ルカ薬を取りに行く
藍は、部屋の中で落ち込んでいた。
ルカを傷つけたと、反省をして夕食の時に謝ろうと決意したのに、会えずアートムさんが部屋まで送ってくれる。
「あの、アートムさんルカはお仕事ですか?」
と、聞けば、
「いえ、ニックに頼まれてディービス医師の所に薬を取りに行っていますよ。直ぐに戻るでしょう、何か用事なら私でも聞きますよ」
と、アートムさんが教えてくれた。
「それならいいのです。昼間私がルカに酷いことを言ってしまったので、嫌になってしまったのかと。
謝っていたと伝えて頂けますか?」
と、藍が言えば、アートムさんが、
「あれは感情を出しません。ルカが傷ついた顔をしていたのならいいことです。それに謝るのなら本人にしてやって下さい。明日も側にいるはずですから」
と、部屋まで送って戻って行った。
藍がソファーに座りテーブルの生地の端切れの山を色別に仕分ける。ざっと見たところで寒色、暖色に分けていく。
先ず寒色の端切れで一番小さい生地を二つに折り、
その大きさになるよう他の生地を折る。色の系統別に輪になる方を一辺に決めて重ねていく。これを暖色でもし、並べると色の選別がしやすいのと輪になったとこで生地の編みかた織りかたの違いがわかる。輪の厚みで生地の大きさもわかる。
後は裁縫道具だが、もしかしたらこれは持ち出しが出来ないのかなと、今しなくてもいいことをしているが、頭のなかではカール邸にてシアン国王陛下に言われたこと、カール様に言われたことがループしている。
……自立しようにも、先立つものもないし此方の金銭的な知識を教えてもらってない。物の価値も知らない状態で生活出来ないよね。
もう少し計画を立ててから、認めてもらうことにしょう。
カール様が言っていた、お館のお仕事で私が出来ることが何か聞く?………………
「セイ様?」
と、隠しから携帯を取り出す。
『アイ』
と、真っ黒画面からウネウネの作動が大きくなってセイ様が画面一杯になった。
……携帯の中で泳いでる感じなのかな?……
「セイ様は、この中でどうされているのですか?」
と、聞けば、
『どうもせぬ。ただよっておる。ぬ!……アイなんだそれは』
と、畳んで綺麗に並べた生地の山をセイ様が見ている。
「生地の端切れです。頂いたので色別にして使いやすいようにしただけですよ」
と、藍が答えた。
『われは、そのまんなかのいろが、このみだ』
と、お尻? 尻尾? らしきものをフリフリさせて言う。
「真ん中の色ですか?」
ここには紫色系の生地が赤色寄り三枚、青色寄りが二枚ある。
……セイ様、紫色が好きなんだ。そう言えば神社は紫系の物が沢山ある。
「セイ様、折角頂いた生地です。上手に出来るか分かりませんが、何かお作りしましょうか?」
『よいのか?』
「今は、裁縫道具が手元にないので、後からになりますが、お好きな色で丸布団でもよければ」
と、藍が言うと、
『うむー、よいな、よいな、それはよいな』
と、ワンちゃんがクルクル回るみたいに、
『ぬぅ? アイ。そなたわずかだが、かごをもらったのか?』
と、お尻フリフリのまま聞いてくる。
「加護ですか? いえ、多分無いと思いますが?」
と、返事をする。
『かごにもいろいろあるが、わずかにアイにただよっているものは、よいものだ』
と、セイ様が言うが、心当たりが無い。
「加護に種類なんて有るのですか?」
『あるにきまっておる。そのぬのとおなじだな』
……この生地と同じ?
