表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/99

花瓶がない

ニックと部屋に戻る廊下で、侍女長のノアに会った。


「ノアさん、おはようございます」

と、藍から声を掛ける。


「アイ、おはよう。今朝はあまり顔色が良くなかったんだろ、大丈夫なのかい?」

と、わたしを上から下まで見て、聞いてきた。


「それに、ニックとなんて珍しい。ルカは何処に行ったんだね」

と、ニックとわたしを交互に見て問う。


「アイは、執務室に居たんだが、ミカエル様がお疲れのようなので、部屋まで送るとこだよ」

と、ニックが答える。


「アイじゃなく、ミカエル様がお疲れなのかい?」

と、ノアが聞き返す。


「はい、とってもお疲れなのです。何方か痛み止めのお薬をお持ちでないですか?」


「お疲れなのに、痛み止めが必要なのかい?」

と、ノアが聞けば、ニックが、


「ノアにも見せたかったが、アイが必要になると言うんだよ」

と、答える。


「よくわからないねぇ。あぁ、そうだ、アイ。カルマから聞いたよ、生地布が欲しいそうだね」

と、問いかけてきた。空かさずニックが、


「何か足らないものでもあるのかい?」

と、聞かれ二人に説明をする。


「いえ、大した事ではなくて、私が持ち込んだ小さい物をひとつに纏めて、衣装と一緒に保管しときたくて。小物入れを自分で作ろうとしただけです」

と、言えば、


「そういうことかい、小物入れなら私のをあげるよ」

と、ノアが言ってくれるが、


「いえ、生地と裁縫道具があれば、時間の空いた時にでもできますし」


「そうかい、わかったよ。生地なら端切れが沢山有るから好きに使ったらいいよ。

後でカルマに持っていかせるよ」

と、言って仕事に戻って行った。


「アイは縫い物が出来るのかい?」

と、ニックが聞くので、


「えっ、多分人並みだと思いますが、幼い時から寝込むことが多かったので、必然的にベットで出来ることをしていました」

と、言うと、


「なるほど」

と、納得顔だ。


部屋に近づくとルカがドアの前で、待っていた。


「アイ! 執務室に戻ったらミカエル様が、床に倒れておられて、父さんが慌てて中に入ったら、アイに殺され掛けたと仰るから」

と、わたしとニックの顔を見て言うが、わたしもニックも唖然としてしまった。


「殺され掛けたと仰ったのですか? ミカエル様が」

と、ニックがルカに問う。


「はい。息も絶え絶えで、父さんがアイを探せと言うので、こっちに来たんだけど、どういうことですか?」


「ミカエル様、本当に笑い死にかけたということでしょうか?」

と、藍はニックに聞くが、ニックは、嫌の感のある目で、


「アイは、気にする必要は無いですよ。冗談でも言って良いことと、悪いことが有ります。ふざけている場合でもないでしょうに」

と、ニックが怒り出したのを、ルカはキョトンとした顔で見ている。


「ルカ、アイ、私は、ミカエル様を叱ってきます。なんなら、別館に行って来てもいいですよ」

と、ルカに言う。


「えっ! ニックがミカエル様を叱るのですか?」

と、ルカが問うと、


「考えがあります。ねっ、アイ」

と、わたしに向かって笑顔で言うが、


……わぁ~、ニックさんミカエル様がお薬が欲しいと言ってきても、無視するつもりだ……と、藍は思った。


「それで、ルカの用事は終わったの?」

と、ルカに聞けば、


「あっ! まだ終わってないですね。私も執務室に戻りますので、アイは部屋で待っててください」

と、ニックの後を追う。


ルカに言われた通りに、部屋に入り後で別邸に行く時、このままの格好で良いのか聞いてみよう。


夜起きている時間には、雨は降っていなかったが、

眠っている間に降ったようだ。窓ガラスに水滴が付いている。現代の様にきれいな板状になっていないのだろう。所々水滴が貯まって光を部屋に、入れてくる。

よく見たいと思い、窓側に行くと庭師のルッツさんが、お花の手入れをしているのが見えた。


……メリアーナ様にお花を持っていくのは、駄目だろうか?……


わたしが見ているのに、気がついたルッツさんが手を振ってくれる。

これはお花を貰うチャンスだ。急いでドアに手を掛けると、ルカが入って来た。


「何処に行くつもり?」

と、待っているように言った筈だとルカの顔が言っている。


「あの、ルカ。お庭でお花を貰えないかとルッツさんに聞きに行きたいなぁー」

と、伝えたが、


「花を貰ってどうする?」

と、聞かれたよ? 部屋に飾らないのかな?


