表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/99

ディービス医師の証言 1

カーディナル王国


第175代シアン国王陛下が治められている王都を中心に、大公爵閣下、公爵閣下、侯爵閣下と陛下を支える側近貴族。

と、別に国土を東西南北と大きく4つに分けた、国境を守る西側にダーニーズウッド辺境伯領がある。


現領主ロビン様が治める、領土は隣国のジェスパード国と山岳地区を境に国交となる街道が、王都まで続いており商業的にも栄えている。


領土端の山岳側に領主様の館がある。

館に沿う山岳からの川が、国境から続く街道沿いの大きな河川と、合流し王都を通過してコールチードゲ侯爵領まで、豊かな水流を運んでいる。


物流的にも大きく貢献しているが、河川の設備や管理もダーニーズウッド辺境伯領の大きな仕事だ。


大河川シーガネ川沿いには、商店や宿店や飲食店が建ち並び賑わっている。

人と物が集まる場所には、犯罪も起こりやすい。先々代領主様が、警護団を領内に5ヵ所配置された。


山岳地区と館の警護を、第一団隊、国境の境を第二団隊、街中の第三団隊、領土境南北に第四、五団隊だ。


各警護団隊の構成内容は、ダーニーズウッド領内の子爵や男爵の子息や平民で、住んでいる地区近くで配置されている。

希望すれば配置は変更出来き、結婚や移動に対処されている。




ノーマン家は、シーガネ川沿い筋を1本中に入った、第三団隊に隣接する医院と住居二棟建ちだ。

先祖代々領内で医療医師業を営んでいる。

この季節になると感冒も落ち着き、暑くなるまでの期間が、ディービスにとっても休息出来る季節になる。


……患者の数が落ち着いたら王都にある、医師会館で最新の治療法や薬草を学んでおきたいが……


……最近は、前領主夫人メリアーナ様が加齢の為、体調を崩しておられる。一巡り位なら父グローにお願い出来なくはないが……


午前の診察が切れ、早めに妻ロッティナと昼食を取る。

メリアーナ様の往診をロッティナと向かう為に、用意をしていたら父グローが顔を出した。


父グローは、少し前まで現役で医師をしていたが、

農村地区に館と土地を購入して、一人で暮らしている。

元々草木を育てるのが好きだった父は、薬草の栽培に嵌まっている。今も育てた薬草を届けてくれた。

薬に精製する器材までは整えていないので、医院の薬品室で精製作業をするのだ。


「何処へ往診だ?」

と、父が声を掛けて来た。


「メリアーナ様の定期往診だよ。此処のところは

一巡りに一回ですね」


「あぁ、 それでロッティナも一緒なんだな」

と、納得する。


父が往診してた時から、看護助手と介添えをロッティナがしていた。経験を付けるために、看護見習いでもいいのだが。

メリアーナ様の往診は、ロッティナが同行する。


「ちょうど良かった。カール様にお会いできたら、シアン陛下がそろそろ滞在なさる頃だし、お目通り願いを伝えてもらえるか?」

と、ディービスに頼む。


「分かった。このまま今日は精製作業を続けるのかい?」

「予定も聞きたいし、今日はこのまま居るよ」

と、奥の薬品室に足を向ける。


「昼食がまだなら、ルナーに何か出して貰うといいよ」

と、ディービスは出口の方に行きながら父に告げた。



出口の扉を開けて医院の外に出ると、ロッティナが馬車の側で待っていた。


「ごめん。待たせたね」

と、謝り、


「お義父様とすれ違ったので、分かっておりました」

と、ロッティナが馬車のステップに、足を掛けて言った。


二人で馬車に乗り込んで、御者が領主様の館に向けて、馬に鞭を打つ。


馬車の中では向かい合って座っているが、徐に妻に、

「ルナーは最近は、どんな様子なんだ?」

と、問うたら、ロッティナは、


「クスクス」

と、笑いながら、


「それは、お仕事のことですか?それとも、婿探しのことですか?」

と、答えた。


「……両方だな」

と、正直に言うと、


「そうですね……看護師としては、まだまだ覚えないといけないことがありますが、心根が優しいので病人に対しても、傷を負った人に対しても、寄り添えることが出来ていますね。意欲的に教えを乞いますし」


