俺に分かるように伝えようとする。


……凄いな、子供なりに大人を良くみている。本当に笑っているか、勇気づける微笑みか、無理して笑みにしているか、肌で伝わっているのか。


「そうか、二人ともすごいな。色んな事が分かるのか」

と、二人を誉めた。


「みなとせんせい! 僕たちをバカにしてる?」


「えっ? してないしてない」

と、慌てて否定するが、


「何も知らないって、適当にウソじゃないけどごまかす先生もいるから」

と、言ってきた。


……俺のことか? 今までの研修医のことか?


「そうだな、色んな先生もいるだろうな。二人はずっと一緒にいるのかい?」

と、聞けば二人とも顔を見て、女の子は笑う。男の子は、


「生まれた時から一緒にだよ」

と、答えた。


「長い付き合いなんだね。俺もずっと一緒にいたい子がいるんだ。子じゃないか。お姉さんだな」

と、言えば


「ほら! みなとせんせいには恋人がいるじゃないか!」

と、男の子は女の子に言っている。


「ふん! みなとせんせいはカッコイイいいから、分かってたもん!」

と、女の子は言っているが、本気には聞こえない。


「恋人じゃないよ。俺が勝手に思っているだけだから」


「みなとせんせいみたいにカッコイイ人をふる人いるのか?」

と、男の子が驚愕している。


……それ程でもないのだが……


「俺が守りたいと思っている人は、他にも守り手が沢山いるんだよ」


「そのお姉さんすごいなぁーー」


「いいなぁ、みなとせんせいや他の人に守ってもらえるなんて」

と、二人は各々感想を言ってくる。


「二人は、守ってもらえることと、守ってもらえなくても健康でいること、どちらがいい?」


「「えっ?」」

と、固まった。


……聞き方が意地悪だったか、二人はまだ子供なのに守ってもらわないと健康であっても生きていけない


「ごめん。聞き方が悪かったな。二人は自分の身体の事を勉強するよね。何故食事の量を決められるのか、何故塩分を制限されるのかとか?」

と、聞けば頷く二人。


「世の中には色んな病気と戦っている子は沢山いるよね。病気じゃなくても生まれ持った身体と向き合っている子も、俺の守りたい人は生まれ持った身体と向き合っている人なんだ」

と、説明した。


……虚弱体質は病気ではない。生命エネルギー? の弱さ? 吸収率の悪さ? 何と説明する?


「みなとせんせいの好きな人は、身体の弱い人なの?」

と、女の子が聞いてきた。


……単純な言い方で良かったのか?


「それはそれで大変だなぁーー」

と、男の子は言う。


……なんだ? 理解が早いな。身体の弱さを分かるのか? 部分的な話じゃないが……


「知ってるお姉ちゃんが、スゴーーーーく身体が弱いの。ねっ!」

と、女の子が男の子にふる。


「あぁ、すごーーく弱いよな。僕は膵臓だけだけど、あの人は大変みたい」

と、男の子は落ち込んだ言い方だ。


「だってね、先生がいつきせんせいが持ってきた紙カルテが多すぎるし、電子にするのに大変だったって」


「えっ?」


「紙カルテから電子にしたから、お貸しできますっていつきせんせいが言ってたよ」


「えっ?」


「医療事務のおばさんが、僕たちより多くてスキャンが1人では無理だとなげいてた」


「えっ?」


……データーで渡すのではなくて? 手書きのカルテ? 個人だから?


「お姉ちゃんは、病気じゃないけどデーターとして欲しいって先生が言って、いつきせんせいが持ってきたの! すごかったよ。いつきせんせいの妹さん凄く綺麗で、みんな見惚れてたよね。ねぇーーっ!」

と、男の子に同意を求める。


「いつきせんせいが、近づいたらダメって言ってたけど、お姉ちゃんは1人ずつ近付いて話してくれた。でもみんなと話してる時にいつきせんせいに止められていた」

と、男の子が説明してくれる。


「えっ?!」


「いつきせんせいは、難病のちけん? をしているせんせいでね。みなとせんせいみたいによく私たちとお話してくれるの。いつきせんせいは、妹のお姉ちゃんのためにお医者さんになったって言ってた」

と、女の子は言う。


……樹、兄さん? 藍のため?


「でもお姉ちゃんがね……いつきせんせいに言ってたの……私の順番は最後でいいからって」


……なんだよ、最後でいいのか? 難病って指定だけでも300以上あるんだぞ、


「いつきせんせい、頭に抱えてたなぁあっ」


「この前も頭ボサボサにして来てたし、研修医で来てた時は、カッコイイなぁって思ってたのにぃーー。

みなとせんせいは、ちゃんとしといた方がいいよ。好きなお姉さんがいるなら」

と、女の子は言ってくる。


「僕は、いつきせんせい好きだよ」


「私も、いつきせんせい好きだけど……」


「二人が好きでいてくれるなら、樹先生は喜んでくれるよ。

ちなみに樹先生には弟はいるけど、妹はいないよ」


「「えっ?」」


「そっかーー。負けてられないなぁーーっ!」


「僕、みなとせんせいも好きだから!」


「私もよ、みなとせんせい!」


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