静かな叱責
「アイ。そなたは自覚はないのか?」
と、シアン国王陛下に言われたが、
……何の? じかく?
「ルカ。アイをこのまま街に送り出せば、どうなると思う。正直に言って良し」
と、シアン国王陛下がルカに問い、答えを促す。
「正直に? 正直に言ってよろしいのでしょうか?」
と、ルカが躊躇いながら返事をすれば、
「そうだ。ルカの推測で良い」
と、カール様も促す。
「あーのー。私そんなに人間失格の要員ですか?」
と、悲愴感な声と表情で言うと、
「違う!」「なんで!」「なっぬー!」
と、三人に否定されつつも
「では、アイをそのまま街に出すとします。ディービス医師にアイの秘匿をお願いしたとしても、隣の第3団隊があるので、秘匿は難しく噂は広がり、隣国まで行き、拐われるのが落ちです」
と、ルカが真顔で言う。
「まぁ概ねそうなるだろうな。早いか遅いかで」
と、カール様まで言う。
「何処かに、お仕事を斡旋されるのですか?」
と、聞けば、
「「「違う!」」」
と、突っ込まれた。
「それに私は、表立ってお仕事なんて出来ませんよ。建物の中や、家の中でのお仕事しか出来ません。人様の前に出るのは、買い物とこちらのお館に行く時位です。何の問題も有りません」
と、不思議そうに答える。
「ねぇ、ルカ。街にはお仕事を斡旋してくれるようなところは無いのですか?
問題なのは、見知らぬ私に仕事を斡旋して貰えるかと言うことでは?」
と、疑問を問いかける。
「仕事を紹介、仲介するとこはあるけど」
と、ルカが答えを濁せば、
「やはり、ディービス医師やグローおじいさん先生に頼めば、顔は広そうですから紹介して頂けるかも!」
と、アイが名案だと言ったら、
「わかった、わかったから。この館で雇う。それでいいだろう?」
と、カール様が投げやりに仰る。
「うん、うん」
と、ルカが頷いているが、
「あっ! それはお断りしますね」
と、即座に言い退けた。
「…………」
「……ここが、いやなの……か?」
と、随分間を開けてカール様が、聞いてくる。
「嫌どころか、居心地が良くて私の為にならないからです。皆さん好い人ばかりで、甘えてしまいます」
と、返事をした。
「…………」
誰もこの答えを納得してない無言で返された。
「甘えても良いではないか?」
と、シアン国王陛下が話し出した。
「どう考えてもアイは、虚弱なんだ。ディービスやグローのお墨付きでだ。
実際に私達は、その過程を目の当たりにしてきた。時間と共に体調不良を起こし、発熱し倒れることまで。
その後も度々無理して、こちらはアイの許容範囲を計れないことを良いことに、無理を通して寝込み無理して寝込み頑張る。
そんなアイを心配して甘やかして、何が悪いのだ。
アイが、自分で虚弱な身体に甘えて何もしないなら、ここまで皆が手を差しのべたりすまい。
必死にこちらの言葉を覚え、習慣を身に付けようと努力するアイを、見守り庇いをしても良かろう?
感謝の心を待って接するアイを、可愛く思わぬ訳がなかろう?