『かごにもいろはある。ひかりのかごがあれば、やみのかごもある。せんのほそいものふといもの、アイはみえてなくても、かごにいろどられている』
と、セイ様が説明してくれる。
「では、今日の私は、よい加護を貰ったと?」
……全く心当たりが無いが、セイ様が良いものと言うのならいいか。彩られているってレインボーってこと?レインボー?……マーブル?……マーブルレインボー…………フッ
『アイが、われをよんだではないか?』
「あっ! そうでした」
お花のこと聞くつもりでした。
「今日のことなのですが、庭に咲いているお花を束ねて、メリアーナ様に持って行ったんです。
此方では、お花を飾ったりしないのですね」
と、不思議に思ったことを聞く。
『やしろでは、くもつをそなえてくれたな。
はなを、さけを、きせつものを、あれはよいな』
と、セイ様が喜んでいる。
「此方では、花を生けたりしないのですね。
お見舞いに持って行ったのですが、不思議に思われました。要らぬことをしたのでしょうか?」
と、セイ様に聞いてみた。
『べつにきにすることはない。はなをつむことがないだけだ。こちらでも、みのなるものはとるであろう。ひつようなものはとるが、はなをひようとしてないだけだ』
と、くねくね言ってくれる。
「必要ないものですか?」
『はなでなく、はがひつようならとるであろう。ねがひつようならとるであろう。はなをきればすぐさまかれる。さいたものはいづれかれて、つちにかえる。
アイがつんだはなも、いづれかれる。はやいかおそいかだけでだ』
と、セイ様が簡単に言うが、
「私がしたことは、いづれ枯れる花を早くしたと、いうことなのかしら?」
と、悩みながら答える。
『もともと、アイのほしは、せっかちよの』
「せっかち?………」
『いきいそいでるとも』
「それが駄目なのですか?」
『われは、よいが、アイにはよくなかろう?』
「……?」
『しずのみこのときは、さほどこちらとはかわらぬとおもっておったが、こちらといききするたびに、めまぐほどせっつき、このままではほしも、もたぬであろう』
……えっ!、ちょっと今、凄いこと言いました?……
「セイ様は、私のいた星がどの様な頃から行き来してます?」
『アイのほしか? まるまるこおって、おったがそのまえからだな』
「その頃の此方のかたは?」
『そうじゃなぁ、たいしてかわらぬぞ。みばがよくなったぐらいでないか』
……えっと、……えっと? 私地球学は知らない。けど氷河期より前から今と変わらない?
地球の人たちは、どれだけ早く進んでいるんだ?……
「確かに、祖母の千種も日本は、60年、70年でも目まぐるしく発展したと言ってました。
母の朱里でも、ハイテクすぎてわかんと、嘆いていましたし、進歩と良いように言っているだけで、もしかして、破滅行きに全速しているの?」
と、怖い想像が出る。私の世代はまだいい、でも……
「セイ様は、私の星以外もご存知ですか?」
『あぁ、あまたあるなかで、たまたまつながったほしはあるぞ。いったであろう、われのみこにふらちものは、そちらにとばしたと』
……いえ、いえ、そんな他所の星に、飛ばしたとは聞いてません。これから宇宙開発して人類が惑星移住する時に、日本人らしい人骨が残ってたらどーするんですかぁーって、面白いかも知れないけど…………
「あれ!」
……そう言えば、わたしはこちらの血が入っているて……
「セイ様、私を此方に連れて来てくれたのは、私が此方の血を受けづいているからと、仰いましたよね」
と、藍が聞けば、
『そうだが』
……半分の半分、おじいちゃん、おばあちゃん。
辰巳家の祖父母は、母 朱里が嫁いだ時には故人だったから、勿論私も会ったことない。
父 誠、伯父 剛、従兄 要を見ても多分違う。
瀧野家の祖父母は、祖母 千種、祖父は故人。
母 朱里、伯母 翠は、完全に千種似。
でも、従兄 浅葱は、私と同じ朱色の髪を持つ。そして 母 朱里が持つ加護を浅葱兄にいったことを考えれば、おじいちゃま。碧おじいちゃま。
母 朱里が四歳の時に、行方? 不明? 後に、故人扱い。 行方不明は、こっちか!!




