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「『精霊姫の恋』だと結局、エミイルダは誰と恋したの?」
「それは秘密です! そういうネタバレない方が楽しいでしょう。現実のエミイルダ様には、是非とも現実だからこその恋愛をしてほしいですし」
「まぁ、確かにそうね」
ユーゾンさんにエミイルダの恋の事を聞いたら、そんな風に言われた。
それにしてもエミイルダは、精霊視の能力も持っているし、とても綺麗だし、優しいし――異性に好かれるのがよくわかる。
実際に学園に入学してしばらくが経ち、エミイルダは多くの人たちと交流を深めている。
私はエミイルダやクラスメイトの女子生徒たちとよく一緒に居る。
エミイルダが「ノン兄様から男を近づけないようにって言われてるから」って言って、防波堤みたいなのを作ってくれているらしい……。
ノンベルドは本当に心配性で、私の事を好きでいてくれている。だからなるべく異性と話さないでほしいんだって。異性と話したとしても私にとって一番かっこいいのはノンベルドで、ノンベルド以外には心惹かれないのに。
でも私もノンベルドが女性と仲よくしてたら嫉妬しちゃうけれど。
だから私はなるべく異性とは話さないようにしている。必要最低限な所は喋るけれど。
エミイルダは色んな人と会話を交わして、沢山交流している。
それに『精霊姫の恋』の中で出てきた人達も沢山いて、何だか不思議な気持ちにはなる。でも小説と同じ世界観と似ていても、皆生きているから、色々違うんだろうけれど。
そもそも私がフォリダー公爵家にずっととどまった時点で変わっているしね。
ユーゾンさんと会話を交わした後、エミイルダと話した。
「エミイルダは、誰が好きなの?」
「誰が好きとかないわよ? エミーは恋話が好きね」
「うん。エミイルダが誰と結婚するのかなって」
「エミーにはノン兄様がいるから将来の心配ないものね。私もエミーとノン兄様を見ていると、いいなぁっては思うわ。でもそんな風に愛し愛される関係って中々出会えないと思うの。だからのんびり探したいって思うわ」
「愛し愛された関係って……ま、まぁ、私はノンベルドが大好きだけど」
「本当にエミーは可愛いわね。だからノン兄様も溺愛しているのだろうけれど」
私とノンベルドを見ていると、そういうのがいいなと思うなんて……そんなことを言われて素直に嬉しかった。
ノンベルドは私の事を大切にしてくれている。
それは学園に入学して、ノンベルドのことを知る人たちと交流を行って――そして私はより一層ノンベルドが私を好きでいてくれていることが分かった。ノンベルドが私を好きだっていうのがより一層伝わって、私は幸せな気持ちで一杯である。
ノンベルドに会えない間もノンベルドのことをよく考えていて、エミイルダやユーゾンさんによく惚気てしまっている。
それにしてもエミイルダが誰と付き合って、誰と結婚するのだろうって、とても気になる。
エミイルダが『精霊姫の恋』の主人公だからというのもあるけれど、ただたんにエミイルダのことが大好きだから。だから、エミイルダが幸せになってくれたら嬉しい。エミイルダが誰かに傷つけられたら嫌だし、エミイルダが悲しんだら嫌だもの。
でもよく考えると、エミイルダは精霊と仲良しだからエミイルダが悲しんだら精霊たちもそれに共感してしまうと思うのよね。私の周りでも私の感情に共感して楽しそうに飛び回ってたりよくするし。
「特に私とエミーは精霊視の能力を持っているから、誰かとの接し方には気を付けた方がいいのよね。下手なことすると精霊達が勝手に何かしそうだし。というか、エミーに何かあったら絶対ノン兄様も暴走するし」
「そうだね。危険な目に遭わないようにしないと」
私もエミイルダも精霊との親和性が高い。その親和性は大体同じぐらいだ。だけれど私とエミイルダではどの精霊との親和性が高いかが少し違う。
私はどちらかというと火とか闇とか攻撃属性の強い精霊との親和性の方が高い。エミイルダは回復などの守りや補助系が得意な精霊との親和性が高い。
ユーゾンさんがいうには、偽物のエミイルダは『精霊姫の恋』の番外編の中でもノン兄様との追いかけっこの際に精霊に頼んで色んなことをして、戦いの場にもいたらしい。今の私も戦えるかもしれないけれど、戦場になんて出たことはない。
『精霊姫の恋』のように偽物だと告白しなかったら、そうなっていたのだろうか。
なんてそんなことを考えながら過ごしているうちに社交界デビューを行う時期がやってきた。
私も当然ノンベルドがエスコートしてくれる予定だ。エミイルダは誰からエスコートされるのかなぁってワクワクしている。
社交界デビューして、パーティーに今よりも参加するようになったら、私たちの世界も広がってもっと知り合いも増えていくのだろう。
その中で、エミイルダも誰か好きになる人と出会うのだろうか。
ノンベルドにエスコートされるのも楽しみだし、エミイルダがどんな人と出会うかも楽しみ。