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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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館の要

「ミカエルに任せる。陛下と別館に待機しておる」

と、シアン陛下とアートムを連れてカールは部屋を出る。



「朝から何なんだ!」

と、シアン陛下が愚痴る。陛下は腰を据えてアイに聞きたいことが有ったのだ。


「間が悪かったんですね」

と、アートムが同情すれば、私に視線を寄越す。


……分かっておる、孫達四人の事は、私にも責はある……


別館の談話室に着けば、メリアーナが侍女を連れて先に来ていた。昨日アイがメリアーナの為に届けてくれた花束を愛でいる。


「体調は、どうだ?」

と、声を掛ければ、


「あら! どうされたのですか? 陛下が子供の様に膨れておりますよ」

と、元気なころと変わらず茶化す。侍女にお茶を頼みメリアーナの側に寄れば、


「朝から賑やかなことですね」

と、話を振ってきた。


「その事なんだか、王都からメアリー達が戻ってきた。後で此方にも来るだろうが、報告することがあるのだ」

と、言えば侍女がお茶の用意をして戻ってきた。四人分をテーブルに配置して部屋を出ていく。


「アートムも座れ」

と、シアン陛下が隣を指差す。黙ってアートムも従ってシアン陛下の隣に腰を降ろす。


「陛下、今日は残念でしたね」

と、アートムがシアン陛下に声を掛ける。


「陛下は、何を憂いでおられるのです?」

と、メリアーナが問うと、


「朝からメアリーと、ダニー、ケビンが問題を起こした。ロビンと私にも責は有るが最近のアカデミーの教育はどうなっているんだ?」

と、愚痴る。まだ事情を話していないメリアーナは、男三人の塞ぎようを見て、クスクスと笑う。


「さぁ話してくださいな」

と、メリアーナが夫カールにねだる。


「今日の予定は、アイの家族の事を聞くつもりだったのだ」

と、カールが言えば、


「昨晩の話でニックに気になるならアイに聞くべきだと言われてな。アイが私の縁あるものかどうかを」

と、シアン陛下が言ってカールを見る。


「しかし、昨日のアイとメリアーナの話でアイが自分と縁ある可能性が低いと陛下は仰ったのだ。だが、これからの事もアイとは話さなければいかんのであれば、聞くべきだと決心されたのだが、うちの孫達に…………突入されて孫達の不甲斐なさを目の当たりにして落ち込んでおるのだ」

と、メリアーナに説明する。


「あら、困ったことですねぇ」

と、メリアーナが笑う。


「笑い事ではないのだ。アートムが思わず愚痴たのだぞ!」

と、言えば、メリアーナが目を真ん丸にして驚いている。


「アートムが愚痴ったのですか?」


「申し訳ございません、思わず」

と、アートムが謝る。


「それは深刻ですね。今頃ミカエルは頭を抱えているでしょうね」

と、メリアーナが言えば、


「そのミカエルが原因なんだがな」

と、シアン陛下が言う。


「どういうことでしょう?」

と、メリアーナが三人に問う。


「オリゾーラル公爵家の出入りの商人の話はしたであろう。館周辺を探っておると、その発端はケビンだ。


メアリーがオリゾーラル公爵令嬢セリーヌ嬢とお茶会の席で、ミカエルが客室使用許可を出した手紙の内容を漏らしたのだが、そなたに何か有ったのかと心配でロビンとルクールの話を盗み聞きしたらしい。迂闊にもミカエルに懸相しているセリーヌ嬢の前で言わなくてもいい内容をな」

