探し物
ナリスさんが、わたしが持っている生地を一緒に干してくれると言ってくれて、濡れている生地を絞らない訳を言ってお願いすれば、取り入れる時期も聞いてくる。
ナリスさんが、クルナさんの身の回りの世話をしているらしく、ついでに後のことも引き受けてくれた。
「アイ。お昼までは時間あるが、部屋で休むか?」
と、ルカが聞いてくる。
「昼食後に予定が有るって言ってたのは、ミカエル様に言われたの?」
と、ルカに聞けば、
「そうニックから聞いてる。アイの体調が良ければと無理することは無いよ、皆アイの虚弱は理解してるから」
と、虚弱を主張されても、有り難いが。
「それは今のところ大丈夫だけどね。今からルッツさんに会いたいけど、どこに居るか知ってる? クルナさんのとこかな?」
と、聞けば、
「いや、多分作業場だろう。川のことでしたいことが有るって言ってたから。案内するよ」
と、ルカが言うが、
「ルッツさんの作業場は、知ってるわよ。ルカは自分の仕事してきていいよ。その後は部屋に戻るから」
と、答えた。
「クルナのとこには行かないのか?」
と、不思議そうにルカが聞いてくる。
「まだ 産後三日だよ。クルナさんも疲れるよ。馴れている人ならいいだろけど、私は面識無いのに気疲れさせるのも気の毒よ。色々落ち着いてからアイル君に会わせて貰うわ。楽しみを後に取っておくの」
と、答えた。
「そうかでも、ルッツが作業場に居なかったら困る。又行方不明になられたら、こっちの身が持たないから付いていく」
と、自棄に今回の騒動はルカのトラウマにしてしまったのかしら?
「ルカの時間が有るなら私は良いけど、ルカは暇じゃないでしょ?」
と、聞けば、
「……これも仕事のうちだよ」
と、小声で返ってきた。
「ルッツ居るか」
と、ルカが作業場で声をかける。
「ルッツさんアイです、聞きたいことあ」
バァーーンと、作業場の扉が開いてルッツさんが、飛び出してきた。で、抱き潰されている。
……るっげぇっ?
「コラ! ルッツ! アイが潰れている」
と、慌ててルッツさんをルカが止めてくれたが、
「あ~あ、アイ。ごめんよ」
と、ルッツさんから解放せれたが、ビックリした。
「あの、ルッツさん? 抱き付くのは奥さんのクルナさんにしてくださいね。力の加減はしてあげてね」
と、注意はする。
今日は抱き付かれる日なんだ。と、内心思った。
「アイ。ごめん。クルナと赤ん坊の命の恩人に嬉しくてな」
と、言ってくるが、無事にお産を誘導してくれたのは産婆さんのおかけであって、赤ちゃんはクルナさんが必死に守ったからで、わたしはたまたま見つけただけだ。
「無事で良かったですね。クルナさんもアイル君も」
と、言えば、
「何で、アイルって名前になったの知ってんだ? 朝クルナと決めたばかりだぞ」
と、聞いてきた。
「さっき、ナリスに聞いたんだ。洗濯場で会って」
と、ルカが説明する。
「アイには感謝しかないんだ。本当にアイが見つけてくれたから、クルナは助かったんだ。ありがとう」
と、また抱擁される。今度は手加減ありで。
「それで、俺に用事かい? 何でも聞くぞアイの頼みなら」
と、大袈裟に言われるが、頼みづらくなる。
「植物のことで、ルッツさんに聞きたいことが有ったんです。お手洗いのお尻拭きはルッツさんが、用意してるの? 海の物と植物の物があったと思って」
と、聞けば、
「良くわかったな。使用人の方は俺が作っているが、客室用は他所から取り寄せている海の物だ。親父が似た植物を見つけて加工している。街の店でも売ってるよ」
と、教えてくれた。
わたしは初めてこの世界に来たとき使用した、お手洗いと、今客室で使っていお手洗いに置いてあるものが、似てるが違うと思って触ったり匂いを嗅いでみたりしたら、客室のは柔らかくて無臭だが、使用人の方は少し繊維が荒くて草の匂いがした。
「それが聞きたかったことかい。必要なら作るしアイのためなら親父に頼んで高級な物もあるぞ」
