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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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水面下

「お嬢、ラルトの旦那は無事に帰ってくるんでしょうな」

と、山師のユエギが、商会長のヤーナに聞く。


「えぇ、ラルトとオークが罰金通知と帰ってくるらしいわ。領境に迎えに出したから夕方には、此方に着くでしょう」

と、古くから商会の重鎮としている、ユエギに答える。


「どうしてアギルを手放すようなことをしたんです。お嬢は? アギルは使えるヤツでしたのに」

と、子供の頃から知ってるヤーナに聞く。


「別に、使えるから使ったまでよ。10年もこっちに居たんだし。教育係りにもちょうど良い人材だったのよ。それにアギルは恩を忘れるようなヤツじゃないでしょう」

と、ヤーナが言う。


「でも、色々此方も情報を持っていかれやすで」


「そうでしょうね。アギルも覚悟の上で今回私の仕事を受けたようだし、お互い様よ」


「と、言うことは相手も分かっててラルトの旦那とオークを帰したと」


「当たり前でしょう、危機管理で言うなれば国中で一番難しいところよ。

だから何処の商会もダーニーズウッド領土に伝がないのよ。

うちで、唯一金物加工しているとこに、研磨用の鉱石を年に一回取引しているだけだし。

物は流通していても安いからと値段で動かない処よ。此方からの仕入は出来るけど、王都の別邸で物品を判断をして物が動くから人がダーニーズウッド領土に入ることが無いのよ。

だから次期領主のミカエル様との伝も必要なの。

余所は、王都で商談が済むから良いように言うけど、領土の情報が全く漏れないのは徹底した管理の元だと大手は知ってるし、私達位の所が少しでも情報が入ると分かれば商売もしやすくなる」

と、ヤーナは説明する。


「アギルは、拾い物としては良い鉱石でしたね」

と、ユエギが答える。


「アギルが私を売りはしないでしょう。でも伝ぐらいには維持して欲しいわね。色々気付かれているみたいだし」

と、ヤーナが言う。


「秘密にするのは、商売だけにすればいいだろう。

腹の子は旦那の子かい?」


「そうよ、やっとね。旦那を勃たせるのに苦労したのよ。私が裸で横に寝ていても撫でるだけなんてあり得ないでしょう」

と、ヤーナが明け透けに言うと、


「女には、興味がないと言っていたけど本当なんだな。どうやったんだ?」

と、ユエギが興味津々に聞いてくる。


「馬鹿言ってないで、採掘の報告に来たんでしょう」

と、ヤーナが言えば、


「オークをどうするつもりなんだ? オークはお嬢に認めてもらいたくて、ここに来たんだろう?」

と、ユエギが言ってくる。


「仕方ないでしょう。結婚する前に彼が採掘中の事故で亡くなったんだから、父も私との結婚を許すつもりがなかったし、妊娠は後から気がついたけど彼の両親が引き取るというから」

と、ヤーナが言えば、


「お嬢、俺がいてて事故が起こると思っているのかい?」


「……疑ったらキリがないわ。彼の側には知っている人ばかりだったのよ」


「俺が段取りした採掘で事故になったのは後にもあれだけだ」


「だから、私は大事な話はユエギにしかしてないでしょう」


「お嬢は、オークを教育のつもりでアギルに近づけたのと思っていたが、違うのかい?」

と、ユエギが聞く。


「アギルに弟がいるのは聞いていたからね、上手くいけば、アギルの楔になればいいか思っていたけど」


「オークも馬鹿じゃないぜ。学んで色々分かってきてる。ちゃんと話した方が良いと思うぜ。跡取りにするなら」

と、書類をヤーナに渡して部屋を出ていく。





「父さん、ディービス伯父さんに連絡してくれたんでしょう?」

と、スキールは薬剤師をしている父トキニルに聞く。


「あぁ、手紙の返事はまだだが連絡はしてある」

と、店の棚を整理しながら答える。


「ロッティナ伯母さんは、四年と半年かかったと言っていたから、僕はこっちで薬識は先に勉強したんだ。

看護の専科がジャスパード国にもあればいいのに」

と、スキールが言えば、


「元々、看護という概念がないんだ。医師を志す者が勉強のために見習い医師が、こちらでは先輩医師に指示されて診ていることが、お隣さんは看護として専門の職としている。医師より取得時間も短いし見習い期間も短い」

