無自覚
短編 「オレの彼女は《スペア隊》所属」を投稿いたしました。13話と26話にちょっとだけ出てくる人達のお話です。虚弱体質巫女の思案中に出てきたお話です。
「本当に綺麗なお花ですね、色も鮮やかでお庭を小さく纏めたみたいね」
と、ロッティナさんが言ってくれた。
「そうなのか? うむーん、所々味気ない花があるでないか?」
と、カール様が、
「「えっ?」」
と、一斉にカール様を見る。
「まぁー。カール様、どのお花も綺麗ですよ。何を仰っているのですか?」
と、メリアーナ様が問うと、
「私は花のことは、分からぬがこれと、これと、これはなぜ入れる必要があるのだ?」
と、指を差す。
「「…………」」
と、周りが絶句したが、藍だけは、
「カール様、私の髪の色は、何色に見えますか?」
と、問うと、デイービス医師が、ハットした顔で藍の髪を見るが、カール様は、
「何色かともアイは、珍しい黒髪であろ?」
「「えっ!」」
と、今度は藍を一斉に見る。
「そうですね。私の髪は黒髪ですが、一部違う色が目立つ形で入っているのです」
と、藍は答えた。
「なぬ? そうなのか?」
と、カール様は周りを見回して反応を、見ようとした。
勿論、藍とカール様以外は、ウンウンと頷く。
「カール様は、その花束の器をくるんでいる布の色は、お分かりになりますか?」
と、お聞きすれば、
「深い緑だ」
と、返事をされた。
「成る程、一色のみということですか」
と、藍は頷く。続けて、
「カール様は、シアン国王陛下の髪の色は、黒若しくは灰色に見えたりします?」
「うむーん、アイのような黒では無いが、灰色だな」
「「何?!」」「「何で?!」」「「えっ?!」」
と、藍以外が揃って驚く。
……やっぱり、色覚異常だ。それも一色のみ。
司は赤と緑の二色だったが、こちらでは矯正眼鏡なんて無いだろうし。
それどころか、今まで誰一人本人さえも気が付いて居ないのだから、必要ないことだね。
「アイには、カール様の目のことが分かったのか?」
と、ディービス医師が聞くので、
「私の知人に一人同じような方が居たので、そうではないかと思っただけです。
その私の知人は、赤色と緑色が認識出来ません。濃淡の差は分かるみたいですが、一緒に見えるそうです」
と、説明する。
「では、カール様は?」
「赤色がカール様の世界には無い色ということですね。
でも、今までご本人も周りの人も、気が付いていなかったのなら必要でも、ないと思えますが」
と、付け加えた。
「そう言うことだったのね」
と、メリアーナ様がクスクスと、笑っていらっしゃる。
「メリアーナ様、どうされたのですか?」
と、ロッティナさんがお聞きすれば、
「昔ね、婚約者としてカール様とお会いした時に、私は赤色のドレスを着てお会いしたの。
カール様ったらまじまじと見て、《そなたには、その色は合っていないと思うぞ》と仰って私のお友達は、《赤色はシアン様のお色だから、カール様は焼きもちを焼かれたのね》と、言われたけど、本気で似合わないと言って下さったのね」
と、クスクス笑って仰る。
「そんな昔のことを、折角可愛らしいのに地味にしては、勿体と思ったから言ったまでのこと」
と、ポリポリと頬を掻きながら仰る顔が赤い。
「今まで気が付かなくて、すみませんでした」
と、メリアーナ様が言えば、
「メリアーナが謝ることではないぞ。私も今まで知らなかったのだからな」
と、カール様が仰った。
「では、ご不便ではないと言うことですか?」
と、デイービス医師が聞く。
「そうじゃな、この年まで知らずに来たからな」
「と言うことは、父グローも気付いていないと」
と、デイービス医師が言って藍を見る。
「アイは、その知人に治す方法を聞いていますか?」
「いえ、これは治りません。確か遺伝と子より孫に出やすいと聞いたことがありますが」
と、カール様を見る。
「なぬ? 孫に出る。そう言えばミカエルは手が空かなかったのか?」
と、ルカを見れば、ルカが、
「はい。今朝の件と……で空かないかと」
と、言いながら藍を見る。
……ミカエル様の筋肉痛は、わたしのせいではない。
「でも、必ず受け継ぐ状況とも言えません。私の知人は三兄弟の内の一人であって、ミカエル様は私の髪の特徴を見てらしたので違うと思います」
と、言えば、メリアーナ様が、
「アイの髪は黒髪で珍しいのに、赤髪が一部入っているのは、アイの国では普通なの?」
と、聞かれ、
……う~ん? 何て答えればいいのか。今ではカラーリングなんて当たり前だし、わたしの髪もコスプレだと思われていたし、普通なの?……
「どうでしょか? 私の髪色は生まれつきですが、友人達は、黒髪の色をコロコロ変えていたので、普通なのでしょう」
と、返事をした。
「赤髪と言えば、シアン様ですものね。しかもダーニーズウッド領家の中では、珍しくないですし」
と、メリアーナ様が言えば、カール様が、
「今の今まで気にした事がないから、聞かなかったが、シアン陛下の髪が赤色でなるなら、同じように見えるカリーナやメアリーもなのか?」
と、仰りメリアーナ様が、頷くと落ち込まれた。
「何をそんなに落ち込んでおられるのですか?