と、言ってくれるが、別にそこまでこだわらない。
「いえ、新しいものが欲しかっただけです。それとルッツさんにお願いあるんですが、お花を分けて欲しいです」
「この前みたいにするのかい?」
と、ルッツさんが聞いてきたから、説明する。
「今度は、花の部分と葉っぱだけが欲しいんです。それを天日干しにしてください」
「薬草の収穫みたいにするのか?」
「そうです! その通りなんですが花と葉っぱだけでいいので、出来れば香りの良いのがあれば嬉しいです」
と、お願いしてみた。
「あぁ、そんなことでいいなら構わないよ。花と葉っぱは直ぐに無いが、便所のケツ拭きの新しいのなら直ぐ渡せるよ。持っていくかい?」
と、ルッツさんが聞いてきたから、頷いて返事をする。
後でルカが部屋に持って来てくれるというので、お願いをして、もう一つ聞いてみた。
「金物があれは良いのですが、こんな風に振ったら音が出るものなんて有ります?」
と、手を左右に振って見せ聞いたら、ルカとルッツさんが馬に飾りで付けていると教えてくれた。
やったあぁ! 鈴があるらしい。
「ルッツは今何をしてたんだ。仕事の邪魔だったか?」
と、ルカが聞いたら、
「山の川が大雨も降ってないのに、石が動いて館に引き入れてる水が濁ったんだ。それを見に行こうかと思ったが、急ぎじゃ無いからいいさ」
と、言ってから、
「ルカ、鈴は後で俺が取りに行ってやるよ。今日は若いのばかりだから、アイは近付けない方がいいぞ」
と、言う。何の事だろう? ルカは分かったみたいで頷いているけど。
「アイ、クルナのとこに行くかい?」
と、ルッツさんが聞いてくる。
ルカに言ったみたいに落ち着いてからとお願いしたら、ビックリされた。
「いや、それの方が有り難いが、直ぐに会わせてくれと頼まれるかと思って覚悟してたんだ」
と、言われた。わたしはそんなに我が儘な態度なんだろうか? 凄くへこみます。
「いや、メアリー様がアイルに会いたいと言われてな、メアリー様もクルナを知っているから良いんだが、ノアさんが落ち着いてからと断ってくれたんだ。でも、アイが言ってきたら、応えてあげて欲しいと言われてな。
アイの機転がなければ、アイルだって無事でなかったとタウさんにも言われてたんだ」
と、事情を聞いた。
ルッツさんが、お詫びに一緒に川を見に行くかと、誘ってくれた。
どうやら、私が朝抜け出して散歩をしてたことを知ってたらしいが、ルカが止める。
「今度にしょう。ルッツがアイに見せたいのは、あの窪みだろう? それに水が濁ったとルッツが言ってたじゃないか」
と、説得される。
「そうだが、今は魚の稚魚が川を下ってキラキラしてキレイなんだがな」
と、理由を教えてくれた。
「川の水の濁りが治まったら、段取りを付けるから」
と、ルカが約束してくれる。
ルッツさんの作業場から館の庭を通って、部屋に戻る途中でニックさんと会う。
「アイ。回復して良かったです。ルカから聞いてますか?」
と、確認された。
「えっと、はい。昼食後に何かあるのですか?予定が入ったと聞きましたが、執務室に向かえばいいですか?」
と、ニックさんに確認を取れば、
「アイ、今から部屋に行ってもいい?」
と、廊下をケビン様が歩いて近付いて来る。
……はぁ?
と、思わず脇から勝手に話に入ってきたケビン様に、礼儀を取るつもりもなく、
「ルカに昼食後に案内を頼むことにしますね」
と、ケビン様に視線を向けずに、ニックさんに答えを聞かずに終わらせることにした。
ニックさんが、一瞬ビックリした顔をしたが、
「そうですね。何時ものようにルカが案内しますので、アイの体調が変わらなければお願いしますね」
と、ニックさんが答える。
「分かりました。では部屋で少し休みますね」
と、そのまま部屋に向かえば、廊下に取り残されたケビン様が、
「どういうこと? 僕を何で無視するんだよ」
と、ケビン様が喚いた。




