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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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紹介状

「私は季節によっても症状が違うのですが、常には頭痛と腹痛に冷えですね。酷い時は腰痛と吐き気がたまに伴いますね」

と、藍が説明すれば、メリアーナ様とロッティナさんが顔を見合わせる。


「アイはいつもそうなの?」

と、メリアーナ様が聞いてくる。


「いつも?」


「グロー先生が医師だとしても、月の障りのことを相談したことがないから」

と、メリアーナ様が言う。


「言わなくて済むなら良いのですが、私は小さい頃から、体調を申告しなければ生きてこれなかったので日常なのです。

正直に今の体調を伝えて改善する方法を処置してもらうなり、処方してもらうなりの情報を提供しなければ、グロー先生とディービス先生は、今の私の身体しかご存知ないですから」

と、藍が答える。


「アイ程正直に、申告してくる者はおらぬがな。自分の身体のことを理解していなくては、そこまで伝えることは困難だと思うが、健康なもの程意識しとらんのじゃて。

腹痛の痛み止めを処方するかの、後はアイには強いので服用は賛成出来ぬな。横になって安静にするしかないの」

と、グロー先生が仰る。


「分かりました。ロッティナさんには処理の仕方や対処を、教えてください」

と、藍がお願いする。ロッティナさんが頷いて返事をしてくれた。


「で、お話が戻るのですが、その強いお薬は服用でなくて香り匂いで嗅ぐでは効果はありませんか?」

と、藍が本題に戻る。


「あぁ! なる程な。強い薬は効果が低いやり方で接種すればどうなるかと、聞きたいのか。

それなら、体の大きさで処方する薬の量を減らせば良いだけだが、他にも理由があるのかの」

と、グロー先生が聞いてくる。


「私も知っているだけで内容までは分からないのですが、精神が安らぐ効能がある香りで、睡眠を誘発したりお薬でなくて補助的なものですね。

お薬は、強制に身体に作用しますよね」

と、藍が答える。


「ふむ~ん、例えを出してくれると分かりやすいが」


「そうですね。スッキリとした香りで目が覚めたり集中出来たり、森林青さの香りで鎮静鎮痛出来たり、甘い香りで精神が安らいだり、喉の痛みや鼻の通りを緩和したりとかですかね」

と、藍が考えながら答える。


「心当たりがなくはないが、服用の方が早いからなぁ」

と、医師らしいグロー先生の判断だ。


「勿論そうですが、毎日が同じ体調ではないですよね。

いつもより寝付きのが悪い。 いつもより食欲がない。 いつもより身体が重い。 いつもよりやる気が出ない。 いつもより気が晴れない。

いつもより少しだけと言うのは病気でなくて、不調ですよね」

と、藍が言えば、グロー先生はメリアーナ様を見る。

メリアーナ様とロッティナさんはお互いを見つめ合う。


「よく分かったよ。確かにそうじゃな。病気なら薬で強制に身体を整えるが、それ程でもない時は我慢してやり過ごしている。それが続くと病になりうる」

と、グロー先生が答える。


「本当の病気はお薬で改善されるべきですが、人は軽い不調は口にしません。健康な人程気のせいと思い込みやすいですから」

と、藍は言う。


「それで、私にそれを調合しろと言うのかい?」

と、グロー先生が笑顔で言って来るが、


「違います。そんな怖い顔で聞いてこないで下さい。唯、効能がある薬草を調合調剤でなくてそのまま香りを嗅ぐだけでも落ち着くのかなと思っただけです。私の国では芳香療法アロマセラピーと言います」

と、藍は言う。


「それで、その香り袋なんですね」

と、ロッティナさんが聞いてくる。


「はい、私は薬草の知識はありません。毒の無いものは少し分かりますが、効能のことは分かりかねます。無難に香りの良いものでも、気持ちが落ち着いたりするので作ってみました」

