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「ノンベルド、色んなお店があるわね」
「そうだね、エミー」
ノンベルドと手を繋いで、街を歩いている。
ノンベルドと婚約を結んでから、フォリダー公爵家の領地は二人で出かけたことが何度かある。ノンベルドは剣の腕も凄いし、魔法だって使える。この世界、魔法を使える人も数えられるだけだから、ノンベルドは本当にすごいの。
そんなノンベルドと、そして精霊たちの力を借りられる私だから二人でぶらぶらするのも許されている。
まぁ、私のあずかり知らぬところで護衛もいるかもしれないけれど……。
ノンベルドが過保護だからというのもあるだろうけれど、ノンベルドがいない状況で街に出たことってほとんどない。そう考えると私の世界って、とても狭いと言えるのだろう。
学園に入って、もうすぐ社交界デビューもあるし、私の世界はもっと広がるのかなぁ。
ノンベルドはついこの前まで学園に通っていたから、この街についても詳しい。ノンベルドがよくいった場所とかにも案内してくれる。ノンベルドの学生時代を知っている人たちが沢山いて、挨拶を出来るのも嬉しかった、
皆一様に、私へのノンベルドの態度を見て驚いた。
「ノンベルドは、私にだけ優しいの? 皆、ノンベルドが私に優しいの、凄い驚いているもの」
「俺はエミーには誰よりも優しくしたいからね。好きな相手に優しくするのは、当然だろう?」
ノンベルドは恥ずかしがりもせずに、そう言い切った。
私は顔を赤くする。ノンベルドはにこにこと笑っている。
「エミーもなるべく俺にだけ優しくしてね? 俺はエミーが他の人と仲よくしているとちょっと嫌だから」
「うん。私も、ノンベルドが他の人に私にするとの同じように優しくしているのは、ちょっと嫌だもの」
「もちろんだよ」
ノンベルドは私が誰かと仲よくしていると、嫉妬してしまうっていうそういうことを素直に口にする。私も同じように口にしたら、ノンベルドは笑う。
学園のある街には、沢山のお店があって、ノンベルドはアクセサリーを買ってくれたりした。いつももらってばかりだから、私もノンベルドのために何かしたいなって思ったりする。
ノンベルドは私がただ笑っているだけでいいって言ってくれているけれど、ノンベルドのために出来ることを考えたいなって思う。
お勧めの飲食店で食事もする。貴族もよくくるところみたいで、ノンベルドは学生時代に何度か此処にきていたみたい。二人で食事をするのも何だか楽しかった。
「エミー、美味しい?」
「ええ。美味しいわ」
「エミーが気に入ってくれてよかった。エミーが友達と食事をするときも是非使ってね。今回でお店の人たちもエミーの顔を覚えただろうから」
「うん」
それにしてもノンベルドは、私がご飯を食べているだけなのに嬉しそうな顔をしていた。
にこにこと微笑む姿に、私も笑う。
食事も美味しいのだけど、何よりも嬉しいのはノンベルドが一緒に居てくれるから。
ノンベルドが私のために時間を割いてくれたことも嬉しいし、こうして笑ってくれることも嬉しい。
「ノンベルドは騎士としての生活どう?」
「まぁ、普通かな。充実している日々だけど、やっぱりエミーが近くにいないと寂しいね」
ノンベルドの普通ってどんな感じなんだろう?
騎士としての生活ってどういうものなんだろうか?
そう思って、気になっていることを色々と聞く。ノンベルドは次々と質問をしても、嬉しそうに微笑みながら、答えてくれる。
ノンベルドは新人騎士たちの中でも活躍しているみたい。自分から自慢とかはしないけれど、聞いている限りそんな感じ。
やっぱりノンベルドって、かっこいいんだよね。
見た目だけじゃなくて、優しくて、かっこよくて……。本当にそんなノンベルドが私の婚約者で、私の事を愛してくれていることが時々信じられない気持ちになったりする。
ユーゾンさんは、「ノン×エミは至高」とか言ってくれるけれど、時々本当に私でいいのかなって思ったりする。でもそれは私がノンベルドのことが大好きで、ずっと一緒に居たいと思っているからこその気持ちなんだと思う。
「どうしたの、エミー」
「やっぱりノンベルドはかっこいいなぁって。だからこんなにかっこいいノンベルドが私の婚約者なの、信じられないなって思ったの。私、自分が公爵家の娘じゃないって知った時、ノンベルドの側にもいられなくなるんだろうなって思ってたから」
そう言ったら、ノンベルドに「エミーだけが俺の唯一なんだから」ってそんな甘い言葉を口にされた。
その優しい表情に私はいつもドキドキする。
お出かけが終われば、ノンベルドが私を学園に送り届けてくれる。
別れる前に、口づけをされた。
さらっとキスされてしまったことに、私は顔を赤くしてしまった。
ノンベルドが去った後、見ていたらしいユーゾンさんに「はぁはぁ、ノン×エミ最高すぎるっ」って興奮したように言われた。
ノレッラ様も「あれだけノンベルド様がファエミラ様を愛しているなら認める他ありませんね」と言っていた。
それ以降、ノンベルドに相応しくないみたいに言われることはなくなっていった。