山小屋
カーディナル王国で山岳山脈があるのは、西側のダーニーズウッド領と、南側のブーゲンビート領の二つの地域だ。
北側のコールチードゲ領は海があり港町で、隣国ジャスパード国から流れるシーガネ川をダーニーズウッド領と王都を横切ってコールチードゲ領から海に出ている。
東側はボドール領で隣国ピリジアーノ国と国境で陸続きになっている。
アギルがブーゲンビート領を出る先に選んだのは、山岳があるからだ。
危ない獣がいるがアギルと兄弟にとっては絶好の遊び場仕事場であっる、ダーニーズウッドの山中と似た場所であることがアギルにとって決めてとなった。
山小屋のアギルとオークは、仕事の採掘場の休憩所と変わらないここでの生活は苦でもないが、ラルトさんは慣れずに苦慮している。
「ラルトの旦那、無理せず帰りましょう」
と、オークが気に掛けて説得しているが、
「嫌、僕は調べたいことがあるから大丈夫だよ」
と、ラルトさんが答える。
「ラルトの旦那、調べるったて街での噂は何もなかったし、ダーニーズウッド家の話を探っても、シアン陛下の滞在中位でしたよ」
と、オークはそのままを言うが、アギルは不思議に思ったことを聞いてみる。
「ラルトの旦那、ヤーナさんに何か吹き込まれましたか?」
「何をだい?」
と、不思議そうに答える。
「旦那と俺は、事務所でサイガール商会のヨハンさんから依頼を受けて、ミカエル様の結婚相手を探るように言われてここに来ました。
でも、俺とオークが出てる時でもラルトさんは、街にだけでなく色々回ってましたよね。
買い物したが店のおばさんが言ってましたよ、あんた達が探していたものは見つかったのかいって」
と、ラルトさんに聞いてみた。
「別にやましいことじゃないよ。ヤーナからダーニーズウッド領の鉱石の種類を調べてきても良いと許可を貰ったんだ」
と、ラルトさんは事無げに言う。
「「あぁ~~ぁ!」」
と、アギルとオークは、納得の声とヤーナさんの手腕に項垂れそうになる。
「折角、ダーニーズウッド領の地に来たんだ。どんな鉱石がとれるのか知りたいじゃないか」
と、ラルトの私情に巻き込まれている二人は、顔を見合わす。
「そんなの俺に聞けばいいじゃないですか!
旦那が館の側に行きたい。帰りたくない。まだ調べるって言うから、ヤーナさんに怒られるのが嫌で頑張るんだと、思ったのに」
と、アギルが言えば、
「旦那の趣味に付き合ってるだけですか?」
と、オークも言う。
「ダーニーズウッドの取れる鉱石なんかは、俺が知ってます。
でもこの地は、領主様の許可無しに採掘出来ません。狩猟は許可されて小屋も土地も領主様が、切り開いて建てた小屋なんです。そこから奥のこの休憩小屋は親父たち猟師が建てたもので、山に入って危険な時に利用する小屋なんですよ」
と、アギルが呆れてラルトに言う。
「アギルは、この山岳の取れる鉱石を知ってるのかい」
と、聞いてきた。
「知ってますよ。でも、何で領主様が産業になる鉱石の採掘をしないかも知ってます」
と、答えた。
「僕は採掘をしたいわけじゃ無いんだよ。石の種類と、知らない鉱石を調べたいだけだから」
と、ラルトの旦那が言った時
「そろそろお邪魔してもいいかい」
と、小屋の外から聞こえた。
「………………」
「なぁ、今のアギル? じゃぁ、オークかい?」
と、ラルトさんが聞いてきた。
……だから言ったんだ。早く帰ろうと、……
「やぁ、10年ぶりだね。アギル」
と、今にも取れそうな扉が開いて、山小屋の前に立っていたのは、元第一団隊隊長のキニルで、側には元第三団隊副隊長のノベルもいた。
「ご無沙汰しておりました。キニルさんノベルさん、どこからお聞きになってますか?」
と、アギルが外の二人に聞く。
「多分始めからだと思うけどなぁ」
と、長身のノベルが答える。
「アギル、お前また騙されてノコノコ帰ってきたのか?」
と、今度は腹が出た小太りのキニルが聞いてきた。
「いえ、今回は事情を聞いたうえで、帰ってきました」
と、アギルが答えると、オークが
「アギルは何回も断ったんだよ」
と、言ったら、キニルとノベルの後ろから、
「その事情を聞くから、下の小屋に降りてこい」
と、声が聞こえ、アギルが思わずギィッグとした。ラルトの旦那が、
「アギル、僕はどうしたらいいんだ?」
と、聞いてきたから
「旦那は、正直に話した方がいいですよ」
と、ラルトに言う。
狩猟小屋に、三人バラバラに入れられる。
アギルは、小屋に馬を隠すより獣に襲われないようにしていた。どうせ見つかるだろうと馬車は外に隠す小細工はしていない。
山岳と館の警護第一団隊隊員が、小屋を囲っている。俺の最終手段はアートムさんに正直に話すことだ。
「アギル、どういうことか言えるか?」
と、目の前のアートムさんが聞いてきた。
「言えますよ。腹括って来てますから。どんなに断っても説明しても、分かって貰えない恩人には、頼まれた通りに動いて駄目だったことを、見せるしかないと思ってますから」
と、アギルが話し始める。
「一様名乗っておくな。元第三団隊副隊長ノベルだ。あんたも名乗れるかい?」
と、ラルトに聞く。
「僕は、ロカ商会のラルト·ロカです」
「商会の名が付いてるけど、商会の一族かい?」
「はい、妻が代表です。僕は元々商会の鉱石を研究をしている所にいました。妻に研究を好きなだけさせて貰えると言うので、婿に入りました」
「なるほどね、なんでアギルと一緒にここに来ることになったか、正直に言えるかい?