カール様は、外見や髪の色で人を判断為さらないでしょう。カリーナが一部の領民に誹謗中傷を受けて、危ない目に有った時、カール様は生まれなど本人の責ではないのだから、責めるそなたらの方が可笑しいのだと、仰ったではないですか。
私はそんなカール様を尊敬しております」
と、メリアーナ様がカール様に仰る。
カール様のお顔が、真っ赤になり緑の髪とで、際立ってしまっているが、
「カール様が、偏見の無い目で私を受け入れて下さったので、無事に過ごせております」
と、わたしもニッコリと笑って言う。
「そうか、そうか? それなら、それなら? 良い」
と、大いに照れておられる。
「ねぇ、アイ。この素敵なお花は、お部屋に飾っても直ぐに枯れてしまうでしょ。
このままここで、楽しめばいいのよね」
と、メリアーナ様が仰る。
「えっ! 直ぐには枯れないと思いますが」
と、言えば、ルカが、
「アイが花束を作って二時ほど経っておりますが、花を摘んだ時となんだ変わっていないと思われます」
と、報告してくれた。それには、ロッティナさんが
「えっ! どうして?。私は義父グローが薬草を医院で調剤する時に、お手伝いをすることが有りますが、医院に来られる直前に収穫して持って来ても、既に萎れておりますよ」
と、夫デイービス医師を見る。
「あぁそうだね。父グローの薬草はまだしも、仕入れている薬草は全部乾燥したものだ。それに父の薬草の方が効能がいいんだ」
と、藍を見るが、
「私は、お薬や薬草のことは、分かりませんが生木より乾燥させたものの方が、保存には良いのではないですか? 収穫する時期や季節も色々在りますでしょうに」
と、言えばデイービス医師は、
「アイの言う通り、季節関係なく調剤するにはいいんだが、生木で調剤しておいたものの方が効能が良いと思う。全部とは言わないが」
と、思案顔だ。
……お茶の葉っぱと同じなんだね。緑茶、烏龍茶、紅茶は全部同じお茶の葉だ。生木で加工する緑茶それから加工する抹茶。生葉を半発酵されるのが烏龍茶、完全発酵が紅茶だったはず……日本だけでも加工により種類が多いのに、発酵を入れたらとんでもなく増える。
止めようこちらのお茶は、わたしの知っている味ではない、癖が無いし匂いは紅茶に近いが…………
「メリアーナ様にお届けした花束は、世話の仕方によりますが、一巡り二巡りは持つと思います。
私がお世話してよろしいですか?」
と、カール様とメリアーナ様を見ると、
「まぁー、アイが毎日来てくれるの?」
と、カール様を上目遣いに見る。
「アイが、アイの手が空いている時に、そうしてくれるか?体調の良い時で」
と、わたしに気を使って仰るが、わたしは、こちらでお世話になっている身だ。
お願いされなくてもさせていただく。しかし、
「わたしで良ければ、させていただきます」
と、お返事をした。
……わたし自分で、勝手に広げないぞと、決意したとこ……でした。




