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12/12 三話目



「えっと、三人ともエミイルダは本物の従姉だよ。そんな目でみちゃだめだよ」


 私も含む子供たち五人で王宮の一室、いつも王宮にやってきていた時に遊び場にしている部屋にやってきたわけだけど、ライモードも何とも言えない表情だし、エマウロとジリオラに関しては警戒心バリバリだった。


 『精霊姫の恋』の中では、好意的だったのだけど……三年も早まったから? それとも小説の中では偽物のエミイルダが暴虐に振る舞って、三人と距離が出来ていたからっていうのもあるんだろうか。あとは三人とも三年後の、もっと大きくなった時だからこそ受け入れられたのか。



「そうはいってもエミー、突然現れた従姉に僕たちも戸惑っているんだよ」

「というか、エミイルダはエミーだろ?」

「ええっと、ロキおじ様たちには伝わっているからライモードたちにも伝わっていると思っていたけど……、私今度からファエミラって名前を名乗ることになっているの」



 まだまだファエミラって名乗るのは、慣れない。けれどお兄様がくれた大切な名前だからこれからの私はファエミラを名乗るの。



「……き、聞いてましたけど。でもエミーお姉様、名前、あげちゃったの?」

「ジリオラ、あげたんじゃないわよ。返したのよ。泣かないで」

「うぅ、だってエミーお姉様」


 ジリオラは何だか泣き出してしまったので、ハンカチでその涙を拭う。

 というかジリオラが聞いているというのならば、エマウロもロキおじ様たちから聞いているはずなのだけど……話半分で聞いていたのだろうか。


「ご、ごごごめんなさい。と、突然私のようなものが従姉って言われて困惑は分かります! 私も困惑してます。で、でも……せ、折角従姉弟なので、ななな、仲良くしてもらえると嬉しいです」


 そしてエミイルダはエマウロに睨まれても一生懸命そう言った。

 


「うん。僕は是非とも仲良くしたいよ。エミイルダ」

「兄上!」

「エマウロも、睨まないように。僕たちの血の繋がった従姉なんだから」

「でもエミーの……」

「エミーが納得しているから大丈夫だよ。それに何かあってもノンベルドがどうにかするでしょ」



 ライモードはやっぱり第一王子だけあって、突然現れた従姉にも紳士的だった。戸惑いはあるみたいだけど、仲よくしようとしているみたい。エマウロは私のことを思って、エミイルダを警戒しているみたいだ。私とエマウロの目が合う。にっこり笑えば、エマウロはエミイルダにぶっきらぼうに返事をした。


「ほら、ジリオラも」


 私がジリオラにそう言ったら、ジリオラはおずおずという様子でエミイルダと向き合った。




「エミーお姉様がいうから仲良くしてあげる。エミイルダさん、よろしくお願いします」

「は、はい。よろしくお願いします。ジリオラ様」



 そういえばジリオラって今では私に懐いてくれているし、慕ってくれているけれど、初対面の時は私にもツンツンしてたなぁ。仲良くなってからは笑顔ばかりしか見ていなかったけれど。


 小説の中ではジリオラは初登場時12歳ぐらい? その時のジリオラは心優しい王女として有名になってたみたいな一文があった気がする。


 エミイルダは『精霊姫の恋』の主人公だし、実際に接してみて優しい子だし、もっと長く付き合っていけばきっと四人とも仲良くなれるはず。

 ううん、私が仲良くさせるわ。



 そういう気持ちで王都にいる間は、五人で沢山遊んだ。

 フォリダー公爵家の領地に帰るまでの間に、四人とも大分仲良くなれたと思う。それにほっとした。

 だって小説と違う行動を私がしているからって、仲良くなれたはずの人が仲よくなれなかったら悲しいもの。

 私の選択は正しかったのか、とかそういう不安もやっぱり時々感じてしまう。



 でも此処は小説の世界で、同じような登場人物がいても現実だから……これも一種の選択なんだと自分を落ち着かせた。




 そういえば、『精霊姫の恋』と同じようにまだこの時期はエミイルダは精霊視の能力を開眼していない。

 現実では私が精霊視の能力が開眼したことは特に公表もされていないし、小説のようにその力を使って暴虐になったりもしていないから、現実の私は『精霊姫』と呼ばれていない。

 小説では先に『精霊姫』と呼ばれていたのが偽物のエミイルダで、その後に現れた『精霊姫』が本物のエミイルダなのだ。



 私は今も精霊が見えるし、精霊と仲よくしているけれど……まだ、エミイルダは精霊の姿が見えないんだよね。

 精霊視の能力って、私が何かしたら早まって開眼したりしないかな? 精霊たちの姿をエミイルダにも見てほしいなって思うの。


 今も馬車の中で楽しそうに飛び回っていて、とても仲良しな可愛い精霊たちだもの。

 周りに同じように精霊視の能力を持っている人なんていないから、同じように精霊たちが見える世界についてエミイルダと話せたらきっと楽しいだろうなってそんな気持ちでいっぱいになった。





 

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