事情
「メリアーナ様、アートムさん私の行動に悪いところがあるなら、教えて欲しいです。何か誤解させたことに変わりありませんし」
と、藍が二人に問う。
「…………」
と、お二人とも黙ってしまわれて、これは私にも何か合った感じだ。
「言いにくい事ですか?」
と、再度聞く。
「これはルカから聞いたことなんですが、アイ様が続き部屋で倒れていたところを、ケビン様が見付けたからだと思います」
と、アートムさんが答える。
「全く意味が分かりませんが?」
「成る程、ケビンが運命を感じたというわけね」
と、メリアーナ様が答えて苦笑なさる。
「まったく!意味が分かりません!」
と、藍が主張する。
「アイ様には、お分かりにならないでしょうが、ケビンの母親カリーナもロビンに対して運命を感じて、二年間ロビンに求婚してましたわね。はぁーっねぇっ」
と、メリアーナ様がアートムさんにふる。
「二年間って、ただのストーカーですよ」
「「すとーかー?」」
と、お二人が。
「いいえ、私の国の付きまとい迷惑行為の事をいいますが、それとは違うのでしょうし、ロビン様はカリーナ様と結婚なさってお子様もいらっしゃるのですから」
と、藍は答える。
……思い込みが激しい親子ということか?……
「カリーナは悪い子ではないのよ。確かに思い込みは激しいところがあったけれど、本当にロビンのことを慕っていたわ。ロビンの迷惑になると分かってからは、身を引くつもりだったしね」
と、メリアーナ様が仰る。
……全然状況が、分からない……
「カリーナ様は本人が悪くなくても、領民から疎まれていたのです。ロビン様もカール様もそんなカリーナ様を庇って居られたが、領民の一部がカリーナ様に刃を向けた事が有りました。
カリーナ様も自分に向けられた刃がロビン様にもと恐れてご自分の恋情を諦めるつもりだったのです。
ロビン様も先妻のクリネ様が賊に殺害された経験がございましたから、カリーナ様を娶って守る選択をされた経緯がございました」
と、アートムさんが説明してくれる。
「……もしかして、思い込みで運命を感じたからケビン様が私と結婚できると思っている?」
と、藍がお二人に聞く。
メリアーナ様とアートムさんが顔を付き合わせて、
「多分」
と、アートムさんが答える。
……えぇぇぇー!?
「私はロビン様とはお会いしていないですが、少なからず奥様カリーナ様を思っておいでですよね。お子様が三人もいらっしゃるし」
と、藍が言えば、
「性格が似ているのです。メアリーとケビンが母親に、メアリーは容姿も良く似ております」
と、メリアーナ様がため息混じりで仰る。
思わず初対面の三人を思い出すが、言いがかりで詰め寄られたことでしか印象にない。
……でも、カリーナ様は何で本人は悪くないのに疎まれるの? 今も危険なら、メアリー様は大丈夫なのかな?
「メリアーナ様がカリーナ様は悪くないと仰いましたが、何が原因で領民に疎まれることになったのでしょうか? 今は大丈夫なんですか?」
と、藍がお二人に聞く。
「カリーナがマホガニート伯爵令嬢だからです」
と、メリアーナがお答えになる。
「マホガニート伯爵領は、赤髪が多いとシアン国王陛下から教えてもらいました。
が、それとカリーナ様とどんな関係が有るのですか?」
と、藍は質問をする。
「アイ様、このお話は大変醜悪なお話に成ります。お聞きになりたいですか?」
と、メリアーナ様が確認してくる。
……本人が悪くなくて疎まれるということは、家の問題か?
