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虚弱体質巫女ですが 異世界を生き抜いてみせます  作者: 緖篠 みよ


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20/99

初期設定

藍は着てきた巫女衣装が気になり、借りている客室の続き部屋に入り衣装を確認した。

ふっと、放置した携帯に目が行く。


携帯ケースは、インディゴ深い青色で、下部に黄色いヒヨコがかわいいイラストで並んでいる。


が、黒い画面の中、何か動いている。すでに充電切れで、ただの板になっている筈の携帯から


……何かしら、視線を感じて……


「えっ! 何か動いた? 傷防止シートに空気でも、入ってる?」


一般的に、携帯は待ちの時、真っ黒になるよね? パソコンならスクリーンセーバー画面で、動くのがあるけどわたしは、そんな設定してない。


「何で、動いてるの? 画面の中のもの?」


……虫でも入ったのかなぁ? この世界の虫って精密機械に入れるの?…………こわっ……


虚弱だが、視力もとても良い。


携帯の画面に、何か写り込んでいるのか?

と、近付いてみると、真っ黒な画面に何か動いてる?


「えっ! 何!」

と、良く見ようと手に取ったら


「ヨッ!」

と、画面いっぱい。竜さんらしい顔が、ニコッとしたような感じで、声を掛けてきた。


「どなたですかー!?!」


と、喚いた。思わず日本語で!! とっさに画面を下にして元の位置に置いた。


……初期設定に戻った?

この異世界に来たショックで携帯が?

この携帯のキャラクターが、蛇?、竜?、トカゲ?どれも違うような???


日本人のアニメーターは、デフォルメに長けている。

新しいキャラクターが採用されたの?


……何かの手かがりになるのかな?


充電チェックして電源を落としておく。駄目だ、今さわると気持ちが、萎える。

色々見たくなる。

触らずにそのままにし洗い場を借りに行く。




侍女のカルマさんが、洗濯物の洗い場と干場を教えてくれた。

手伝いを申し入れてくれるのは有り難いが、絶句された下着を、お見せするのは気が引けるので、笑って分からない振りをして逃げた。


が、今だけ使える業だ。


肌着と足袋は指定の干場に、干してきたが、流石に下着は持ち帰ってしまった。

部屋で何とか乾かしてみよう。厚手ではないから直ぐに乾くだろう。

予備のタオルを広げて、下着とパンストを挟んで窓側に置いておく。


続き部屋の方に目が行くが、勉強がてらにお手伝いをしに行こう。


と、部屋を出た廊下を、ルカが歩いて私に近づいて来る。


「アイ、シアン陛下が呼んでおられます。お連れしますので、お庭にどうぞ」


「はい、わかりました。お願いします」

と、会話らしくなってきたよ。


ルカに誘導されながら、シアン国王陛下がいらっしゃる庭に出て、花や草木の話を教えて貰う予定だ。

わたしの体調がよい時には、いつも時間を持ってくれる。

前の勉強の時間に、花は好きかと聞かれたので、花の名前を教えて貰えるらしい。


ルカは、わたしと歩く時も斜め後ろに付いて歩く。

それがここの決まりなの? と、聞けば護衛だからと言う。

わたしは、会話の練習に横に並んで欲しいとお願いすれば、困り顔でも了承してくれた。

お館の中では、一番わたしの体調変化に敏感だ。


ルカはわたしに、一番年回りが近い。

二つ年下で司と同い年だ。司も積極的に話をしてくる方ではないが、困り顔で相手してくれるとこが、少し似ている。内心仕方ないと思われているのだろう。


ルカと庭に出れば、シアン国王陛下が庭師と話ながら、待っててくれたようだ。


「アイ、庭師のルッツだ。挨拶をしてごらん」

と、指導してもらう。


「こんにちは、私はアイです。お花のことを教えてください」

と、会話してみた。


「僕は、庭師のルッツです。よろしくねアイ」

と、返事をしてもらう。

シアン国王陛下から合格点を貰えるようになってきた。


ターニーズウッド領邸の庭は、山岳地から館に沿った川から水を引いている。

今は雪解け水のため冷たすぎるので、一旦木桶に汲み日に当てた水を使うそうだ。


反対に暑くなると、川の水そのまま使う。そうすると花の日持ちがいいそうだ。


ルッツさんの説明は聞いていて楽しい、花もわたしが知っている花に近い。

全く同じでではないが、近種だと分かる。

思わず座り込んで、土を触ろうとして、三人に叱られた。

シアン国王陛下もルカも、ルッツさんまでわたしが、気分が優れず座り込んだと、思ったらしい。


……ごめんなさい、ちょっと土いじりをしたかっただけなのだが……


花が咲けば虫も寄ってくる。花と花の間を飛んでいる虫を見て、先程の携帯を思い出す。


虫のドアップの写真だった?

