表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/20

17

 内通していた生徒は捕らえられ、騎士達に捕まった。

 これから罰せられるらしい。知らないうちに内通していたのならば救いがあっただろうが、明確な敵意があった上でそういうことを行ったそうだ。

 ……近くにエミイルダや私に対する敵意を持つ人がいたのだと思うと、恐ろしかった。



 『精霊姫の恋』の中ではなかった事象が確かに起きていて、もっと私やエミイルダは狙われるのかもしれない。

 そう思うと本当にどうしたほうがいいのだろうかという不安も募る。



「エミイルダ、大丈夫?」

「うん、大丈夫よ。ちゃんと対応したもの」



 エミイルダは怪我をしたとはいっても軽傷だった。

 エミイルダがそのまま攫われたり、大怪我をしたり――もしくは死んでしまったりしたらってそれを考えるだけでも怖い。


 私は一度死んで、こうして生まれ変った。

 その事実は、死んだその先があるということに他ならない。でも私たちは今を生きていて、例え生まれ変わりがあるとしても、今を失いたくないのだ。



 大切なエミイルダが亡くなるかもしれないと想像するだけでも恐ろしくて、攫われてしまえばもう二度と会えなくなるかもしれないなんて考えるだけでも、恐ろしい。




「エミー、大丈夫?」



 攫われそうになったのは、エミイルダなのに。

 私の方が不安そうな顔をしてしまっていたのか、エミイルダに心配されてしまった。




「ごめんね。エミイルダ。エミイルダの方が怖い思いをしたのに……、私がエミイルダを心配しなきゃなのに」

「そんなの気にしなくていいわ。結果として私は此処にいて攫われていないのだもの。私もエミーも、無事にいればそれでいいのよ。私はこのまま攫われるつもりもないし、エミーを攫わせるつもりもないわ。まぁ、エミーに何かあったらノン兄様が暴走するのは目に見えているわ。エミーが攫われたらきっと命に替えても助けそうだわ」

「……命に替えては困るわ」

「それだけ愛されているってことだわ。でもそれは困るから、危険な目に合わないようにもっと気をつけましょう」



 ノンベルドは私のことを大切に思ってくれている。

 私に何かあればきっとそのすべてを投げ出して助けてくれようとはするだろう。

 でもそういうことを考えると、私は守られるだけだと嫌だと思う。



 だって私が狙われていて、私が当事者で。

 そういう中で、ただ守られることを選択するのは何だか違う気がする。私はエミイルダのことも、ノンベルドのことも、大切に思っている。


 だから二人に何かあるのは嫌だし、私に何かあったからってノンベルドが無茶をするのも嫌だと思う。




「私にも、何か出来ることがあればいいのに。私たちを狙っていると言う人たちが、諦めるような何かが出来ればいいのに……。誰かを傷つけることは嫌いだけど、でも、大切な人たちが傷つかないために精霊たちにお願いをするぐらいは出来るかなって……」

「私も、出来ることは出来るだけしたいと思うわ。ただ大人しく全てが解決するのを待つなんて性に合わないもの。でも私たちが勝手に行動したら周りに迷惑をかけてしまうわ。だから、まずはノン兄様やライモードたちに相談しましょう。私たち自身が出来ることが何があるのかって、それは私たちだけで判断すべきものじゃないもの」



 私の言葉にエミイルダは頷きながら告げた。



 私もエミイルダも、何か起きた時にただじっとしているという性格をしているわけじゃない。

 周りのことを大切にしているからこそ、狙われている私たち自身で出来ることがあるのならば何でもやりたいと思う。


 寧ろ、完全な当事者である私たちだからこそできることがきっとある。

 ――最善を尽くして、誰かが傷つかないように、何かを失わないようにそんな風にしたいと思った。




 けど、やっぱり心配性のノンベルドには「エミーはそんなことをしなくていいのに」と言われた。

 それはノンベルドが私を心配して、私を慈しんでいるからこその言葉。


 だけど私はそれに答える。



「――ノンベルド、私は守られるだけなんて嫌だもの。私が何もしなくて、ノンベルドが無茶をすることになったりしたら、とても悲しいの。私はノンベルドのことが好きだから、ノンベルドのことを守りたいと思うの」



 そう言って真っ直ぐにノンベルドを見つめれば、仕方がないなぁとそういう笑みを浮かべられた。



「本当、俺の『精霊姫』は嬉しいことを言ってくれるね。俺はエミーが大人しく守られてくれた方がほっとするけれど、でもエミーがそう言ってくれるのは嬉しいよ。それが俺の愛しているエミーだからね。でも、無茶はしないようにね」

「もちろん。私もエミイルダも、自分自身が傷つくようなそういう無茶をする気はないの。ただ何か出来ることがあったら最善を尽くしたいって思っているだけだから」




 自分の身に危険が迫るような無茶をする気はない。

 そう言い切ればノンベルドは、何だかんだ私とエミイルダが動く事に賛同してくれた。



 それから私とエミイルダがどう動くべきかというのを、ノンベルドやライモードたちと相談をした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はじめからノンベルドがひたすらにエミーを溺愛しているので、安心して楽しく読めて好きです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