無理にとは言わないけど、俺らはあんたが言いたくなるまで待つだけだから」
と、ノベルが言ってくる。
「アギルが、正直に僕は言った方が良いと言われました」
と、ラルトも話し始める。
「さて、俺は元第一団隊隊長キニルだ。アギルと一緒にいたお前は?」
「あの、僕はアギルとラルトの旦那の言う通りにしただけですよ」
と、オークが答えた。
「そうか、どんなことを言われて従ってきたか、言えるな」
と、キニルに言われ、
「アギルは、ロカ商会の採掘場で親しくしてる仲間の一人です。仕事中にアギルが事務所に呼び出されて、僕と一緒にいたラルトの旦那と三人でダーニーズウッド領に行くように、雇い主のヤーナさんに言われたと言ってました。
ダーニーズウッド領に着いたら、このまま宿に入ってアギルが、僕とラルトさんとで街の噂や情報を集めるように言いました。
折角なんでラルトの旦那が興味あるところに、連れていきます。と、言ったら
アギルが、ラルトさんには自然でいてもらう方が、僕も動きやすいだろうと言われました。
アギルは、日が暮れたら食事をしながら噂を拾うと言ってました。
次の日の朝早くに馬で領主邸近くまで道案内をしてもらって、アギルは近付かないから見に行くのは僕に頼むと言われて、ラルトさんは俺達がいない時に好きに街を見て回る、それの方が仕事で来てると思われやすいからと、言う段取りでした。
僕は容姿を見ればいいんですねとアギルに聞いたら、そうだ見てくるだけだとそれ以上近付くな。怖い人がいるんだ、あそこにはと言ってました。
ラルトさんが、街の噂で館にご令嬢がいるなんて全く話にも出ないから、ヨハンさんはデマをもらったんじゃないのか? と、言って疑ってました。
僕が聞いた噂の1つが、ノーマン医院のディービス医師が頻繁にダーニーズウッド家に往診しているらしいと、報告したらラルトさんも
それは聞いたところ、前領主夫人が体調を崩されているみたいだと聞いたみたいで、
いつもなら、患者さんが減るこの時期にご夫婦で王都に行かれるのにって、隠居された先代も頻繁に往診に付き合っているそうで楽しそうだと、看護婦が言っていたと、ラルトさんは言ってました。
看護婦が言った楽しそうにが引っかかり、アギルから明日は遠くからでいいから館を見てきてくれ、絶対に無理はすると、館の近くまで一緒に行き、馬を隠す場所と敷地の入り方を教えて貰いました。
様子を見てくるだけでいいんですねと、確認して日が沈む前に、宿に帰りました。
庭園に出ていた女性を見たので、綺麗な人が居たと言ったけど分かってもらえず、髪色を聞かれて髪色である程度土地柄が分かると言われたから黒ですと答えたけど赤色が目立っていたから赤かもと答えました。
赤髪はメアリー様じゃないかと、黒髪なんてありえないし、母親のカリーナ様と同じ赤髪のはずだからと。
カリーナ様はマホガニート伯爵家の出だからとアギルが言うけど、僕は確認のため次の早朝に館に行ったけど庭師に見つかったと思って、すぐ宿に帰りました。
アギルが噂をそのまま持ち帰ってヤーナさんに三人で叱られようと提案したけど、それに反対したのがラルトさんでした。
ラルトさんの指示で、宿を昼前に馬車で移動すると、ダーニーズウッド家の馬車が前を走っていて驚きました。
僕たちはそのまま計画通りに、食料となるものを買って身を隠せる秘密の場所に行くつもりが、またもや前をダーニーズウッド家の馬車が走っていて、アギルがへこんでました。
後はご存知の事だと思いますが、ラルトさんが研究をしたくてここにいます。アギルは始めから嫌がっていましたし、僕は手伝いに呼ばれただけです。
さっきもラルトの旦那に帰ろうと説得してたとこですよ」
と、オークが説明をキニルする。
「なかなか、上手く出来た説明だな」