と、器ポプリを出す。


「可愛らしい、入れ物はどうなっているの?」

と、メリアーナ様が聞いてくる。


「中に入っているのは、香り袋と同じです。器は端切れで、立体的に折るだけで出来ます。これをメリアーナ様とロッティナさんに、お部屋にでも置いてもらえれば嬉しいです」

と、藍が差し出す。


「まぁまぁ、嬉しいわ」

「こんな可愛らしいのを」

と、お二人が喜んで受け取ってもらえた。


「グロー先生と、ディービス先生は、香りを纏う訳にはいかないでしょうが、良ければこれを使って下さい」

と、出した布は収納帯。しっかりしたり生地で大きくポケットを作り、仕切りを細いものから太いものを1づつ収納出来る。


「なんと!」


「往診カバンには、一式道具を入れておられるでしょうが、1つづつ仕分けした収納帯になります。端から巻き込みで丸めてカバンに入れて、医療助手がいなくても探しやすいかと、作ってみました」

と、藍が説明する。ロッティナさんが驚いている。

二つ並んで置いた1つを、広げて見せればグロー先生が


「引退した身だが、これを使うためにはおちおち休んでおれぬな」

と、言い出した。


「えぇ〰️! そんなつもりじゃないですよ。私の手作りで申し訳ないですが、使い勝手が悪ければお好きにして下さい」

と、藍が言えば、


「もしかして……これを作ってて寝不足」

と、ロッティナさんが言い出したので、


「はい! メリアーナ様とロッティナさんは、こちらをどうぞ!」

と、巾着袋を取り出した。


「これも、素敵ね」

と、メリアーナ様が受け取って喜ばれた。


「………………嬉しいけど、アイ!」

と、ロッティナさんに凄まれて、


「分かっています。少し無理をしましたが、私の気持ちです」

と、藍が言えば、


「ありがとう、こんな贈り物は初めて嬉しいわ」

と、引いてくれた。


……私の身体のことで一番お世話になった、ロッティナさんには、何か残る物を贈りたかったんだけど。見ただけで寝不足見抜かれてるし、でも……受け取ってもらえた。


「グロー先生には、紹介状を頂けないかと思っているんですが。

ディービス先生かグロー先生が 、王都で信用出来る医師を紹介していただけませんか?」

と、藍がお願いする。


「確かにアイには必要最低限の備えじゃな。王宮にも医療科はあるが、私らの紹介が良いのかの?」

と、グロー先生が聞いてくる。


「はい。私の場合は、初見で把握していただけないので、意識がない時には困るのです。

ディービス先生とグロー先生が診察された診察録は外に出さないのは分かっているのですが、私には一つ一つ説明する体調どころではないと思うのです」

と、藍が説明する。


……今までも、外出時に体調が悪くなって病院に行ったところで、初診で理解されたことがない。

結局、香山医院に問い合わせが行って、宗一先生か順一先生の指示処理となってきたのだ。

初診で当たるドクターにも、気の毒だ。経験則。


「それもそうじゃな、アイの診察録は用意しておこう。紹介する医師も私の友人で良いのかの。

うちと同じで代替わりしているか、後継者になっていると思うがな」

と、グロー先生が言ってくる。


「はい。グロー先生が信用されている方が、後継者とされている医師に従います」

と、藍は答える。


「これはこれは大仕事になりそうじゃな。口が達者でももう1つ見立てが浅いのもおるしな。全く患者と話が噛み合わないもの……それにアイを診させるのは女医の方が良いが……あれに任すのは…………」

と、グロー先生が苦慮されている。


「ロッティナさん。私、グロー先生にとても難しいお願いをしたのでしょうか?」

と、藍がロッティナさんに問う。


「いいえ、あれは義父様が認めているけど、認めたくない時の表情ですから、大丈夫ですよ。

きっと良い先生をアイに紹介してくれると思いますよ。それより顔色が悪いのは寝不足のせいだけですか?」

と、ロッティナさんが聞いてくる。



……「セイ様、私が王都に行っても加護は身に付くのでしょうか?」


『アオイがそばにおれば、アイのかごはりにならってまとう。すくなからず、アオイのまわりはちがちかい。ちのつながりはかごになりやすい。

だが、アイはとくしゅゆえ、まえにもいったがかごにもいろがある。あわぬかごには、きをつけるのだぞ』


「セイ様? どうやって気を付けるのですか?」


『……きをつけるのだぞ、ちかづかなければよい』


「気を付けて近付かなくても、向こうから近付いたらどうします?」


『…………だっとのごとくだな』


……だっと? 脱兎の如く? あぁぁぁ逃げろって!



「少し、考え事があって寝付けなくて、色々作るのにそれで捗りました」

と、藍がロッティナさんに説明をした。

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