と、トキニルが説明する。


「僕は医師になりたいわけじゃないよ。ロッティナ伯母さんやルナーのような看護師になりたいんだ」

と、スキールが言う。


「タニロ兄さんは、お前に医師になって欲しいと言ってるぞ。資金も出すと言っているのに」

と、薬剤資格を持つもう一人の伯父さんの事を言うが


「それなら、ギル兄がなれば良かったんだよ。跡取りならサッチ姉でも良かったんだし」

と、従姉弟の二人のことを言う。


「それもそうだが、ギルは薬学より商売よりだから、医師なんて頭にないだろう。サッチの方が研究熱心だったのに城に出したしな」

と、トキニルが言う。


「サッチ姉って今はお城に上がって無いんだろう? 結婚して今は侍女をお休みして家にいるって、母さんが言ってた」

と、スキールが言う。


「結婚する気は無いと言って侍女になったが、気が変わったなら良いじゃないか。兄さんも義姉さんも娘が結婚を諦めてお城勤めより、旦那がいて幸せに暮らしてくれる方が安心だろ」

と、トキニルが言う。


「サッチ姉の旦那さんって何をしている人なの?」


「それこそ商人だと聞いたぞ。薬や薬草を卸している内の商売なら知っているが、知らないということは、違うものを扱っているんだろう。

何でもカーディナル王国にも兄さん達と一緒に行動してると言ってたし、安全な行商をするなら身内で行った方がいい。ロッティナ姉さんがいるダーニーズウッド領は治安は良いが、他はそうでもないからな」

と、トキニルが言う。


「王都もそうなの?」


「どこでも一緒だ。ここジャスパード国でも治安の悪いとこはある。

カーディナル王国は友好国だが、他の隣国はそうでもない。現国王アカルート様のお子様が三人とも未婚なのも問題だな」

と、トキニルが言う。


「セントール王子は次の国王でしょう? 姉二人の姫達は降嫁するか、隣国に嫁ぐしかないと思うけど」

と、スキールが言えば、


「スキール、滅多なことを言うもんじゃない。姫様お二人ともジャスパード国を離れたくないと仰ているんだ。今まで婚姻を固持されているのも、平和な象徴なんだかな」

と、トキニルが言う。


「婚姻を断って大丈夫なのは、平和な象徴なの? か」


「当たり前だろう。考えてもみろ、国同士の力が均衡しているから婚姻で友好を結ばなくてもいいんだ。

姻戚で友好を結んでいた頃は、人質みたいなものだし、敵対意思の無しを示していたんだから」

と、トキニルが言う。


「でも、カーディナル王国は王太子一人でしょう。国の中で妃を探すのか? 隣国で探すのか?」


「確か、今年で18歳だと聞いたぞ。スキールより1つ上だと記憶していたから、間違いない。カーディナル王国でもそろそろお妃選びが始まるだろう。

現国王は永く即位されていたが、姻戚で他国との友好より技術や物流で他を寄せ付けない政策を築かれた。

カーディナル王国の政策が今の平和な秩序になっているのなら、模しても良いと私は思う。

だから、お前もカーディナル王国で勉強するのなら、色々見てくるといい。


それよりちゃんと、カーディナル語は勉強しているんだろうな。

姉さんが手こずったのは勉強じゃないぞ、言葉の壁で半年遅れたんだ」

と、父トキニルが言うと、


「それは、アカデミーに入ってからでいいかと思っていたけど」

と、スキールが言うと、


「姉さんも、日常会話なら出来てたぞ。爺さんに習ってカーディナル語を、スキールはそれより短い時間で卒業試験を受けるつもりなら、もっと習っておくべきだと思うけどな」

と、トキニルが言い出した。


「父さんも日常会話しか出来ないじゃないか。後はタニロ伯父さんに教えを乞うべきかな?」

と、スキールが聞く。


「ディービス義兄さんから、返事をもらってからだと遅いぞ。

なんならルナーに来てもらうか、今なら医院も忙しくないだろうし」

と、父トキニルは言い出した。

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