虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます
「う~~ぅ、腰から下を外したい〰️〰️」
と、天蓋のカーテンが降りたベッドで、藍が枕元の携帯に話す。
『われはしらなかったが、ひとのこはからだを、きりはなしても、いきてゆけるのか?』
と、セイ様が聞いてくる。
「それだけ、腰から下肢にかけてが、不愉快なんですよ〰️〰️」
と、藍が説明するが、分かってもらえるはずもなく、携帯の画面の中をウネウネと泳いでいる、セイ様を羨ましく見る。
そのウネウネを見ていると、自分に降り掛かっている腰痛が馬鹿らしく思えてくる。
セイ様のウネウネとした体躯を、触ることが出来るなら一回蝶々結びをしてみたいなぁっと、思わず想像してみた。
「セイ様のお身体は、間違っても絡まったりしないのですか?」
と、藍が思い付いた事を聞いてみた。
『………………アイ、なにをおもいやした?』
と、セイ様がウネウネを止めて聞いてきた。
「何を?……」
……何をと言われも、セイ様の身体が絡まってボールみたいに丸くなっているところって…………
「オホッホッホォ~、セイ様の可愛く転がったところなんて想像していませんよ」
と、答えてしまった。
……あれ?!
『ほぉー、しずとおなじことを、おもいやったか』
と、セイ様がウネウネをしないで、聞いてくる。
「セイさ~ま、気を悪くなさいました?」
と、藍が聞けば、
『すこしは、アイのきがはれたか?』
と、セイ様が言う。
「はい。ありがとうございます。ところで静様は、何と例えられたのですか?」
『まりみたいに、ならないのかと、とうてきたことがある』
と、セイ様がウネウネを戻しつつ答えてくれた。
……あれ? 感性が近い? 鞠とボールになったセイ様を可愛いと思ってしまった。
「やっと薬が効いてきたようです」
……少し楽になるのに、二時間ぐらいにかかっているし、即効性は確かに怖いけど専用薬って凄いな。
カルマさんに、頼んで温石してもらった。説明するのも大変だったけど………
『よくしずもいしを、あたためたものを、かかえておったが、さわりか?』
と、セイ様が聞いてくる。
「はい。今回は痛みが酷いみたいで、ここには貼るカ◯ロがないので、昔のやり方を思い出してみました。なかなか良いですが、好みの石を探したいですね」
と、藍も答える。
『アイのからだが、しんのぶがひえておるからな』
と、セイ様が言う。
「セイ様は、私の体温が分かるのですか?」
と、聞いてみた。
『いな、わからぬ。わからぬが、いろがちがうのであればちがいは、わかる』
と、セイ様が教えてくれる。
……なんだろう? 生理中は眠くなるけど落ちそう…………
「…………セイ様、……薬の作用なのか眠気がします。お腹が暖かいのとで……少し眠ります…………」
「オイ、要! どういう事なんだ?」
と、川島 友生が聞いてくる。
白彦神社の本堂で、浅葱と要は書庫で文献を漁っていると、突然川島が顔を出す。
「えっ? 川島さんどうやってあの廊下を音も立てずに来れたんですか?」
と、要が聞く。
どうしても軋んで音が出るはずの廊下を、細身でも大の男性が歩けば音がなるはず。
「そんなのはな、気合いでどうにでもなる!」
と、川島が言って。
「要! まともに受けるな。どうせ廊下の端をゆっくり来たに決まっている」
と、資料から目を話さずに、浅葱が言う。
「浅葱! お前は可愛くないなぁ」
と、同級生の川島が言うと、
「それで、何しに来たんだ?」
と、同級生の浅葱が問う。
「署長の殿間さんから、捜査終了の連絡が来たからに決まってるだろ!」
と、刑事の1班責任者 川島が言う。
……殿間さんからは、ちゃんと報告と連絡は辰巳家と瀧野家にあった。
「2ヶ月も何も出ないのに、殿間さんも良くしてくれたと思うけど」
と、浅葱が言えば、
「藍ちゃんが、見つかってないのにかー!」
と、刑事 川島が言う。
「川島さん、手に持っているのは?」
と、要が川島の両手に握り締めている書類が気になる。
「鑑識の西川と、サイバーの中野からだが」
と、川島は握り締めたまま答える。
「鑑識やサイバーからなんて、表に出して良いわけないでしょうが」
と、要が尤もな事を言う。
「表じゃないから良いんだよ。要にマロンからだ。送信すると都合が悪いらしい。そう言えば分かると言われたが」
と、川島がクシャクシャになった書類を渡す。
「えっ? 中野さんって…………マロンだったのかよ」
と、要が言うが、
……オレと同じタイプの人が、警察関係者にいるのか。それも……サイバーって………………
「要、陸と知り合いだったのか? アイツはあまり表に出ないんだけどな」
と、川島が言うと、
「ちょっと待った! 中野さんがマロンって」