と、カールが説明したが、


「ケビンは、確信犯であろ」

と、シアン陛下が言ってきた。同意するようにアートムも、


「私もそう思います。態とセリーヌ嬢に聞かせた」

と、言う。


「ミカエルの手紙の事は偶然だとしても、お茶会がすんでから言えばいいことを、皆の前で言うのはな。ダニーも分かっているから庇う素振りをしてたな」

と、シアン陛下が仰る。


「なぬぅ、ケビンは態とダーニーズウッド家の事情を漏らした」

と、カールが驚いているが、


「ここまで大事に成ることが想像しておらぬのだな」

と、シアン陛下が言えば、


「危機管理の欠如です」

と、容赦のないアートムが言う。


「ケビンは今年アカデミーを卒業して選択科に進むのです、まだ学んでいないのでは?」

と、メリアーナが言えば、


「メアリーとダニーは、知っておろう」

と、カールが言う。


「そうですね。お二人は顔色を悪くされていましたし、メアリー様は、震えておられましたよ」

と、アートムが言う。


「まぁ、カールの孫達の問題だな。


ミカエルを心配する妹が兄を思ってくれる優良令嬢と何とかしようと動き弟は、姉を思って手伝うが下の弟は思うことが有ったのか態とミカエルが結婚するかもと情報を流して牽制している」

と、シアン陛下が先程の三人の様子から憶測を言う。


「なるほどですね。陛下のお考えで合っているでしょう」

と、メリアーナが賛同する。


「えっ! そうなのか?」

と、カールが聞く。


「メアリーは、ミカエルが大好きですからね、兄のために盲目的に動いた結果、浅はかな考えしか出来なかったのでしょう。

素直すぎて利用されていることに姉が大好きなダニーとケビンが各々動いたことが、裏目に出たのかしらね」

と、メリアーナがシアン陛下の思考に追加する。


「概ねそういうところかと」

と、アートムが賛同して、カールが落ち込む。


「三姉弟は、兄を思っての事だとしても、元々ミカエルが身を固めないのが悪いことに成らぬか?」

と、カールが聞けば、シアン陛下、メリアーナ、アートムが頷く。


「はぁ――――」


四人で長いため息を 出しきれば、思い出した事を聞く。


「そう言えばアートム。ミリーの事を何故、ルカに言ってなかったのだ」

と、聞く。


「陛下、カール様、メリアーナ様なら私の本心をお伝えしても構いませんが、昨日のミカエル様とルカの前では、本心を打ち明けておりませんでした」

と、アートムが答える。


「アートムにしては、正直に話しておったではないか」

と、促す。


「ミリーの事を可哀想だと思った事は有りますが、結婚しても好きだとか愛しいとかの感情はございませんでした。カール様に結婚を願い出たのも、あのまま野放しにする危険性を考えてです」

と、アートムが言う。


「ミリーがアートムを本当に好きだったのは知っているのよね」

と、メリアーナが聞く。


「はい。私の気持ちが無くてもいいから側にいたいと言っておりましたから」

と、アートムが答える。


「だが、ミリーは献身的に仕えてくれていたぞ」

と、言えば、


「それは当たり前のことであって、過去の罪が消えることではありません、人の何倍もお仕えしなければいけない立場でした。カール様とメリアーナ様の温情で生きておれたのですから」

と、アートムが言う。


「アートムはそう言うが、ミカエルが賊に襲われた時、私もロビンもそなたも近くに居なかった。唯一駆けつけたのはミリーであって、ミカエルが無事だったのは、自分の身に抱え込んで守ったクリネと一人で三人の賊から守りきったミリーの功にすぎる」

と、カールが言う。


「あの時は、クリネ様もお助け出来れば尚良かったのですが、あの傷だらけのミリーの功は認めます。認めますが、愛情ではないのです。

感情が動いた事がなかったわけではございません。子供が欲しいと言われた時は流石に困りました。情がないのに子を成していいのか、それに私は自分の事を知っておりましたから、知らぬままなら考えずに子を成していたでしょう。

ミリーがグロー先生に相談したところ、前から先は長くないぞ言われ命と引き換えになるのを、どうしても子が欲しいと懇願されルカが生まれた時は驚きました。私にも子を愛しいと思う情が有ったことに」

と、アートムがあからさまに答える。


「ミリーがアートムを思って授けてくれたのよ」

と、メリアーナが言えば、


「アッ! そうであったメリアーナ。クルナが産気ついたそうだ」

と、ニックが報告してきたこと、アートムが聞いてきたことが有ったのだ。

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