婚約者?
「いつの間に……」
部屋のカーテンから光が入ってきてる。天蓋のカーテンはされていない。ベットに昨日ままの格好で寝ていたようだ。
……ニックさんと話をしていたと思うけど、朝だよね……
『アイ、めがさめたのか?』
と、セイ様が声を掛けてきた。
「私はニックさんに迷惑を掛けたのでしょうか?」
『いや、アイはじぶんでこのままねると、いってこちらにきたぞ』
と、ベット横にセイ様がウネウネしながら言うが、記憶にない。
「ワインを飲んだ所までしか覚えていませんが、体調はそれ程悪くないようです」
『アイは、おみきがはいったほうがすなおだな』
「…………私は何を話したのでしょう?」
『とろしても、そばにおったものにはわからぬな、アイはこちらのことばではなかったからな』
「セイ様は聞いておられましたか?」
と、聞けば
『きいてはおったが、アイがあやまっておったのはだれにじゃ』
「謝って……私が?……心当りが有りすぎて」
……両親、ガーディアン、結衣さん、岡田さん、誰に?……
『アイにいっておきたいことがあるのだが、だれかきたの……』
と、セイ様が話すのを止める。私しか聞こえないのに。
「アイ、おはよう」
と、ルカが部屋の入口から声を掛けてくる。
「おはよう、ルカ。待って今起きたとこなの」
と、何時もどおりのやり取りの筈。
「分かった。体調は? ニックが心配してた」
「悪くないわ。多分」
と、曖昧に答えた。今日の用意もせずに寝てしまって続き部屋に行くしかない。ベットから降りて着替えに行く。
続き部屋に入ると昨日の三人が入ったままになっている。片付けもしてないのは、あれからニックさんしか部屋に入ってないからだ。
着替えてから考える。
今日の体調は良くもないが悪くもない。藍の体調は気持ちにも左右される筈が、不調を覚悟して夜通し小物作りをしていたのに、思っていた程でないのが不思議だ。
部屋に戻ると、ルカがカーテンを開けて机の上を見ている。昨晩作った小物が置いてある。
「アイが作ったのか?」
と、ルカが聞いてくる。
「そうよ。ルカが色々置いてくれてたのでしょう」
と、返事をすれば、
「器用なことをするんだな」
と、丸布団を持って見ている。
「そう? 対したことないけど」
と、ベットを整えながら答えた。さてと、
「それで、今日の私の予定は?」
と、ルカに問う。
「カール様が、アイが嫌でなければ、メリアーナ様と会って欲しいそうだ」
と、返事をする。
「メリアーナ様に会うだけでいいの? 午前中?それともお昼から?」
「それしか聞いてないよ。この後確認するでいいか?」
と、聞いてきた。頷いて返事にした。
朝食後、厨房に寄る。料理長が昼食の仕込みをしているところに、
「ウースさん昨晩のスープありがとうございました。とても美味しかったです」
と、料理長にお礼を言うと、
「口に合ったかい? ニックがアイに軽く夜食をと言ってきたからな。ワインボトル1本空けていたけど、誰と飲んだんだ?」
と、聞いてきた。
「1本空いてました?」
……私じゃないよね。でも……記憶ないし
「アイじゃないのか? ニックは酒を飲まないぜ」
「えっ?」
「若い時は、凄く飲んでたらしいが、俺は1回も見たことないし、ノアに聞いた時は驚いたからな。俺が来て20年近くなるが、全く飲めないと思ってたくらいだし」
と、教えてくれた。
……普通に飲んでたと思うけど、私もグラスに一杯位しか飲んだことない、私が飲んだの?……え〰️!
