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12/11 二話目

 明らかに大泣きした後の私がお兄様に抱きかかえられていて、お父様とお母様のいる場所へ向かう最中に使用人たちに色々話しかけられた。

 心配そうに声をかけてくる使用人たち。

 そんな使用人たちにも、私は嫌われてしまうのだろうか。

 彼らだって私が偽物だって知ったらどう思うか分からない。



 また泣きそうになる。

 ……お兄様はそんな私に安心させるように笑いかける。



「エミー、大丈夫だよ。エミーが心配するようなことはないから、俺に任せてね?」

「……うん」


 お兄様があまりにも優しく、自信満々に笑うから私も笑ってしまう。

 やっぱり私はお兄様のことが大好きだなぁと思った。



 そうしているうちにお父様とお母様のいる部屋へとたどり着く。

 お兄様がノックをして中へ入る。


 お父様とお母様は私の顔を見て驚いた顔をする。



「あら、エミー、どうしたの?」

「エミー、誰かに虐められたのか!?」


 お母様も、お父様も、私の事を心配してくれている。

 ……私は、本当の娘じゃないのに。血の繋がらない、存在なのに。



「えっと、私……」


 自分が大好きな二人の娘ではないということを口にするのが怖くなった。さっきはお兄様一人相手だったし、勢いで告げられたけれど。怖い。二人がどんな反応をするのか怖い。私が本物ではないって知ったら……って怖くて、不安で。


 そんな私をお兄様はソファに座らせる。そして使用人たちを大体下がらせる。この場にいるのは、私たちとこの家に長く仕えている執事長だけになる。

 私は自分で真実を告げる勇気もなく、どうしたらいいか分からない。言葉が出てこない。



「エミー大丈夫だよ。俺が説明するから」


 お兄様は、そう言ってにっこりと笑って私が先ほど告げた言葉を説明し始めた。



 私に精霊視の能力が開眼したこと。それに関してはお父様とお母様は喜んでいた。

 だけど精霊たちから私がこの家の実の子供でないことを告げられたことを言えば、お父様とお母様が私を唖然とした目で見た。身体が震える。……私はこの家の子でないのに、偽物なのに、この家の子として生きていたから。




「なんだと、じゃあ本当の――」

「父上! 怒鳴らないでください。エミーが怖がってます」

「しかしっ」

「父上、エミーもこのことを今日初めて知ってショックなんです。そして本当の娘じゃないのにこの屋敷に居ていいのだろうかって不安がってます。でも俺にとってエミーはエミーなんです。まずはエミーを安心させましょう」



 お父様がお兄様の言葉に黙る。私は何を言われるのか怖くて下を向いてしまう。怖いし、泣きたい。大好きなお父様に嫌われてしまっただろうか。私が、本当の娘じゃないから。




「その通りよ。貴方。私たちだって可愛いエミーが娘じゃなかったと聞かされてショックだけれども、一番ショックなのはエミーよ。エミーは隠すことも出来たのに正直に口にして不安で震えているのよ?」

「あ、ああ」

「エミー」



 お母様の優しい声が聞こえる。お母様が私に近づいてきたのが分かる。ソファに座る私に視線を合わせるようにお母様がかがんで言う。



「エミー。怖がらなくていいわ。私は貴方に悪いようにはしないわ。それに血がつながらなかったとしても、貴方は私が赤ちゃんの時から育てて可愛がってきたエミーなのよ。血がつながらなくても、貴方は私の可愛い娘よ」

「お、母様……」

「泣かないで、エミー」


 思わず涙が溢れれば、お母様が涙を拭ってくれる。



「貴方、エミーはこのまま我が家で育てます。血の繋がりがないのが分かったとしても可愛い娘だから」

「当然だ! ま、まさか、エミー。私がエミーを血がつながらないからと追い出すと思っていたのか?」


 毅然としたお母様の声と、お父様の戸惑うような声が聞こえる。

 顔をあげれば、優しい目でお兄様が見てる。お母様も笑ってる。お父様が戸惑ってる。





「お父様……私、此処にいていいの……?」

「当たり前だろう! すまない。エミー。突然のことで、私も取り乱してしまった。ショックだっただろうに、ちゃんと言ってくれてありがとう。血の繋がった娘の捜索はするが、エミーを追い出すつもりはない」



 お父様はそう言って私の頭を撫でた。

 私はそれにほっとして、小さく笑った。良かったと安心した気持ちで一杯だ。




「それで、父上、母上……」



 お兄様が何かをお父様やお母様に提案している。何て言っているかは分からないけれど、お兄様は私に任せてねって言ってくれた。私は大好きなお兄様の言うことを信じている。

 だからこれからどうなるかは分からないけれど、きっと大丈夫だと……思いたい。

 お父様とお母様とお兄様は此処にいていいよって言ってくれたけれど、私が血の繋がらない娘だと知ったら態度を変える人もいるかもしれない。

 この場にただ一人残ってた執事長も目が合うと私にいつも通り笑いかけてくれてる。


 お父様とお母様とお兄様、それに執事長を見てほっとする。

 私は泣き疲れてうとうととしてしまう。



「父上、母上、俺はエミーをベッドに運びます」



 そしてうとうとしている間にお兄様に抱きかかえられて、私は部屋へと運ばれるのだった。









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― 新着の感想 ―
[良い点] 血はつながっていないと知っても、家族でいてくれる皆さまが素敵です。
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