気持ちです
「なぁあ~ルカ、アイは王都に行ってしまうのか?」
と、ルッツが聞いてくる。
「あぁ、シアン陛下が庇護者であられるからな。シアン陛下が王都でアイに職を斡旋されて、側に置かれる」
と、ルカが答える。
「えっ? 側にって?」
「ルッツ! 側近として仕事が出来ることは、見ていても分かるだろう」
と、ルカが被せる。
「はぁはぁはぁ。そうだなアイが何でも出来ることは分かるよ。でも体調は不安定だろう?」
と、ルッツが言ってくる。
「それなぁ。ここに来た当初よりは調子が良くなったとアイは言うけど、夕方には顔色が悪くなるしアイの体調管理に慣れてきた俺でも、掴みきれてない」
と、ルカがため息混じりで言う。
「そうか、それでも王都に行くか」
と、ルッツは道具を片付ける。ルカはルッツに渡された籠を受け取り出口に向かうと
「なぁ、アイって何者なんだ?」
「どういう意味だ?」
「ルカ、悪く取るなよ。クルナが感謝しているんだ、勿論俺もアイには感謝しかないし。
不思議なんだ助けてくれたのがアイだが、クルナとは初対面だった筈なのにあんなに献身的にしてくれて、ノアさんからも聞いたんだ。
アイはあれから2日間も意識がなくなる程無理してくれたんだと」
と、ルッツが言う。
「俺も驚いたよ。ルッツの奥さんと知らなくても自分の身体の事を省みないでする行動が、後でどうなるか知っている筈なのに」
と、ルカが言う。
「だからさ、俺はダーニーズウッド家の庭師で忠誠的なものを持って仕事をしているが、アイには心から誠意を持って恩返しをするつもりだったんだ。王都に行かれるとそれが出来なくて残念だと言っている」
と、ルッツが答える。
「そうか、心配しなくてもアイはこっちに帰ってくる。その時にはアイの希望を聞いてやってくれ」
と、ルカが言う。
「ぬぅ? なんだ?」
「俺もアイの護衛として王都に行くから、留守は頼むな」
と、ルカが言う。
「…………えっ?……そうか! それで」
と、ルッツが呟いた時にはルカは背を向けて、作業場から出て行った。
……どうりで、オレとは虚脱感の差がある筈だ。
「アイ、頼まれていた物をルッツから貰ってきたよ」
と、ルカが籠をテーブルに置くと、
「ありがとう、ルカ」
と、壁際の机で藍が作業をしながらお礼を言う。
「こんなに枯れた花や葉をどうするんだい?」
「ポプリ……香り袋を作るのよ」
……本当はオイルとか色々欲しいものはがあるが、無くても作れる。経費がつくのは避けよう……
「こんなに沢山かい?」
「ほんの気持ちとして配るのよ」
と、藍が説明したが、日本のほんの気持ちって? 伝わる?
「手伝うか?」
「いいわ、ルカも用意があるでしょう。私は元々何も無かったからいいけど」
「いや、用意する程の物は無いよ。仕事の引き継ぎ位だし」
と、ルカが側に立つ。
「じゃぁねぇ、…………こんな風に花弁と葉を組み合わせたものを小山にしていってくれる?」
と、ポプリの量とバランスを1つ作って見せる。
「こんな風でいいのか?」
と、ルカが見本通りに作って見せる。流石に器用だ。
「ルカは器用だね。何処にお嫁に出しても喜ばれるね」
と、からかってしまったが、
「………………お嫁って…………」
と、ルカが赤くなって困惑顔してる?
……あれ? ルカって意中の人がいたの? 下手な冗談が通じてないか……も……し……か……し……て!本当にお嫁に行きたいのか!!