知らないウチに、カメラアプリが起動したの?


少し考えに更けすぎたようだ、シアン国王陛下が体調を聞いてくる。何度も心配げに覗き込まれるやや懐かしいやり取りに、本当に目の奥が熱くなりかけるが、ルッツさんの時間を貰ってのこと、無駄にしては駄目だね。


切り替えて、ルッツさんに庭の花の話を続けてもらう。


夜になり、部屋までルカがいつも通りに送ってくれんのだか、一瞬携帯の虫の話をすべきか悩む。


わたしが、この異世界に持ち込んだ物に、ルカを巻き込むのは、悪いと思い直し挨拶をして部屋に入った。


天蓋のカーテンを閉めて寝る体勢になっても、続きに部屋が気になる。


……やっばり、朝ルカに頼んで一緒に見て貰う?……


ウダウダ考えて、一向に眠気がこない。このままでは、朝の体調が危ない。

夜になるとすることが無く、やたら思考を奥に溜め、翌朝、周りに体調不調を騒がられる。


そうなると、侍女長ノアさんを筆頭に、ベツトからだして貰えなくなるの、繰り返しだ。


本当に申し訳ない。ノアさんは目の前で倒れたわたしが、トラウマになってしまったのか、この館の中で一番過保護になっている。


思いきって確かめに行くと決めて、起き上がる。

続き部屋のドアに手をかけて、覗き込んでみるが、


「やっばり、ルカに来て貰った方が……」

と、棚に目をやると巫女衣装を畳んだ側から、光が漏れている。夜だから尚更分かる。


……やっばり、電源が入ったままなんだ……何かのアプリが作動してるの?……

フォトやメールを見て見たいが、泣かない自信はない。

電源は落としておこう。

と、携帯を手に取り、画面横の電源ボタンに指をかけて、藍は固まった。


夜ということに、身体が自覚して規制してくれたのか、息を止めたまま、画面を凝視している。


……よくぞ、悲鳴を上げずに飲み込んだ! わたし!

ゆっくり、止めてた息を出して、


「ふぅーーーーっ。昼間、私に声を掛けました?」


『ひるまかどうかは、しらないがそなたに、こえをかけたな』

藍の手にある携帯画面から返事が返ってきた。


「あの、音声機能の1つですか?」


……(ヘイ○○、○○ー、etc)


『いなだな』

と、返事がくるが、初期設定でこんなやり取りにあった?


画面の中では、半透明で蛇でもなく、トカゲでもなく、竜寄りのウネウネしているお茶目キャラでいいのだろうか?

右に上に、下に左にと自由に動いている。


「バグるって、こんな感じになるのかな?」

と、もう、落ち着いた藍は掛けていた指に力を入れた。

が、電源をオフにしますか? 再起動しますか? のコールがない。


「あれ?」

取説もないし、仕方ないこのまま巫女衣装と一緒に置いておくか。

と、棚に置きかけたら、


『なにも、きかぬのか』

と、携帯が喋った。


「答えてくれるの?」

と、問うと


『よいが、そのままでよいのか?』

と、言ってきた。


藍は自分の姿を見下ろす。

携帯の電源を落とすつもりと、虫が張り付いてたら払うだけだと、寝着にガウンをかけているが、続きに部屋は夜になると冷える。


……わたしは、携帯が虫に汚染されてないなら、別にいいのに……


「寒いので、ベツトに入るまでまって」

と、言って部屋に戻りかけると


『ねるじかんなのか?』

と、携帯が? 聞いてきた。


どうやら、時計時刻機能も狂ってしまったのか?

わたしが、初期設定し直しても無駄なように感じたが、シアン国王陛下以外で日本語が聞けるのが、

なんともうれしくてベツトに入って行った。

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