何故? そこまで固持する?」
と、シアン国王陛下が諭す。
「…………なにも…………お返しが……出来ない……のが」
と、言いかければ、
「お返しとは、なんだ?」
と、続けて問われる。
「……………私は、一方的に好意を頂くのが辛いのだと……思います。
壊れ物を扱うように、心を込められる有りがたさと……そのように扱われる…………迷惑さと、……思い通りに動くはずの身体が急に……動かなく情けなさ……を、さらすのが……嫌なんだと、……頂くのが心なら……心を、頂くのが行動なら、行動で返すべきだと思っています。
シアン国王陛下に、問われたことの答えになって、いますか?」
と、藍は言ってみる。
「アイ、それならちゃんとお返しを、私は貰っている」
と、カール様が仰った。
「えっ?、私はカール様にして貰うばかりで、なにも…………」
「嫌、沢山返してくれている」
と、カール様が言って、テーブルの花束を見る。
「先ほども言ったが、メリアーナの為に花を摘んで悦ばせてくれた。臥せっていた彼女が笑っておねだりまでしてくれた。昔の私の話をしてくれた。それが私にとって凄く嬉しかったことで、アイがもたらしてくれた心と行動なんじゃないのか?」
「お花は、ルッツさんが丹精込めた物を分けて貰っただけです。器を探してくれたのはルカです。生地をくれたのはノアさんです。私は頂いた物をこちらに届けただけです」
と、藍は項垂れてしまった。
……改めてわたしがしたことの、無さに気がついて滅入る……
「カールがそれが、嬉しかったと言っているんだ。何を疑う? カールの真っ赤になった顔など、私に結婚の報告をしに来た時以来だぞ。貴重なものを見せてもらったな。久しぶりに」
と、シアン国王陛下が笑いながら仰る。
「アイが気に悩むことではない。価値は人それぞれだぞ。私にとっては、嬉しい時間だった」
と、カール様が仰り、
「私は、アイに出会えたことが、嬉しい時間です」
と、ルカがさらりと言ったが、シアン国王陛下とカール様が、ぎょっとした顔を一瞬出した。
「なぁー、ルカ。それはどういう意味だ。我々が居る前でも良いのか?」
と、カール様が仰りルカを見るが、
「…………」
……何故か? 黙ってしまって顔が見えない程、俯いてしまった。
もしや…………私と出会ったことの嬉しいと言った以上に大変な思いをさせられている現状に、気付いてゲンナリしてるのだろうか…………
「なぁーカール、普通ルカのような美青年に今の言葉を言われれば、赤くなってもいいよな?」
と、シアン国王陛下はカール様に聞く。
「赤くなるの意味が今まで分からなかったが、此は赤くなっているのか? 私にはアイの体調不良の色に近い青色に見えるが?」
と、カール様が答える。
「嫌すまん。カールの言う通り。何故? 青くなるのか? わからん? 我が年を取って感じかたが違うとか?」
と、シアン国王陛下も悩みだした。
「……………………………………………………………………」
と、長ーーーーい沈黙の後、カール様が
「アイ、結論は今直ぐ致すな。当分は花の世話をしてくれるのであろ?
その時、メリアーナの体調が良ければ話し相手になって、メリアーナの話も聞いてやってくれないか?」
と、カール様が仰り。
「直ぐに行動はおこすな。急な行動はそなたの身体に悪かろう? 自分でそう言ってたでわないか。
それにまだ、言葉が足らぬことや意味違い等が有ろう。まわりの意見を聞く、相談するは良い。
だが、アイの見知らぬ者や、極最近の奴にはするな。何を考えてアイに近づくかわからぬ。
23歳の淑女なら、人選に間違うことも無かろう?」
と、シアン国王陛下は意味深に、釘を差す。
……全部、わたしが言ったことを含みに入れて、叱られたようだ。さりげなく。
自己紹介の時に言った、急な行動でどうなるか。
23歳で子供じゃない。まだ、勉強不足で有る。
さすが、国を人を治めて守ってきた方だ…………
「わかったな、アイ」
と、カール様に念を押されて、
「はい、今すぐには止めておきます」
と、言って今日の所は終わった。
カール様のお館から、借りている客室までルカが一言も話してくれない。
わたしも少し落ち込んでいるが、何故? ルカまで、落ち込むことが有っただろうか?
客室のドアまで、来たときに
「ルカ、ありがとう、何か私のわがままに付き合わせてしまって、ごめんね。見張りが必要ならわたしが出歩かないように鍵を付けてもいいし。アートムさんと相談してくれたらいいよ」
と、言って部屋の中に入った。
残されたルカの表情を見ること無く。