「アイツのあだ名だ。中野 陸、反対に呼んだら、“くりのかな” を小さい時に間違えて中だけまとも呼んで、“くりのなか“ でマロンと自分でつけたらしい。知ってるのは極数人だけどな」
と、川島が教えてくれる。
……知ってるも何も、極数人でもダメでしょ…………
「心配するな。俺の嫁さんの双子の弟だから、要に対してはマロンと言えば通じるはずだと言っていたけどな」
と、川島が事無げに言うが、
「分かったよ。でも、川島さん他では言うなよ」
と、要が言うと、
「要くん、先輩にその口はダメだろう?」
「川島先輩と言わせたかったら、次の試合で俺に勝ってからにしましょうか。ともちゃん」
と、剣道繋がりの幼馴染み。
「ともちゃんじゃない。ゆうちゃんだ」
と、じゃれあっていると、浅葱が横から書類を取り上げる。
「これだけ調べてくれたんだな。鑑識さんもサイバーの担当も」
と、書類を見ながら浅葱が呟く。
「何でも西川は香山なんとかに頼まれたと言っていたが」
と、川島が言えば、
「それ、樹だ。香山 樹。大学の先輩に鑑識課に行った人が居るって聞いた。それって西川さんなんだろうな」
と、要が言えば、
「西川さんの報告書には、全く犯罪の痕跡無しとなっている」
と、浅葱が言う。
「そうか」
と、川島が言う。
「川島さん、報告書見てないんですか?」
と、要が聞くと、
「表に出ないはずのものを、易々と見れるか。それに、殿間さんからは捜査終了しか言われてない。判断するのは俺達じゃないからな。だからこうやって聞きに来てるじゃないか! それでサイバーの方は?」
と、浅葱に詰め寄る。
「要、見てくれ専門過ぎて良く分からん。わざとかもしれないけど」
と、浅葱が書類を要に渡す。
「あぁ、わざとだな。本当にマロンなんだな」
と、書類に目を通しながら呟く。
……わぁ~~ぁ! これ出したら駄目なヤツじゃんか! 外国まで広げて調べてる。藍が不明と分かっている時間前後の付近の車輌全部、判明してるし特殊詐欺メンバー通報しろよ。ネット内にも痕跡無し。
藍の隠し撮りが流れたのも、処理してくれてる。オレがしても消えなかったのに…………
「中野さんも、手がかり無しになってる。藍のこのパターンをこれからも探ってくれるらしい」
と、要が書類は預かる。これは世に出てはいけない。
「そうか。この二人の報告で上は事件性が無いと、判断したんだろうな。
でもな、藍ちゃんはどこにも居ないんだぞ!」
と、川島がムキになって言うが、
……そんなの、こっちだって分かっているさ。読めない文献資料を漁っているのも、手がかりを探しているんだし。
順一先生が言っていた。藍の身体の事。それの方がこっちはショックで、叔母さん寝込んだぞ……行方不明になった時でも気丈にしてたのに
[藍ちゃんは、五年前から少しづつ内臓機能低下している。今までも正常値の範囲だけど、ギリギリのラインに来ている。
いつ、治療判断になってもおかしくないが、藍ちゃんの自己管理によりもたされて、いたに過ぎない。治療判断になれば、僕の見立てで五年]
「兎に角、殿間さんの指示で捜査は終了になったが、俺も西川も中野も継続捜査に入ります」
と、川島が言う。
「川島、もういいよ。組織の人間が上に逆らうな。気持ちだけで良い」
と、浅葱が言う。
信じられないような顔をした川島さんが、オレを見る。
「別に諦めた訳じゃないけど、確かに川島先輩は手を引いた方がいい」
「なんでだ? 一人でも手がある方が良いだろう?」
「この報告書を見る限り、事件性は無い。人為的要素が無い。信頼している人達が調べてくれたんだ。覆ることは無い。
だから、人外的な要素を調べるしかない」
と、要が言えば、浅葱も頷く。
ピッコ~~ン
『◯◯◯をみつけたよ!』 ガーディアン連絡網 from 藍
『アイ、めざめたか?』
と、抱え込んだ携帯から聞こえてくる。
「セイ様、久しく見なかった夢が見れました」
と、藍が答える。
『アイは、わらっておったぞ』
「そうですか? 夢の中でいつもしていた報告をする夢でした」
奇特な読者の方々へ
いつも拙い文章を読んでくださり、ありがとうございます。今回で「虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます」を終わらせようとしたのですが、100話近くになっても終わりが見えず、新しい展開にしたいとタイトルを少し弄ります。
続きも頑張りますので、お付き合いできる方は、引き続き不定期な投稿ですが、宜しお願いします。
「続·虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます~何もないと諦めないでマイナスからゼロになるまで~」を続編として投稿します。




