蜂蜜スープ
「おはよう、アイ。体調はどうだい?」
と、ルカが声を掛けてきた。
「おはよう、ルカ。いい方よ、少しは動きたいわ」
と、返事をする。
「ディービス先生は、アイに朝の調子を聞いて任せると言っていたが、どうする?」
「色々したいことはあるけど、私が水通ししてた布はどうなったか、ルカは知ってる?」
「いや、そこまで気にしてなかった。多分洗濯室に纏めて置いてあると思うけど?」
「今日の予定は、無いんでしょう。私の体調次第だと聞いていたし、朝食後は洗濯室に布を取りに行くわ」
「朝食は普通に取れるかい?、ウースは希望の物を作ってくれると言っていたが」
「嬉しいけど、料理長に個人用なんて申し訳ないわ。皆さんと同じで良いです。量だけ少し軽めでお願いしてもいいかしら」
「わかったアイの体調のことと、アイの希望を伝えに言ってくる。このまま待ってて」
と、ルカが部屋を出ていった。
「アイ、おはよう」
と、カルマさんが部屋を覗く。
「おはようごさいます。カルマさん」
と、言えば、急にカルマさんが抱き付いてきた。
……えっ?
「アイ、ごめんね。私が部屋をちゃんと見なかったせいで、倒れているアイを見つけるのが遅くなって」
と、泣き出した。
……いやはや、あれはわたしが悪いのであって、カルマさんに非はない。
「カルマさんが、謝る必要は無いですよ。私にもっと体力があれが、騒動を起こさずに済んだんですから」
と、言ってみた。
「それは違うよ。私は侍女としてアイの側にいたのに、着替えるときにアイが出入口から離れたり、死角になるところを選んだりしてるのを、知ってたのに
……ごめんね。アイの旦那様になる人にも申し訳なくて」
……えっ?……誰の旦那様?……そんなに見苦しい姿だったの?
「あの、カルマさん。……私はそんなに酷い姿でしたか?」
と、聞けば、
「アイの下着しか身に付けていない姿を、ケビン様に見られたんだよ。ごめん〰️〰️ね」
と、カルマさんは謝り続ける。
……あ~ぁ、下着といってもな~ぁ、私の知ってる下着とは違うし、パジャマみたいなものだしな~ぁ
「カルマどうしたんだ?」
と、ルカが戻ってきてビックリしている。
「カルマさんが謝ってくれるんだけど、私は気にしてないのに、ケビン様に下着姿を見られても」
と、言ったら、ルカが急に真っ赤になる?
「どうしたの、ルカ真っ赤よ? 熱が出てきたの?」
と、聞いたが、カルマさんが泣き顔のままルカを見る。
「あ~~ぁ! ルカも見たんだった。ごめ~~んアイ」
と、カルマさんが追加で泣く。
「そんなに見苦しい姿をさらしたんでしょうか? それならこちらから謝りに行かないと」
と、言えば、カルマさんが首をブンブンと横に振る。
「いいえ、アイは謝る必要は無い。アイの旦那様になる人に、私が謝らないといけないんだよ」
と、カルマさんが必死に言ってくる。
……これってわたしの旦那さんを紹介しないといけないのかな? こっちでそんな話になるなんて、よし、大学生時代に使った。あれを
「カルマさん、大丈夫です。私の婚約者は、ここにいないですから知られることはありません」
と、ニッコリ笑って答えておいた。
……これは、ここにいる人とは、別人を仕立て上げないと、ややこしくなるな。学生時代に使った人物像は賢一おじさま。血の繋がりがある剛伯父さんでは抵抗があるし、修次伯父さんは翠伯母ちゃまに悪い気がして、修次伯父さんのお兄さん賢一おじさまを婚約者と仕立て上げた。
恋人と言ったらどこに行ったのかとか、馴れ初めとか体験してない私の話は、現実味が無くて信じて貰えなかった。それに賢一おじさまの私生活を殆ど知らないし、宮内庁勤務の賢一おじさまが、話すわけ無いから、一方的な私の話だけだったしな。
今、私が人物像として保護者以外を上げれるとしたら、……………結衣さん、岡田さんのエピソードやネタこちらの世界で頂きます。帰ったらちゃんと謝りますからね。
と、心に決めた。
こっちでややこしくなる話は、岡田さんのネタ使います。結衣さん!!
