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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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再教育?

「アイ、そろそろ時間だよ」

と、ルカが何時ものように声を掛けてくる。

午前中は、小物作りに集中出来てくだらない考えをしなくても良かった。


……セイ様の話はくだらなくはないし、この世界の情報とわたしの思考の纏めを担っている。知っているつもりの身近な人の過去を探るのは、気持ちの良いものでもないが、聞きたい本人達がそばに居ないのだ。

セイ様の情報とわたしが知っている人柄で考える。


お祖母ちゃまは、碧お祖父ちゃまを好きだったのに居なくなったんだよね。

元々不審者だよね。こっちの世界から行って言葉は通じないし、でも……お祖母ちゃまならそれに曾祖母ちゃまも居てたからなんとかなったのか?

……聞きたいな、お祖父ちゃまの話を聞いたことないよ。お墓の中にはいないし、こっちの世界で国王様してるし。


翠伯母ちゃまは、小学校あがる前だ。その頃に急に父親がいなくなるなんて、想像できないけど状況的に香山家がそれに近い。


大変だったよね。


順一先生、心配してるよね。順一先生ストレスあると直ぐ甘いもの食べるけど、折角10キロ半分もどしたのに。


樹兄、泣いてないかなぁ? 何時もわたしの代わりに泣いてくれる。わたしが泣くと発熱するからと、謝りながら泣くんだよ。大きい樹兄が泣くとわたしの代わりだと知ってる人はわたしに関わってくれる。樹兄は、わたしの心の中が見えるのか、お目目見せてと迫ったことがあったが。


司は、冷静に見てくれているはず。

わたしが自分から居なくなったりしたいと。でも、不思議な力でこっちの世界に来てることは、流石に分からないだろうし、順一先生のお菓子を取り上げているところしか思い浮かばない。


湊、湊はどうしてるだろうか? 荒れてるかなぁ? ガーディアンの皆に食って掛かって、浅葱兄と、要兄に怒られて、宗一先生が宥めてる?


お母さんは、お父さんは、奮起してそう。わたしの両親だからね。…………泣いてないといいな…………




机の上を片付けながら考えに耽っていたようだ。


「アイ大丈夫かい?」

と、ルカが聞いてくる。


「あぁ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてたわ。大丈夫よ」

と、答えた。


「また沢山作ったね。そんなに作ってどうするの?」

と、ルカが聞いてくる。


それもそうか、目の前には大小様々な大きさの巾着がカラフルに並んでいる。それに収納袋は口を折り込む形にした。ボタンは大きく丸ボタンで中心を縫い付ければいいだけの簡単な物。


「そうね。必要な人に配って回るのよ。私は、個人的に何も持ち合わせないから、頂いた生地を加工するしかないし」

と、出来上がったものと、仕掛けのままのものとを纏める。


「ルカが呼びに来たのなら、予定通りでいいの?」

と、聞く。


「そうだと思うよ。僕はアイを別邸に送ったら少し離れるけど」

と、言ってきた。


「ルカのお仕事を頑張ってね。何時も私に合わせてくれるけど、私は此処の居候よ。ニックさんに頼んで部屋を出ていきたいし」

と、廊下をルカと歩きながら言うと、


「えっ?…………」

と、ルカが止まって固まる。


「どうしたの?」

と、藍が聞くが、黙ったまま側に来る。


「…………アイは今すぐ、国に帰りたいのか?」

と、ルカが聞いてくる。


「帰りたいわよ、帰れるならね。あたり前だと思うけど、私の歳でこんなこと言うと笑われるの?」

と、ルカが呆れて聞いてきたのかと思って、聞き返す。


「いや、アイが帰りたいと思わす人が居るんだったと思い出したんだ」

と、ルカが言う。


……帰りたいと思わす人? 大勢いますが?


別邸玄関扉の前にアートムさんが、待っていた。


「アイ、待っていました。体調は大丈夫ですか?」

と、アートムさんが聞いてくる。


「こんにちは、アートムさん。体調は今のところ大丈夫です。

アートムさんは、お忙しかったのですか? お見かけしなかったように思います」

と、藍が返事をすれば、


「そうですね。忙しくしていましたが、何とか落ち着けそうですよ」

と、言いながら扉を開けてくれる。


「帰りはルカが迎えに来てくれるの?」

と、玄関を入りながら外に居るルカに聞く。ルカが父アートムに視線を向けて


「どうでしょうか? 私か父かどちらかだと思いますよ」

と、ルカが曖昧に答えた。


……あら、私の方が時間がかかるの? ルカの方が時間がかかるのだろうか?