「私が聞いて良いことなら、お聞きします。ですがその話は私と無関係で無いから、確認されているのですよね」
と、藍が答える。と、二人に頷かれる。
「アートムさんも知っている話なのですか?」
「ある程度の年齢の国民なら、知ってる話です」
と、アートムさんが答えてくれる。
「では聞きたいと思います」
「シアン国王陛下のお父上、先々代の国王陛下アラン様には、初めに側妃ナタリー様がいらっしゃいました。第1王子ブルーク様、第2王子ザーム様と授かった後に、正妃セラ様が第1王女ローズ様、第3王子ヘンリー様と授かり、側妃ナタリー様には双子の第2王女リリー様、第3王女サリー様が、アラン国王には、三男三女と授かって年上の側妃ナタリー様がアラン陛下を支えて居られてました。
が、無理をされたのか病で、お亡くなりになりました。
その後に正妃セラ様に第4王子サイニー様が、その頃になると側妃ナタリー様が担って居られた事が正妃セラ様お一人に負担となり、王子王女の子育てや成人の段取りなどを正妃セラ様が担っておられたのです。
アラン国王陛下は、晩餐会の時にマホガニート伯爵令嬢アーリン様に一目惚れをされて、次の側妃にお求めになりました。
14歳と年が離れていましたが、アラン国王陛下がアーリン様を寵愛されて、第5王子シアン様、第6王子アース様、第7王子リオン様と三人の王子を授かりました。
しかし、カーディナル王国には隣接している国々が侵略や陰謀など問題も多くアラン国王陛下もアーリン様に構ってばかりおれなくなったのです。
正妃セラ様と国営に勤しんで居られた時に、側妃アーリン様が懐妊され生まれた子供は、アラン国王陛下の金髪、グリーンの瞳でなかったのです。
アーリン様は赤髪のブルーの瞳で、生まれた子は銀髪のブルーの瞳だったのです。
側妃アーリン様の不義が明るみになりました。お相手は第2王子ザーム様、先側妃ナタリー様の銀髪でアラン陛下のグリーンの瞳、第2王子ザーム様がお認めになりお二人は刑に処されました。子も処分となり、側妃アーリン様の悪女不義の話は、国内に広がりアーリン様の三人の王子は肩身の狭い思いをされたのです。
アーリン様のご実家マホガニート伯爵家はアーリン様の血族は刑に処され、血族でない入婿であるカリーナ様の父親が伯爵家を継ぎ今に至ります。
ただ、マホガニート家があるブーゲンビート辺境伯領は、赤髪が多くカリーナ様は瞳の色こそ違いますが、悪女アーリン様と同じマホガニート伯爵令嬢であるために、偏見と忌避されていたのです。
カリーナ様が悪くなくとも悪名高いマホガニート家の名が人々の記憶にあるのでしょう」
と、アートムさんが説明してくれた。
「この話は、若い世代に引き継ぎないようにシアン国王陛下が采配されましたが、親から子にと伝わるものです」
と、メリアーナ様が教えてくれた。
「第5王子は、シアン国王陛下ですよね。自分の母親が刑に処されたのに国王となれたのですか?」
と、藍が問う。
「順番でいえば、アラン国王陛下の次は第1王子ブルーク様ですが、弟のザーム王子の責を感じて降婿オリゾーラル公爵となられました。
王位には第3王子ヘンリー様が、元々正妃セラ様のお子様なので問題が無いのです。その時に信頼する弟の第4王子サイニー様が王弟をしながら宰相として兄のヘンリー様を支えたのです。
次の王位には王弟のサイニー様ですが、強く拒否されて第5王子シアン様が王位に即位されました。シアン陛下も拒否されていたのですが、ヘンリー国王陛下には、王女二人しかいらっしゃらず隣国に嫁がれていて跡継ぎがいらっしゃらなかったのです」
と、アートムさんが説明してくれる。
「シアン国王陛下の跡継ぎはいらっしゃるのでしたら、奥様とお子様もいらっしゃるということですね」
と、藍が確認する。母、朱里の妹弟がいるということだ。
「いいえ、陛下は結婚を拒否なさいました。王位に付く条件を出されたのです。シアン陛下の次に即位する者は、サイニー様の子孫とされてダニエル王太子は、サイニー様の曾孫になります」
と、メリアーナ様が説明してくれる。
凄く頭を使いながら聞いていたが、シアン国王陛下も差別を受けていたということ気がついた。
異母兄弟には、愛情があったみたいだが周りからの悪感情に晒されていたと言うことだろう。
……セイ様が仰っていた、碧は現実逃避の誓願を持っていたために、付いて日本に来たと。
そんな事情をニックさんは私に言いたかったのか?
私がシアン国王陛下の過去を知れば許してくれると、
各々事情があって皆生きている。多少苦労の大きさはあるだろうが、その人の立場にならないと分かったりしない。
想像と理解は出来るが、許容となると分からない……




