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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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刺客

「そう言えば、ミリーの時は、アートムが見張りに付いていたんでしたね」

と、ニックに言われたアートムが、


「そうです。あの時は私が見張りに付いておりましたが、彼女は刺客でしたから、アイとは違います」

と、ミカエルとルカが、


「「えっ?!」」

と、声を揃えて驚く。


「ミリーが刺客?」

と、ミカエルが言うと、ルカが真っ青な顔で、


「母さんが刺客というのは、本当ですか?」

と、聞いてきた。アートムがカールを見ると、


「まだ、話していなかったのか? アイのことで話しているものだと思っていたが。

この際だ、ミカエルも一緒に聞けばよい。次期領主なのだから、そしてお前の命の恩人だ」

と、カールが促す。


「ミカエル様、ルカ、君の母親のミリーは、海の向こうの外国から依頼された刺客だった。

シアン陛下が、ダーニーズウッド領に度々逗留されることは、それこそ私が産まれる前から有ったことだ。

毎年この時期になったのも40年程前からだから、国内国外知れ渡っていたこと。

王都で刺客を差し向けても、王宮内には入れず失敗続きになる。そこでジェスパード国と国境境にある、ダーニーズウッド領内なら失敗しても隣国ジェスパード国に罪を擦り付けられる。そう考えたその外国は、ダーニーズウッド領内に刺客を送り付けた。


しかし元々ダーニーズウッド領は、隣国との争いが絶えなかったため、危機管理には徹底していて、短期間の潜入では怪しまれて失敗していた。

ダーニーズウッド邸に入り込みたくても、使用人の選別も厳しく簡単には入れない。

そこで、刺客を行き倒れにして、館に送り込んだのが、ミリーだった。今までも色んな手で陛下に近付く者がいたが、ミリーは本当に大怪我をした状態で敷地内に倒れていた。

当時主治医のグローに助手として館に出入りしていた、ディービスに治療を依頼して館で保護することになった」

と、ここまで話すと、ミカエルが、


「それで、僕とルカ以外は落ち着いて対応していたのか? 可笑しいと思っていたんだ。余りにも皆の反応が自然に、慣れている感がしていた」

と、言ったが、ニックは、


「慣れる程、色々な手で向こうも来るので」

と、言い。


「確かに、アイの時も真っ先に刺客を疑いました」

と、アートムが言う。


「ミリーの時は、仲間が手加減が出来なかったのか、本当に命が危ない大怪我で、ディービスとまだ、看護婦見習いのロッティナが、付きっきりで看護してくれた。おかけで助かったようなものだ。その時に見張りとしてミリーに付いていたのは私だ」

と、アートムが言う。


「しかし、傷が癒え出した頃から、行動が怪しくなり傷が癒えたなら館から出す話しになって、彼女は行動に移した。確信を持って彼女が刺客だと思っていた私が、行動に移した直後に拘束し取り調べる途中で服毒したが、グロー医師が館に居合わせていたので一命は取り留めました。

しかし渡されていた毒が、粗悪品で後遺症が残り、軽い記憶障害と身体の一部の麻痺が残った。

見張り役で一番側にいた私に、ミリーは自分が刺客であることを忘れ、行き倒れていて助けられたことしか覚えていなかった。

後で仲間も捕まえ、外国の刺客だと分かったが、ミリーは端から捨てゴマにされていることが、分かった。だから手加減無しで半殺しのようにいたぶられ、敷地に放置されて、暗殺が成功してもしなくても見捨てられる予定だった。

帰るとこもなく、掘り出すことも出来ずに、メリアーナ様が、使用人として働く許可を出された。


その少し後に、クリネ様ミカエル様の母上が、ダーニーズウッド領に潜入した他の賊にミカエル様が襲われて、一緒におられたクリネ様がミカエル様を庇われてお亡くなりになった時、真っ先に駆け付けて大怪我を負いながら、お二人を救ったのはミリーでした。残念ながらクリネ様は最初に受けた傷が深くお命をお救い出来ませんでしたが」