「ごめん、ルカにお嫁さんって言って、失礼でした。ルカは綺麗だから女装したら凄いだろうな~って」
と、言い訳気味に言ってしまったが、
「じょそう?」
「本当にごめん、調子にのりました。気にしないで」
と、必死に謝りました。
5センチ位の巾着小袋に、シャー生地みたいなもので香りの元を繰るんで口を縛る。巾着の絞り紐は目の荒い生地を端から崩してほどき、糸を編んで組み紐にする。
ポプリ小袋が30個出来た。固めの生地で折紙みたいに器を作る。5個出来ればシャー生地を中に敷、香り玉を彩り良く入れていく。葉は枯れて茶色だが花弁は色素が残っているからそれなりに華やかだ。
「ルカ、後でノアさんかカルマさんに部屋に来てもらえるかしら」
と、お願いしてみた。
「今から見てくるよ」
と、ルカが部屋から出ていく。
ポプリ25個と器のポプリが3個をテーブルに置き、ルッツさんから回ってきた籠を中を綺麗にして、端切れの赤色系の生地で周りを飾る。後のポプリは机に残し、山となっている手のひらより少し大きめな巾着を半分テーブルに持っていく。
暫くすると、ルカとカルマさんが部屋に来てくれた。
「ルカからアイの部屋に来て欲しいと言われて来たけど、何かあったの?」
と、カルマさんが聞いてくる。
「すみません、お仕事の手を止めてもらって。実はこれをもらって欲しくてお呼びしました」
と、テーブルに置いてあるポプリと巾着を見せる。
「えっ? これって、アイが何か作ってるのは知っていたけど」
と、カルマさんが驚いている。
「これは香り袋と言って、身に付けたり、部屋に置いたりと、微かな香りを楽しむ物です。女性のカルマさんなら、服の収納棚に置いておくと服に香りが移って微かにお花の香りがします。侍女の方や侍従の方に配ってもらえますか?
男性の方で厨房や動物を扱う厩舎の方は、不向きでしょうが、奥様や女性の家族にあげられてもいいですし」
と、藍が説明をする。
「アイ、厨房と厩舎って?」
と、ルカが聞いてくる。
「多分だけど、お料理をする厨房では、色々な匂いがするから、甘い花の香りが混ざると嫌かなと思ったのと、動物は匂いに敏感だから動物を扱う人は必要ないかもと思ったけど、恋人や奥様はお好きでしょう?」
と、藍が説明をする。
「アイ! すごく嬉しいわ。この部屋に入った時からいい匂いがして、羨ましかったの!」
「カルマさんには、これを」
と、器ポプリを渡す。
「これも、香り袋なの? 香りは同じたけど」
と、カルマさんが聞いてくる。
「そうです。器は端切れで作りました。見えているものは、同じ物なのでお部屋に飾ってもらえれば」
「いいの? 私は嬉しいけど」
と、カルマさんが聞く。
「はい。この器の分は、後はノアさんとナリスさんにあげてください。巾着も良かったら使ってください。頂いた端切れで作ったものですから」
と、小山になっている巾着を見せる。
「え~っ? すごく手が込んでいるわよ。アイはお針子さんなの?」
と、カルマさんに聞かれたが、
「まさか、ただの素人に毛が生えた位の腕しかないですよ。お裁縫は好きですが」
と、藍は答えた。
何故か、カルマさんはルカの腕を取り何か聞いているけど、私には聞き煩い事なんだろうか?
「アイ、これを皆にあげてもいいのね?」
と、カルマさんが確認してくる。
「はい。余れば好きにして下さい。押し付けになって申し訳ないですが、お世話になったほんの気持ちです。私は肉体労働が不向きなもので、これぐらいしか思い付きませんでした。男性の方には無理に進めなくてもいいですし、私からなんてご迷惑かも知れませんが」
と、藍が言えば、
「ルカ、どうする? 争奪戦になるかもしれないわ。私一人で纏められないわよ」
と、カルマさんがルカに攻めよる。
「分かったよ。俺も行くけどニックにも立ち会ってもらう方がいいだろう。カルマは自分の分とノアやナリスの分を分けておいた方が良くないか」
と、ルカがカルマさんに提案している。
「そうね、折角アイが私にって作ってくれたものが他の人に行ったら嫌だわ」
と、せっせっと仕分けする。
「あの、カルマさんが何の心配をしているのか、分かりませんが、香り袋も時間が経てば、香りもしなくなります。長持ちするものでないですが、皆さんにご挨拶が出来ないことを謝ってもらえますか?
私はこのお館で働いてる方全員と、面識がないものでよろしくお願いします」
と、アイがお願いすれば、
「アイは、いつでも帰ってきたらいいからね。王都の生活がアイに向いてなかったら、私何とかするから私の実家は領土の中でも、大きい商家だからアイ1人養ってあげれるからね」
と、カルマさんが言ってくれるが、
……私はどのような過程で、王都に行くことになっているのだろう?…………これは、誰を追及すればいいのかしら?




