エピローグ
1/23 三話目
『精霊姫』と呼ばれている私たちが他国から狙われてからしばらくが経って、私とエミイルダは学園を卒業した。
卒業までの間に、精霊たちによって起こされたことの影響で私とエミイルダの環境は色々と変わった。
精霊視の力をこの国や友好国との間で使ったりしていた。
私が他国に行く時は、ノンベルドがいつも私の護衛をしてくれていた。ちゃんとロキおじ様やライモードに許可をもらってるらしいけれど、他国に行くなら傍にいるって言い張るノンベルドに思わず笑ってしまった。
でもちゃんと、正攻法で許可をもらって護衛をしてくれているからそういうところちゃんとしていると思う。
エミイルダに関しては、他国に行く時は国の騎士たちを連れて行っているけどね。私とエミイルダの力が誰かのために使えることは嬉しかった。
そういう功績も認められて、私は偽物の『精霊姫』なんて言われることもなくなっていた。
幾ら公爵家の血を継いでいなくても、私は公爵家を継ぐノンベルドに嬉しいことに愛されていて、そして『精霊姫』としての能力をちゃんと持っているから。
だから我が国には、私とエミイルダっていう二人の『精霊姫』がいるって言われている。
あと何がどう噂が出回ったか分からないけれど、『精霊姫』を見れたら幸せになれるみたいな噂も出回っているみたい。特に私はあまり外に出ないからエミイルダよりも見かけられないからレアだって言われているみたい。
ちなみにエミイルダは卒業後、王宮で働いている。
まだまだ結婚するつもりもないみたい。いつかエミイルダが結婚する日が見れたらいいなぁ。本人は未婚の『精霊姫』目当ての独身男性に近づかれて大変そうだけど……。
エミイルダが言うには「エミーとノン兄様見ているとそういう関係がいいのよ」って言ってた。
そして今日は、私とノンベルドの結婚式だ。
ノンベルドはこれからフォリダー公爵家を継ぐ。そして私は公爵夫人になる。
何だか、不思議な気分。
「ファエミラ様、どうなさいましたか?」
「ちょっと、夢みたいな気持ちで」
自分がこのフォリダー公爵家の娘ではないと知った時、そしてこの世界が『精霊姫の恋』の世界だと知って、もうノンベルドと関わることもなくなって――独りぼっちになるのだと思っていた。
でも結果として私は何も失うことなくて、大切な人たちに囲まれて幸せに過ごしている。それに加えてノンベルドと結婚しようとしている。
夢みたい。
愛されないはずだった。そんな偽物の『精霊姫』である私が、ノンベルドと結婚が出来るなんて。
そうやってぼーっとしていたら、ノンベルドがやってきた。
「エミー、綺麗だね」
「ふふ、ノンベルドもとってもかっこいいわ」
私は前世の記憶があるから、やっぱり真っ白なウエディングドレスが着たくて、そういうのをオーダーした。ノンベルドもそれにそろえてくれたの。
ノンベルドにはすっかり前世の記憶があることも伝えてある。ノンベルドは私にそういう記憶があろうがなかろうがエミーはエミーだってそう言っていた。
「ねぇ、ノンベルド。私、凄く夢みたいな気持ちなの。ノンベルドの奥さんになれるなんて……嬉しい」
嬉しくて、思わず笑ってしまう。
そんな私のことをノンベルドが愛おしそうに眼を細めて見ていて、私も嬉しくなった。
「俺の方こそ、夢みたいだって思っているよ。俺は昔からエミーを特別だと思っていたけれど、エミーのことは妹だから、エミーとずっと一緒には居られないって思っていたから。俺の『精霊姫』が実際は妹じゃなくて、そして結婚してくれるなんて俺は幸せものだ」
「私も……」
「ありがとう。エミー。俺のことを好きになってくれて、俺を選んでくれて」
「ノンベルドもありがとう。ノンベルドはとってもかっこいいのに、私の事を愛してくれてありがとう」
二人でそうやって、お礼を言いあって思わずくすくすと笑いあった。
私は今日、ただのファエミラからファエミラ・フォリダーになった。
大好きなノンベルドの奥さんになった。
私は今日も明日も、ずっとその先も――ノンベルドの傍に居る。
「エミー。ずっと俺の傍に居てね。俺の『精霊姫』
――私はノンベルドだけの、『精霊姫』だから。
これで完結になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
元々、もう少し短めに12月中に終わらせる予定だったのですが、少しだけ過ぎてしまいました。
続き書けそうだったので少し予定より長くなりました。最初は告白して婚約者になって終わりで終わろうかと思っていたのですが、ちょっとだけ色々追加しました。
エミーとノンベルドの物語、書いてて結構楽しかったです。本物も偽物も含めて仲よくしている感じにしたくてこんな感じになりました。
少しでも何か感じていただければ嬉しいです。
2022年1月23日 池中織奈




