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扉は静かに閉めましょう

バーン!!


と、出入口の扉が勢いよく開く音が響いた。

「ぎゃっ!!」 ゴトン!!


身体を丸めて悲愴感な思いでいた藍が、拘束されている木箱ごと跳び跳ねた。


……やめて……これ以上わたしを追い込まないで……

と、今開いた扉の方を見ると、どうやら四人の人影が確認出来た。


青年が急ぐことなく扉に近づき、片膝を付いて頭を下げた。


……きっと、青年の主になる人がいるんだよね。


青年が立ち上がり、四人の内二人を連れてわたしに近付いてきた。


入口が逆光でシルエットしか分からないが、二人の内一人は青年の身内だと思う男性と、浅葱や要より年上そうな美貌の男性だ。こげ茶髪がウェーブして肩まである。

三人でわたしの側まで近付くと、瞳は深い金色だと分かる。


……この人が、青年の主なの? わたしをどうするか判断する人?


中世の貴族服みたいな上下の服だけど、普段着に近いのか? 少し着崩している。

青年と身内そうな男性は、動きやすそうなゆったりした上下だ。


美貌の男性は、興が湧くような表情でわたしを見ていたが、二人に何やら確認している。

三人の視線がこちらに向いて、真ん中の美貌の主が口を開く。


「□□□ □□□□□□□□」立て続けに

「○○○ ○○○○○○○○」青年と同じ音だったが


……分からない。……わたし試されてる?


全く言葉が通じていないことがわかると、徐に後ろを振り返り入口にいる二人に、話し掛けているようだ。


これは後の二人も来そうな雰囲気だね。

シルエットから、こちらも男性みたいだ。


……一人ぐらい女性がいてもいいのにな……

と、嘆いてみても、段々と後の二人も近付いてきた。



……うっわ……と…… 赤髪と緑髪だ。ハレーション起こさない?……う~ん……これは異世界? で、間違いないかな? 銀髪とこげ茶髪では、時戻りと判断つかなかったけど………赤髪より緑髪は歴史上ないよね? わたしが知らないだけ?……記憶にない音、タイムスリップもなしで……


赤髪さんと緑髪さんを見て、勝手に項垂れてしまった。


気落ちしている間に、後の二人も認識出来るまで近付いてきた。宗一先生位の年配の男性だ。

二人に場所を譲るように、先の三人が位置をずらす。


……うゎ~緑髪のおじいさん大きい人だな。瞳は金色だよ。赤髪のおじいさんは綺麗な人だな。瞳は青緑で、目見開いている? 何に驚いてるの?


緑髪のおじいさんが片膝を付いて、わたしに目を合わせてくれた。大柄のおじいさんは近くでは、顔が見えないからね。

ゆっくり、優しい声で話し掛けてきた。


「◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇◇」

立て続けに

「☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆」

こげ茶髪の男性と違う音で、聞いてきた。


……同じことを聞かれているんだろうけど……わからない……意志疎通無理そう……どーしょう、どうしょう、わたしの取説無いと初見の人は、扱えないよ……

この極虚弱なわたしは…………


絶望的な思考になった時、緑髪のおじいさんの後ろから


「きみは どこからきたんだ」


……えっ!





バーン!!


と、ドアを湊が勢いよく開けて、五人に向かって

「藍は?」

と、聞いてきた。


全身汗だくになって、片手に携帯を持ったまま走ってきたようだ。


中を見回して五人に各々目を合わせて、答えを待っているのだが。宗一が、


「湊、ちゃんと息を整えて落ち着くんだ」

と、設置されているサーバーから冷水を選び、コップに入れたものを持って、湊を中に入るように促す。


その間も各々の携帯は音を出し続けている。


「翠ちゃん、悪いがみんなに一旦状況が分かるまで、止めて貰えないか? 話も出来そうもないしね」

と、宗一が翠にお願いをして、千種を見る。


千種も時計に目をやり、翠を連れて母屋に行こうと促す。


「落ち着けるかよ! 藍がいなくなったって、浅葱さん! どういうことか教えてくれよ!!」


湊が浅葱に詰め寄ろうとすると、司が間に入って


「僕たちも、今来たとこで誰も話し合えていないだよ」


「藍だぞ! あの藍がいなくなったんだぞ! 誰か! 警察に」

「湊!!」

宗一が、語気を込めて呼ぶ。

「気持ちは分かるが、瀧野家の身内を差し置いて事を荒げるな!」

湊を一喝する。


「すまんな浅葱君、湊が気を荒げるようなことをして」

と、宗一が浅葱に謝る。


「湊の気持ちは、僕も一緒なんで構いません。車の中で母さんに何回も叩かれましたが、僕より酷い湊を見て少し落ち着きました。宗一先生ありがとうございます」

と、浅葱が宗一に頭を下げた。



それぞれの携帯も鳴り止み、作業机に座るよう浅葱が促す。


千種と翠が運び盆に、ご飯と鮭フレークと海苔がかかったどんぶり茶碗を載せて、部屋に入って来た。

どんぶり茶碗を机に並べ、千種がお茶を入れながら


「時間がないから、お茶漬けで悪いけど、さっさと食べてから状況を話するよ。はい、どうぞ召し上がれ!」


一斉に、誰も話すこともなく

ズルッズルッズルズル、シャカシャカ、ズルッズルッズル…

お茶漬けをかけ込む音が、部屋に響いた。


男性四人が食べ終わるのが早く、浅葱がお茶漬け用に置いてあった急須に、茶葉を追加で入れサーバーのお湯を足していく。

司が湯飲みを人数分出して机に置く。

翠と千種が食べ終えた茶碗を、重ねて箸と一緒に運び盆に載せ部屋の隅に置いた。

机に戻り座りかけた翠に、


「母さん悪い、その3月分のカレンダー捲ってきて!」

「司、その机の引き出しにペンがあるから出して!」

と、浅葱が二人に頼む。


翠が社務所のホワイトボード横に、月別の大きいカレンダーを1枚捲って浅葱に渡す。

司が引き出しから、4本ペンを机に置き


「時系列にするんでしょ」

と、聞いてきた。


返事をしない浅葱を四人は目をやると、浅葱がカレンダーの裏でない方を机に置いて。


「藍は、明日司と予定があったのか?」

と、カレンダーの日付に指を差す。

カレンダーには、藍の字で予定が書き込まれていた。(大学予定 卒業式 湊合格発表日 受診日etc.)


携帯でスケジュールは管理されているが、辰巳家と瀧野家のカレンダーには、藍が自分で書き込んでいる。


「うん。そうだね……予定通りなら」

と、司が頷く。


浅葱はカレンダーを裏にして、机に置き

「そうか」

と、返事して湊を見る。


「湊。携帯で今からの事、録音しといてくれるか? 話を纏めて時系列の後で、思い出したことや気が付いたことがあるかもしれないし。本当なら要が本職なんだが、聞いて貰った方がいいだろう」

と、提案する。


すると、湊は携帯を手に取りアプリを起動して頷いた。

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