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12/12 二話目

 本物のエミイルダは、エミイルダ・フォリダーになって、私はただのファエミラになった。

 当然のことだけど、私が偽物の公爵令嬢だったってことは凄い勢いで噂が出回っていて騒ぎになっている。


 お母様は王妃様の妹だから、王子や姫たちも私にとっては従弟という扱いだった。

 お母様は陛下たちには、私が偽物だったことを一年前には言っていたらしい。私は知らされてなかったけれど、陛下たちには告げるのは当たり前だよね。ただ元々従弟だと思っていた三人は私が本当の従姉ではないってのを最近知ったはずだ。


 『精霊姫の恋』にも出てきた登場人物たちである。二人の王子と、一人の姫は私にとっては仲が良い親戚である。とはいえ、一年前に自分が偽物だって知ってから王宮にも遊びに行っていないし、三人に会う事もほぼなかった。


 私が、自分が偽物である事実に不安になっていたからっていうのも大きい。お父様やお母様やお兄様は私を偽物でも此処にいていいって言ってくれたけれど、三人がそんな風に受け入れてくれるかなんて確証もなかったから。






 『精霊姫の恋』の偽物のエミイルダは、十歳の時に自分が偽物だって知ってから暴虐になっていて彼らとも距離が出来ていたはずだ。ただあくまで偽物のエミイルダは脇役で、悪役というわけではなかった。そこまで読み込んでなかったから、詳しい所は分からないけれど。

 そもそも偽物のエミイルダは『精霊姫の恋』で家を出た後に本人は出てこない。話の中で出てくるぐらいだったはず。




 何で私がこういうことを考えているかといえば、王宮に久しぶりに赴いているからだ。

 本物のエミイルダが王族たちに挨拶をするためである。……偽物の私が王宮にいってもいいのだろうかと不安になったけれど、お母様とお父様に大丈夫だよって言われて王宮にきている。

 あとエミイルダとはあれから少しずつ仲良くなれて、エミイルダにも「初めて行く王宮だから、エミーも一緒に来てほしい」って言われたからっていうのもある。



 ちなみにお兄様はあの後、学園に戻らなければいけないって帰っていった。

 『何かあったらすぐに連絡するんだよ、エミー』っていつも通り優しく笑ってお兄様は去っていったのだ。



 ちなみに王宮内にも私とエミイルダの話は知られているみたいで、中には私に嫌な目を向けてくる人もいる。私が貴族の血も引かない存在だからだろう。正直そういう視線に嫌な気持ちになった。

 でもお父様とお母様が、本物のエミイルダと同じように私を愛してくれているっていうのを示してくれていた。多分、それを示すためにも私を王宮に連れてきたのだと思う。


 入れ替えられていた子供だろうとも、実の子供のように思っているから変なことをしないようにってそういう風に守ってくれているのだ。

 あと私が入れ替えられていた子で偽物だと知ってもいつもと変わらない態度をしてくれる人は逆にとってもいい人だと思う。……というかこれから嫌な視線も向けられたりするんだろうなぁ。でも家族が味方でいてくれるのならばそこまで怖くない。





 陛下と王妃殿下……今まで私は公の場以外では、ロキおじ様、ポリーおば様って呼んでいる。お母様から陛下たちには言ってあるって言われたその日に、呼び名はそのままでいいって手紙もくれた。何で私の周りの人たちって皆こんなに優しいんだろう? 私は凄く恵まれている。





「お久しぶりです。ロキおじ様、ポリーおば様」

「久しぶりだな。ファエミラという名前をノンベルドからもらったんだって?」

「はい。お兄様がプレゼントしてくださいました。そしてこちらが、エミイルダです」



 以前と変わらない態度をお二人がしてくれて私はほっとして、以前と同じように笑いかけた。

 お母様とお父様も優しく笑っている。エミイルダは緊張した面立ちだ。



「わ、私はエミイルダ・フォリダーです。よ、よろしくお願いします」

「あらあら、緊張しなくていいのよ。エミーと同じように呼びかけてもらって構わないわ」

「え、えっと……」


 エミイルダは流石に親戚とはいえ、いきなりそういう呼び方は出来なかったらしい。相手は王様と王妃様だもんね。ロキおじ様たちもそれを分かっているから、ゆっくりでいいって笑っていた。


 しばらくお母様とお父様と、エミイルダと、ロキおじ様、ポリーおば様と会話を交わす。

 エミイルダの緊張も少しずつほぐれてきて良かった。

 

 そうやってほっとしているとバタバタとした足音が聞こえてきた。





「エミーが来ているって!?」

「俺たちの従姉がエミーじゃないってなんだよ!」

「エミーお姉様!」



 それは私にとって従弟として仲よくしてきた同じ年の第一王子ライモードと、一つ年下の少し生意気な第二王子エマウロと、私の事を姉のように慕ってくれている三つ下の王女のジリオラだった。



 私が偽物だと知って混乱している中で、私が王宮にきていることを知ってやってきたらしい。

 ……ちょっと緊張する。私が血の繋がりもない赤の他人だって知ったら、この三人は何というだろうか。



「お久しぶりです。王子殿下と王女殿下の耳に入っているように、私は公爵家の血を引いていない取り違え子でした」

「エミー。そんな口調と呼び名をしないでくれ。寂しいだろう」

「エミー! 久しぶりに会ったと思えばなんだその口調!!」

「エミーお姉様……いつものようにジリオラって呼んでください!」



 実際は公爵家の血も引いていない私に呼び捨てされるのは嫌かなぁ……って思ってドキドキしながら告げた言葉には思いっきり三人に文句を言われた。



 取り換えられていた子だったとしても、それでも従姉弟として育ってきたからってそう言って笑ってくれた三人に本当にほっとした。そしていつも通りの口調と呼び名に戻せば、三人とも笑った。



 その後、エミイルダも三人に挨拶をした。『精霊姫の恋』の中では、最初からエミイルダに三人とも好意的だったはずだけれど、何だか様子が違うわ。……んー、三年も早まったから?



 ロキおじ様に遊んでおいでって言われて、私たち五人は遊ぶことにした。





 

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