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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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表現力

「クルナさん、入りますよ」

と、藍がノックをしないで扉の前では声をかける。アイルくんが寝ていた場合、ノック音で起きるかも知れないからだが。

本当なら昨日メリアーナ様とお会いしてからお邪魔するつもりだったが、メリアーナ様にポプリの事や巾着の作り方を聞かれて、ついつい遅くなった。


おまけに寝不足で、やたら眠くてと思っていたら朝起きたら、やっぱり生理がきていた。


……本当にロッティナさんに聞いといて良かったよ。浮腫に胸のワンサイズアップ、お通じの無さ前日までのイライラや衝動的な行動。下腹のチリチリとした鈍痛。個人差はあるし人と比べたことがないから分からないけど、わたしの不順生理前の症状。

毎月ある人大変だよねって、あるのが正解で不順なわたしは何かが足らないんだろうな。


女性ホルモン? 経血になる血液? ストレス? お母さんは、毎月ちゃんとあるって言ってたし、軽い方だと本人は言っていたが、だからわたしを身籠ったのがすぐに分かったって。


……だ、め、だ、生理中は、落ち込む事ばかり考えちゃう。癒してもらうぞー!


と、アイルくんがいるはずのクルナさんの部屋の前。

そろっと部屋を覗けば、クルナさんとアイルくんが寝ている。

……あちゃ。タイミングが悪かったね。


寝ているアイルくんの横に起き上がり小法師と、布ボール、大きな鈴が入ったニギニギを置いておく。


次会える時は大きくなっているんだろうな。テーブルにはおしめの山と洗濯物が畳んで置いてある。空いてるスペースに器ポプリと三枚の色違い巾着を置いておく。同じ物なら中を見ないと何が入っているか分からないけど、色違いなら中身を覚えていられる。