「ニックさんは、他に何か言ってましたか?」
「何かって?……アイの国の料理を知らないかと聞かれたが、俺も色々な国で修行したがニホンという国は知らないな。
凄く遠いらしいが、アイが教えてくれたら作るけどな」
と、ウースさんは言ってくる。
「私は料理長の料理を美味しく頂いていますので、正直今故郷の料理を食べると帰りたくなります。それはそれで食べれそうにないですよ」
と、藍が言えば、
「そうだな、味覚は時間が掛かる。食べたくなったら言いなよ、作ってやるからな」
と、料理長は手を止めることなく言ってくれた。今まで通り普通に接しくれる事が、ありがたい。
部屋に戻るとカルマさんが、掃除と室内を整えてくれていた。
「アイ、ごめんね昨日の片付けが残ったままだったね」
と、謝ってもらうが、わたしの我が儘でしたことだ。
「いえ、私がルカに頼んだことです。すみません」
と、言った時に部屋の入口から
「ねぇ、アイ」
と、突然ケビン様から声を掛けられた。
「おはようございます。ケビン様何かご用ですか?」
……何だろう? このナレナレ感は、
「僕はこの前から話をしたいと言ってるけど?」
と、悪びれもなく言ってくる。
「お話ならもう終わりましたでしょう? 他に何か有りますか?」
と、藍には全く心当りが無いから、ケビン様の言いようが分からない。
「どうしてそんなに僕に冷たく出来るかな?
いずれ婚約するんだから、そんなに素っ気なくしなくてもいいんじゃない」
と、ケビン様が言った。
……えっ?……と?…………うっ?…………???
「誰が? 婚約するのですか?」
と、確認するが、
「何、惚けているの? 僕とアイでしょ」
と、ケビン様が言うが、
「惚けていませんが、私とケビン様が何故婚約しなければいけないのかと聞いています」
と、藍は聞き返す。
「勿論、アイは僕の物だから」
と、ケビン様が答える。
……ボクのモノって? わたしはモノか?
「私はケビン様の物ではありません」
と、藍は答える。相手にするのも馬鹿馬鹿しくなってきた。
カルマさんが、わたしの側でオロオロとしているが、そう言えばカルマさんが謝っていたのはこれか!
と、カルマさんを見ると涙目になっている。
「私には、婚約者がいます。ケビン様が何を言っても無駄ですよ」
と、改めて言う。カルマさんが横でウンウンと頷いているが、
「だから、僕が新しくアイの婚約者になると言っているんだけど」
と、平気な顔をして言ってくる。
「私にはケビン様の言動が理解できません。ケビン様の思考回路が正しいのかも判断できません。
本日、メリアーナ様にお会いするので、お伺い致します。
私は、メリアーナ様のお話を聞いてからケビン様のお話をお聞きすることに致します。
ケビン様も自分の判断が的もかを、姉、兄にお聞きになることをお勧め致します」
と、話を切った。
ケビン様を部屋から追い出す。カルマさんが、
「ごめんね、アイ。やっぱりケビン様がアイのこと気に入ってしまったみたいで」
と、謝ってくる。
「私には今一つ分かりません。ケビン様の態度が」
と、内心本当に分からない。
「兎に角、メリアーナ様に聞いてみます。私はこちらの習慣を全部習ったわけでないので、知らないこともあるでしょうし」
と、藍が言えば、カルマさんが、
「そうね、そうした方がいいわ。私はこの事をニックに伝えるわ」
と、言って部屋を出ていった。
……何なのよ! いったい!……9歳も離れたボクから婚約者だと言われても、罰ゲームみたい。
14歳のケビン様は、来年成人? こっちって? 15歳で結婚するの? ミカエル様はまだよね。
昨日お酒の話で、日本は20歳でニックさんは15歳って言ってた。これって成人の年齢なの?
日本では成人とお酒のタバコの飲酒喫煙年齢は違う。それに婚姻年齢は成人からだが、状況で違う場合も有ったよね。
それに、わたしは誰とも結婚をするつもりも無いし、出来るとも思わない。
日本には帰りたいが少しでも加護を増やさないと、生命維持が危ないのに……あっ!
セイ様が言っていた身内の加護が必要なのは、碧お祖父ちゃまの事だった。
でもカール様は? 母 朱里とロビン様が従兄甥姪で、わたしとミカエル様兄妹弟が従兄孫になる。
ギリギリ6親等かな? セイ様に確認取らないとわたしは対応に困る。
わたしの身体が楽になったのは、身内に囲まれていたからだとすれば、話は分かる。
分かるけど、ややこしくなるのは願い下げだわ…………