「君が教えているんだから、心配はしてないよ」


「では、心配なのは婿探し方ですか?」

と、聞いてくる。


「ルナーは一人娘だ。出来れば医師を継いでくれる青年が、婿に来てくれるのが望ましいが」

と、憮然な面持ちで答えるが、


「ルナーはモテますよ」

と、間髪を入れず妻は言う。


「お隣さんの、第三団隊の隊員さんたちに」


「……ふぅん 隊員達が悪いとは言わないが、気の良い青年も多いから……でもな、えっ! ルナーは、隊員の中に思う相手がいるのか?」

と、慌てて聞いたが、


「隊員さんの中にはいないみたいですが、ルナーが思っている人ならいますよ」

と、初耳過ぎて衝撃を受ける。


「君は、誰だか知っているのか?」

「えぇ、本人に確認はしていませんが、敢えて聞きませんし」

と、無用の笑顔だ。


ディービスが打ち萎えていると、領主様の館が見えてきた。

領主邸の前を過ぎて別館に行くはずが、御者が馬を止める。


「ディービス先生、アートムでございます」

と、馬車の扉越しに声を掛けて来た。


扉を開けると、執事のニックとアートムが、領主邸の玄関前に立っている。

馬車をアートムが止めたのだろう、ニックが

「ディービス先生、申し訳ごさいませんが、こちらで急患を診て頂きたくお待ちしておりました」

と、頭を下げる。


「それは構わないが、メリアーナ様が後でよろしいのですか?」


「はい。カール様のご指示です」

と、ニックが言う。


「分かりました。ニック案内を頼みます」

と、ロッティナの方を見ると、荷物をアートムが運んでついて来る。


2階の客室の方に向いて歩く。

領主ロビン様やカリーナ様、ご家族の方が急患でないことが分かった。


……初見の患者では、所持品だけでは心許ないが……


続き部屋付きの大きめな客室前に到着し、ニックが扉をノックする。


「通せ」

と、中からミカエル様の声がした。



部屋の中には、ソファーにシアン陛下、向かいにカール様が食事の途中なのか、軽食がテーブルに置いてある。窓側には、ミカエル様がいらっしゃる。


ロッティナと目を合わせて慌てて、シアン陛下にご挨拶をすれば、

「悪かったな、予定を変えて貰って」

と、カール様が仰る。


……シアン陛下、カール様、ミカエル様を見ても、どなたも不調には見えない。

ニックもアートムも急患という言葉に真剣さが入っていたので、間違いで呼ばれた訳ではないだろうが……


「ニックから急患だと言付かりましたが……」

と、ディービスは、カール様に問う。


カール様は、シアン陛下に顔を向けられ、

「説明は、後でするので先に診て貰えぬか?」

と、シアン陛下が仰る。ミカエル様が、


「こちらに」

と、天蓋のカーテンが上げられたベットに、少女? 女性? が横になっている。


ベットに近付きロッティナが、女性の掛布を下げたが、異国のドレスで診察出来ない。

発熱のために、上気した顔に額の汗、荒い呼吸少し乾いた口唇。

ロッティナに目を向ける。側にいるミカエル様に、


「ミカエル様、このままのドレスでは診察出来かねますので、侍女と寝着をご用意お願い出来ますか?」

と、伝える。ロッティナには、


「侍女が来たら、この娘のドレスを一緒に着替えさせてくれ。汗を拭く時は、身体の変色や特徴を記憶してくれ」

と、指示すれば、天蓋のカーテンを下ろし取り掛かってくれた。


「シアン陛下、カール様、診察するのにも準備がございますので、それまで問診をさせて下さい。分かる範囲で構いませんので」

と、お二人に問うと。


「ふぅ~ん、これは先にディービスに説明するか?」

と、カール様がシアン陛下に問う。


「そうだな、アートムとルカを呼んでくれ」

と、シアン陛下が二人を呼ぶ。


「では、二人が来るまでにお聞き出来ることを致します。どちらの国の方ですか?」

「「……」」

答えがない。


「お年を教えてください」

「「……」」

返事がない。


「えっーとですね。……罹患をお聞きしてもお分かりになりませんよね」

と、駄目押しに聞くと、お二人は揃って頷かれた。

何となく、既視感がある。



ミカエル様が、ノアともう一人侍女を連れて戻って来た。アートム親子も時と同じに部屋に入って来た。

ノアと侍女は、ベットの方にロッティナを手伝いに行く。アートムとルカは、シアン陛下とカール様の後ろに付いた。


「まず、確認させて下さい。あの娘と接触した人は、どなたですか? この質問は、万が一あの娘が流行り病に罹患していた場合は、病気を拡げない為に処置をすることになるからです」

と、ディービスは問う。


「それは、触れたかどうかと、言うことか?」

と、ミカエル様が聞く。


「そうです。私側でいうなら、私はあの娘にまだ触れていませんが、妻ロッティナは寝着に着替えさせているので触れています」


「なるほどな。それなら私は触れたな」

と、シアン陛下が言う。


「私は、抱えた」

と、カール様。


「私は、拘束した時に触れています。それからノアさんとカルマさんが今、触れています」

と、ルカが答えてくれた。


「分かりました。触れたと分かっている方は、診察が終わるまで申し訳ないですが、残って下さい」

と、ディービスは、告げる。


ロッティナが着替えが終えたと、伝えて来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