そっと部屋から抜け出して振り返ればナリスさんが、目の前にいた。

ビックリして悲鳴をあげそうになったが、飲み込みナリスさんにもたれ掛かる。


「驚きました! もう少しで悲鳴をあげるところでしたよ!」

と、藍が言えば、


「クスクス、だってお尻から出てくるアイが可笑しかったのよ、フッ」

と、ナリスさんがクスクスと笑い続ける。


「だってクルナさんもアイルくんもよく寝ていたから、起こさないように出てくる時ってそうなりません?」

と、藍は言う。


「えっ? ならないわよ。フッフッツ。

アイ、カルマから私の分だと花の枯れた物と、巾着を貰ったわ。ありがとう」


……あっ! 花の枯れたもの。そっかポプリって伝えれば良かったよ。花の枯れた、枯れたもの

メリアーナ様とロッティナさんには説明したから、分かってもらえたが……


「カルマさんから聞きました?」


「お部屋に飾っておくのよね、微かに甘いお花の香りがして、聞いていた巾着も手を加えるとあんなに素敵になるのね」

と、ナリスさんが言ってれる。


「嫌な香りでは無かったですか?好みは人それぞれですから」

と、藍は言う。


「自然な花の香りで、私は好きよ。器もアイが作ったんでしょう?」


……あぁ!折り紙は、日本の文化だからね。四五歳児の子でも、簡単なカエルやペンギンなんか園で保育士さんたちに教わるよね……わたしは少しはまったが……


「ナリスさんが手伝ってくれた生地で、色々出来ました。ありがとうございます」

と、藍がお礼を言うと、


「お礼は私の方がアイに言わないと。この前は、ありがとう時間を作ってくれて」


「えっ?……と……礼拝堂……の……人……のことかなぁ?」

と、藍が確認すると、


「えぇ、お陰で事情も分かったし、周りの進めもあってこのままいくと、一緒になれると思うわ」


「あ~の~ぅ、話し合いをおすすめしたのは、私ですが展開が早くないですか?」

と、藍が聞く。


「アギルも私も、もういい歳だし、お互い独り身だからね。誤解していた事も解決したから」

と、頬を紅潮させたナリスさんが説明する。


「ナリスさんの一方的な事でなくて、お相手の彼から言われたんですね。それは良かったですね」


「…………………………言われて…………ない」


「えっ?」


「アイ、ちょっと付き合って」「えっ?」





「キニルさん、内の母ちゃんから聞きました。気にかけてもらって、ありがとうございます」

と、アギルは厩舎で馬の世話をしている、キニルに声をかける。


「別に気にかけてなんか無いぜ。仕事をしただけだ」

と、キニルが言えば、


「キニルさん、なんでナリスのことを家族に言ったんですか!」

と、アギルがキニルに詰め寄る。


「オイオイ、お前、お礼を言いに来たんだろう?」

と、馬を背にキニルが言えば、


「はい。お礼はさっき言いました。文句は後で言いますが、キニルさんブーツの裏を見せてください」

と、アギルがキニルにさらに近付く。キニルは不思議そうに脚をくの字にして、ブーツ裏をアギルに見せてやる。


「何だ?」


「キニルさんは、普段からこのブーツですよね」


「あぁ、団隊にいた頃から支給されているからな、良いものだから愛用しているが」


「支給のブーツなら皆同じ物ですか?」


「自分の拘りがある奴もいるようだが、殆どこのブーツだと思うぞ。アギル?」

と、キニルが答えたが、アギルは考え込んでいる。


「俺のを見ます?」

と、アギルが自分のブーツ裏を見せる。


「似ているが、溝の本数と底厚が違うか」

と、キニルは違いを言ってくる。


「はい。俺は多分こっちで履いていたブーツはキニルさんと同じものでした。でもロカ商会で採掘の仕事をしてるうちに駄目になって買い換えたんです。採掘の現場は岩場なんで底が厚いんです」

と、アギルが言えば、


「前のに戻したいなら、支給して貰えるぞ。で、何が言いたい?」


「山小屋で、全く違う足跡を見ました」


「…………お前のオヤジたちでもないのだな?」


「俺の父ちゃんや兄ちゃんは、山岳用の今の俺のに近いです。実家で確認してきました。

あれから俺山小屋を見に行って調べたんですが、取り調べの時の第一団隊員の出入りした足跡しかなくて、記憶違いかと思ったりしましたが、あの山小屋に10年ぶりに入った時の違和感は、何でしょうね?」

と、アギルがキニルに聞く。


「その場に居なかった俺に聞くな。アートムには言ったのか?」


「いえ、確認をしてからとうぇっ! ぅあぁ!」

と、アギルは襟首が締まって、慌てて首元を引く。


「…………なんだ?」

と、アギルが振り返れば、ナリスが立っていた。側には藍も付き合いでいるが、


「何をするんだ、ナリス! 驚じゃな……い……か?」

と、ナリスと藍を交互に見て、固まった。


……オークが言っていた娘は、この娘か。信じられない位綺麗な娘って。確かに綺麗な娘? 女性? どう表現するか?……俺も……オーク並みか…………


「アギル! 世の中にはとても若くて綺麗な娘がいるの!おまけにアイは、性格も凄く良い娘なの! 探せば同じような娘がいるかも知れないわよ」

と、ナリスさんが藍を引き合いに出して言う。


「えっ? と、だから何だ? ナリス」

と、アギルはナリスに聞く。


「だから、こんな行き遅れと付き合わなくても」


「えっ? 付き合うつもりはないけど」


「………………えっ?」


「あぁ――――――! 誤解すんな! 折角誤解が解けたと思ったのに、そうじゃない! ナリスが俺を許してくれるなら一緒にいたいと、伝えたじゃないか!」

と、アギルが泣きそうなナリスに向き合って言う。


「アギルさんって言う人! それじゃナリスさんに伝わってない!」

と、藍が仁王立ちでアギルさんに向かって言う。


「そうだな、一緒にいたいだけじゃぁなぁ」

と、キニルさんもニヤニヤ顔して言う。


「何で、キニルさんや……君は? アイ? っていう人の前で恥ずかしいことを言わす気ですか」

と、アギルが言ってきた。


「恥ずかしいですか? 好きな人が言った言葉が思い違いかもと不安になって、思い違いなら聞かなかったことにしようとしているナリスさんに、そのまま伝えなくて済ましますか?」

と、藍は言う。


「………すまん。伝わらなかったら意味がないな。


ナリス、遅くなったが俺と結婚してくれ!」

と、アギルさんがナリスさんの手を取って言った。


「うん。良かった。私もよろしくお願いしますぅ~」

と、ナリスさんが泣き出した。慌ててアギルさんとキニルさん藍とで慰めるが、ナリスさんが落ち着いたところで、


「君? アイってこの前、礼拝堂で会った娘かい?」

と、アギルさんが聞いてきた。礼拝堂では、外套を着ていて背を向けていたから分からなかった。


「そうですけど?」


「アイはミカエル様の婚約者だろう? ルカとも付き合っているのか?」


「はぁ――――っ?!」

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