「えっ! そうなの?」
と、カルマさんが確認してくる。
「そうですよ、私一人でこちらでお世話になっているんです。事情があってすぐには帰れませんが、側に居ないので知るようがありません。気にしないで下さい」
と、言ったがルカが、
「それは、アイの国に居るということか?」
と、聞いてきた。
「えっ? そうだけど。私が此方に来ることがなければ、仕事終わりに会っていたはずです」
……うん、結衣さんと一緒に。
「だからね、カルマさんが気にすること無いですよ。朝食を食べに行ってもいいですか?」
と、カルマさんに言うと、
「あっ! アイ。昼食後は、予定が入ったからね。体調が悪くなる前に知らせてくれるかい」
と、ルカが知らせてくれた。
「わかったわ。午前中は好きにしていいの?」
と、聞けば、
「アイの裁縫道具を待ってくるのを忘れたわ、後で部屋に届けておくわね」
と、カルマさんが廊下を掛けていく。
「料理長さん、昨日の蜂蜜スープ美味しかったです。ありがとうございます」
と、ウースさんに厨房でお礼を言うと、
「ルッツから聞いたよ。クルナを助けてくれたのはアイなんだってな。ルッツが今にも踊りそうなぐらい喜んで教えてくれたよ」
と、ウースさんは、笑顔で褒めてくれる。
「たまたま、私が見つけることになっただけです」
と、答えた。
「それでも、ルッツやクルナがそうだと言っているんだ。俺はまだ見てないが、赤ん坊を見せてもらいな」
と、ウースさんは言ってくる。
「あの、蜂蜜って常に厨房にあるんですか?」
と、不思議に思って聞いてみた。養蜂があるのか知りたい。
「いや、何時もあるわけじゃないな。蜂蜜はこのカーディナル王国でも取れるが、ジャスパード国から薬と一緒に入ってくるんだよ。昨日のスープは、看護婦のロッティナさんがレシピを教えてくれたんだ。風邪や喉を痛めたときに、飲むと早く治るそうだよ。蜂蜜もロッティナさんが用意してくれたものだ」
と、教えてもらった。
「貴重なものだったんじゃないですか?」
と、思わず言ってしまったが、
「ロッティナさんは、実家がジャスパード国で薬卸をしている家なんだ。最近手に入ったからと貰ったが、気に入ったなら又、作ってやるよ」
と、ウースさんは言ってくれる。
「ありがとうございます。又、お願いしますね」
と、言って厨房を後にした。ロッティナさんには、お仕事とはいえ、お世話になり通しだ。
洗濯場に行けば、ルカが待っててくれた。
「アイ、遅かったね」
と、聞いてくる。
「厨房でウースさんに聞きたいことあったから、寄ってきたの」
と、返事をする。ルカの手元には、三日前にわたしが水通しした生地が置いてあった。きれいに乾いている。
これは始めからだね。と、盥に水を入れて色落ちは前にしたから、全部入れちゃう。
と、生地布を盥に浸す。軽く水を切っていくと、
「その盥をそのまま使わせて」
と、侍女さんが、おしめを入れた籠を持って入ってきた。
「ナリスが洗濯してるのかい?」
と、ルカが侍女さんに聞く。
「ええ、クルナは足を痛めていて歩けないからね。私が空いた時間ですると言ってるの。朝に干さないと次に間に合わないから」
と、話ながら手を動かす。
「アイと話すの始めてね。私はナリスよ、ルッツから聞いたわ。クルナとアイルを助けてくれてありがとう」
と、ナリスは、手を止めて言ってきた。
「アイル?」
と、ルカが聞く。
「そうよ。ルッツとクルナの赤ちゃんは、アイルって名になったのよ。可愛いわよ。見て上げてね。アイ」
と、ナリスさんは教えてくれた。