「アイ行きましょうか」

と、アートムさんから催促されて談話室に向かう。


「アートムさん、私に何か話があるのですか?」

と、藍から聞いてみる。ビックリした顔をするアートムさんなんて珍しい。


「何故? そう思うのですか?」

と、問う。


「何故と言われても、アートムさんの距離でしょうか?」


「……距離とはまた、何時も通りですよ」

と、アートムさんが答える。


だが、わたしは感覚で何時もより15センチ近いと感じた。子供の掌位だけれど、ルカと同じ距離だ。


「ルカは何時もその距離なんです。アートムさんが一番距離を縮めて側に居るのは、シアン国王陛下ですよね。次にカール様でしょうか」

と、藍が感じたことを伝える。


「驚きました。無意識にしてきたことを指摘されたのは初めてです」

と、アートムさんが言うが、多分分かってても言わなかっただけだと思う。


「ニックさんとルカは分かっていると思いますよ。言わないだけです。きっと!」

と、答えた時には談話室に着いた。


扉を開けて部屋に入ると、サンルームの椅子にメリアーナ様が座って居られる。隣には侍女のローマさんが私に気がついた。


「こんにちは、メリアーナ様。お加減はいかがですか?」

と、こちらからお声を掛けさせて頂いた。


「ごきげんよう、アイ。やっと来てくれたのね」

と、笑顔で迎えて貰える。


「すみません、メリアーナ様。あれから色々ございまして今日になってしまいました。お許しください」

と、こちらではしないお辞儀をする。


「アイが謝る事はないですよ。

カール様から伺いました。ウチの孫達のせいでしょう。それにクルナが無事に出産出来たのはアイのお陰だとローマからも聞きました。ありがとうアイ」

と、言って貰えて、隣のローマさんも笑顔で頷いてくれた。


「私から説明しなくても、メリアーナ様に伝わっているのですね。何と言っていいのか分かりませんが、先にお花の手入れをしてもよろしいですか?」

と、許可をもらい花の水替えと新しく切り口を作り水上げをして、アートムさんに手伝ってもらい器に生け直す。大きめな葉を取ってきてもらって短くなった茎を支え入れして、少し手を入れる。


「凄く感じが変わりましたね。お花を代えたのですか?」

と、ローマさんが聞いてくる。


「いいえ、アイはお花は代えていません。葉を足しただけです。側で見ていた私でもローマが言っていることと同じ印象ですよ」

と、アートムさんが答える。


「兎に角、可愛い花束ね。側で見たいわ」

と、メリアーナ様にねだられて、アートムさんが近くに持っていく。


「アイ、側に来て一緒に見ましょう」

と、メリアーナ様に誘われ、側に座ればローマさんがお茶を入れて部屋を出ていく。


「アイ様」

と、急にメリアーナ様に声を掛けられ、アートムさんも居るのにどうしたらいいのやら、


「申し訳ないですが、カール様を怒らないで下さいね。アイ様の事を知っているのは、陛下を除いてはカール様、私、ミカエル、ニック、アートム、ルカの6名です。それ以外には伝えておりません」

と、言われて、側に立っているアートムさんを見る。


「この事は、領主ロビン様にもお知らせしておりません」

と、アートムさんが言うが、


「あ~のぉ、それでもよろしいのですか?」

と、お聞きすれば


「王都に出ているロビンに伝えたところで、混乱するだけでしょう。それに又同じ過ちを仕出かすかも知れないと思うとミカエルに報告を止めさせました」

と、メリアーナ様が、仰る。


「アイ様、今回の件で私共のダーニーズウッド家の問題が明るみになりました。このまま放置する事は問題を先延ばしするだけで解決に当たりません。孫達は再教育が必要だと、カール様には通達致しました」

と、決定事項だとメリアーナ様が仰り、アートムさんが頷く。


「アートムさんもルカも知っていて、何時も通りにしてくれてたんですね。出来ればアイ様呼びを止めてもらえると嬉しいのですが、何とも居たたまれないと言いますか」

と、藍が言えば、


「ニックから聞きました。対面してる時のみ許可されたと」

と、アートムさんが言ったら、横でメリアーナ様も微笑んで頷いている。


「そう言えば、ウチの馬鹿孫がアイ様に付きまとっているとアートムから聞きました」

と、メリアーナ様がいつになく怖い笑顔で聞いて来られる。


……確かに、自分の物、物扱いされたけど……


「このまま、放置するわけにはいけませんね」

と、アートムさんまでも悪い顔をして言ってくる。

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