と、アートムがミカエルを見る。


「覚えている。不自由な身体で僕に寄り添ってくれていた。記憶障害が有ったのか。道理で同じ事を繰り返えして言うはずだ。わざとかと思っていたが。

僕の知ってるミリーはあまり喋らないトコトコと僕に付いて回るそんな使用人だった」

と、ミカエルが言った。


「その後は、ミリーは生まれつき心の臓に欠陥が有ったらしく、本人は知らなかったようだが、グロー医師からそう告げられて、カール様にお願いをして私と結婚をしたんだ。当時もそれまでも結婚をする気が無かったが、先がそう長くないと看取ってやりたいと思い、館の側に家を作って頂いた」

と、アートムが言えば、


「当たり前た、ミカエルの命を救ってくれたのだ。それまでの記憶もあやふやで、本人は色々可哀想であったしな」

と、カールが言って、


「あれだけ結婚を固辞続けていた、アートムが結婚をしたこともびっくりしたが、ルカが出来た事も私は、驚きましたよ」

と、ニックが言う。


「ミリーにしたら命がけでしたね。グロー医師には無謀だと言われて、私もミリーを一人で死なすことでなく可哀想な彼女を静かに看取るつもりで側にいたにすぎず、その後よく六年も持ってくれたと思います」

と、アートムが言って、


「何で今ままで、母さんの事を教えてくれなかったんですか?」

と、ルカが父アートムに聞く。


「ミリーがミカエル様を救ったとは言え、元々シアン陛下の命を狙った刺客であることは、変わらない。

その後のことは、カール様とメリアーナ様の温情に過ぎない。ルカを授かったことには、ミリーに感謝するが、公にしていいことでもないことの方が多いのだ。今ならルカも落ち着いて理解してくれると、思うが」

と、アートムが言ってシアン陛下を見る。


「ここカーディナル王国は、父アランが王位に就いていた時は、外国からの圧力や侵略の危機に晒されていた。

父の女姉妹はここダーニーズウッド辺境や隣国に嫁ぎ婚姻で友好を何とか維持していたが、兄ヘンリーが王位に就く前から、今度は国内で不穏な動きをする貴族が出てきて、兄ヘンリーの二人の娘は隣国に嫁ぎ横槍をを防ぎ、兄は国内の平穏に力を注いだ時期で、隣国からの海からのと、公に出来ぬことが多かった。


兄には、娘しかいなかったから次の王位にサイニー兄が就くはずが、強く固辞されてヘンリー兄を支えていた宰相で居続けたいと、私に王位が回ってきたわけだ。

それからも色々有ってな、私は、命を狙われることが、多かった。今でこそ落ち着いたがな。ダニエルはサイニー兄の曾孫になる。18歳になるまで長かったが私の兄姉は故人だ。もう隠居してもよかろう」

と、シアン陛下が昔話の秘密を打ち明けられた。


「まぁ、そのミリーは刺客であることは、ディービスやグローが見抜いていたがな。それこそ傷の手当てに身体に触っているから、傷は深いが不自然さがあったらしい」

と、カールが言う。


「だからディービスはアイの時に、自分だけの判断でなくグローの意見も聞く気になったのか」

と、シアン陛下が納得し、


「アイの虚弱が作られたものでないし、どう考えても素直過ぎる。

考えていることが顔に出る。自分の容姿に無頓着過ぎて危機感がまるでない。自分を大人と言い張っている子供だ」

と、カールが力説しだした。


「そんなアイを外に出すことは、無謀だと思うのですが」

と、ミカエルが言って


「でも、ここで囲って閉じ込めても、私が王宮で閉じ込めても同じではないか?」

と、シアン陛下が喰い下がる。


「シアン陛下は、アイが陛下の愛妾、隠し子や、ダニエル様のお妃候補としての扱いになる事を、どうお考えで」

と、カールがシアン陛下に凄む。


「カ、カ、カール! 顔が怖くなっておるぞ!

それは、ここに居っても同じで有ろう。ロビンやミカエルのと同じではないか?」

と、シアン陛下が状況が同じだと訴えるが、


「「「同じではありません!!」」」

短編 「オレの彼女は幼馴染みを紹介してくる」を投稿いたしました。13話と26話にちょっとだけ出てくる人達のお話です。虚弱体質巫女の思案中に出てきたお話です。

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