館には、お花を生けてない。各部屋を見たわけではないが、わたしが足を踏み入れた部屋には、無かった。

わたしが、困惑顔をしていたのだろう、ルカが、


「今から、貰いに行くか?」

と、誘ってくれた。



「やぁ!アイ。部屋から見ていたね」

と、ルッツさんが声を掛けてくれる。


「こんにちは、ルッツさん。こちらの咲いているお花を分けて貰うことは、出来ますか?」

と、尋ねると、ルッツさんもルカと同じ反応をする。


「無理を言うつもりはありません。駄目なら諦めますから」

と、言えば、


「いや、構わないよ。でも、何にするんだい?」

と、聞かれた。


「後で、メリアーナ様に会わせて貰うので、お部屋に飾って貰うつもりだったのですが……お花を飾るのは駄目なんですか?」

と、二人に聞くと、


「部屋に飾るって、どうやって?」

と、ルッツに聞き返された。


……あれ?……やっぱりお花は飾らないの?……


「花瓶って、お花を生ける器はないですか?」

と、聞いたら、二人とも顔を横に振った。


兎に角、お花は分けてくれると言うので、辺りを見回し木桶を探す。今使ってもいい木桶を借りて水を引き入れてる所に行こうとすると、


「アイ! お花を貰うんだろ? 何処にいく?」

と、ルカに止められた。


「何処って? お花を入れる桶に、お水を汲みに行くのだけど?」

と、言うと、また、……二人に驚かれた。何故に?


「私が、お水を汲みに行くから、アイは、ルッツにお花を分けてもらいな」

と、言ってくれだが、わたしは、お水が入った桶が先に欲しいのだが……


「ルッツさん、お花を選んで良いですか?」


「いいよ。切ってあげるから」

と、お花の首に手に添える。


……えっと?……これは切る場所もちゃんと伝えないと可哀想な花が出来そう?


チューリップらしい花を、赤、黄、白、ピンク、紫、青? チューリップ青?……まぁいっか、マリーゴールドらしい赤、オレンジ、黄、アネモネらしいの、ガーベラらしいの、ポピーらしいのと、切る場所を指定して、ポピーは花の終わった細長い茎も切って貰う。


そうしていると、ルカが戻ってきた。木桶にタッブリの水を入れて。半分くらいで良かったのにな。

えぇぇい、ここで水揚げと長さを決めちゃおう。


ルカにお礼を言って、ルッツさんにハサミを借りる。木桶の中で、お花の長さと水揚げと同時にする。チューリップとガーベラには、ポピーの固くなった茎を、下から差し込み長さを調節する。

わたしが、木桶に手を突っ込みパチン、パチンとしている作業を、ルッツさんとルカが興味津々に見てくる。

切った茎や葉っぱなどゴミになった物を纏めて、木桶の水を減らして、部屋に戻ろうとしたところ、ルッツさんに呼び止められた。


メリアーナ様に持って行く時に、どの様にして持っていくのか見せて欲しいと。お安いご用だ。

了承して桶を持ち帰ろうとすると、ルカがさりげなく代わってくれた。


……麗しの銀髪青年が、花束抱えて絵になるな……と、考えながら部屋に戻る。


部屋に戻ると、サイドテーブルの上に生地の端切れが沢山置いてある。

カルマさんが、持ってきてくれたのだろうが、裁縫道具はない。

端切れの山からモスグリーンの生地で目の粗い布を選び、テーブルに広げて四方端の糸を抜く。抜いた糸は使うので揃えて纏める。

ルカには、両手で輪を作り筒状で水を入れても大丈夫な器を、知らないかと聞けば、取ってくると部屋を出ていった。


ルカが持ってきてくれた、ピッチャー型の器にお水を半分くらい入れて置き、水が漏れないようなので花を差していく。

チューリップ、ガーベラ、アネモネ、マリーゴールド、ポピーと、色と長さを見ながらバランス良く。


お花を生け終えると、下に敷きたモスグリーン生地を器を隠すようにたたみ、ルカに押さえてもらい、抜いた糸で括る。


なかなかいい感じに仕上がった、花束調だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