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メインシナリオ進行[前編]

魔王と神の戦いから数日経った休日、俺はエメラダを連れて買い物に来ていた。

「何を買うつもりなの? わざわざ私を連れてきて」

「ん? このあいだ勉強みてくれただろ、そのお礼をしようと思って」

目的の店の扉を開け中へ入る。

「こんにちはー。頼んでおいた物できてる?」

「いらっしゃい! できてますよ」

店員からプレゼント用に包装された商品を受け取る。

「エメラダ、この前はありがとう。気に入ってくれるか分からないけど」

そしてそのままエメラダに渡す。

エメラダは意外そうにプレゼントをまじまじと見る。

「アタシにくれるの? 開けていい?」

「もちろん」

丁寧に包装紙を解いた箱の中には

「キレイ……。ローズクリスタルのブローチね」

筆記試験が終わった日、素材(バラとクリスタル)を購入してこの店に持ち込み、魔法でバラを結晶化してブローチに加工してもらったのだ。

戦闘の邪魔にならないように5cm程度の大きさにしてもらった。

「似合うかしら?」

さっそく胸につけてくれた。

主張しすぎず、クリスタルレッドがちょうど良いアクセントになっている。

「うん。似合ってる」

たんに花束でも良かったのかもしれないが、それはなんとなく気恥ずかしかった。

エメラダはこれまでアクセサリーをつけていなかったからそういうの興味ないのかもと不安だったが、そんなこともないようで安心した。

店を出てどこかで昼食を食べようかと話していると、遠くから何かが壊れる音や悲鳴が聞こえてきた。

「何だ?」

急いで音がしたほうへ行ってみると、男が魔獣とともに建物を破壊したりして暴れていた。

「何やってんだよアレ」

エメラダに取り押さえてもらおうと頼む矢先、黒い影が飛び出し目にも留まらぬ速さで男と召喚獣を鎮圧してしまった。

「ハッ、おらは何やってたんだ?」

「はぁーっはっはっは!」

この自信にあふれた笑い声は!

「どうだフォックス、この俺の新しい相棒・ルーブの強さは!」

やはりフィヨルドだった。悠然と佇んで圧倒的な強さを見せつけた召喚獣を見やる。

全身黒い毛に覆われた人間の男の姿に似た狼、人狼(ワーウルフ)

獣人族の中でもスピードと近接攻撃力に優れたSSR魔獣だ。

「あれから召喚しまくって手にした新しい力だ。

さぁ、もう一度勝負しろ!」

「せっかくの休みなんだ。また今度にしてくれよ」

「逃げるのか? 前の勝負がたまたま相性が良かっただけと証明されるのが怖いか」

「しつこいやつね。今のアタシの機嫌が良くなかったら、この場で殺してるところよ」

物騒だな。案外挑発に乗りやすいエメラダ。

「主よ。こちらは勝負を申し込む側だ、無理を言ってはいけない」

そばに控えていたルーブと呼ばれた狼男がフィヨルドを(たしな)める。

戦闘のときとは裏腹に落ち着きがあって紳士って感じだ。しかも渋くてカッコいい声。

「ちっ、分かったよ。お前らを倒すことが今の目標だからな。すぐに達成してもつまらない」

いつの間にかライバル視力されていた。

グゥ~~~

俺の腹の虫が鳴った。

「もう昼か。

お前ら、メシ食いに行くか? 奢ってやるぜ」

一行は近くの飲食店に入り、注文をすませる。

「最近、さっきみたいな事件が増えてるよな」

料理が届くまでの世間話にフィヨルドが話題を持ち出す。

「そうなのか?」

「新聞読んでないのか? 召喚獣を悪用した事件があちこちで発生してるんだよ。

しかも犯人はみな口を揃えて事件当時のことを覚えていないって言っているらしい」

そういえばさっきの男もそんなようなことを言っていた。

「俺はさ、この事件は全て同じもので誰かが裏で糸を引いてるんじゃないかって思うんだ」

「ふーん」

探偵の真似事に興味はないので適当に相づちを打つ。

「そのとおりです」

聞き覚えのある声が話に割って入ってきた。

「なんでここにっ!?」

店の入り口のほうからジョセフと神がこちらに向かって歩いてくる。

俺は身構えるがそれを制したのは意外にもエメラダだった。

「やめなさい。今の二人からは敵意を感じないわ。戦うつもりはないみたい」

「そうだよ兄さん。僕たちは兄さんたちに話があって来たんだ」

「なんだ、お前の弟か?」

「あぁ、弟のジョセフと召喚パートナーだ」

ジョセフはフィヨルドやルーブにも視線をおくる。

「さきほど犯人を捕まえたのはあなたたちだよね。そのときの様子を聞かせてほしいんだ」

「そうだな。魔獣は契約主の命によって動いている感じはしなかったな。暴走に近かったかもしれない。

人間のほうは一見、自分の意思があるように思えるが何か違和感を感じた。それが何かは分からないが」

ルーブは腕を組み、そのときの状況を思い出しながらゆっくりと答えた。

「やはりそうですか…」

「何なんだよ、いきなりやって来て真面目な話をして。ジョセフもこの事件には黒幕がいるとか考えてんのか?」

ジョセフと神様はいったん顔を見合わせて再びこちらを見る。

「これから兄さんの学校の学園長に会いに行こうと思う。一緒に来てくれるかい?」

「俺も行くぜ」

なぜここで学園長が出てくるのか分からなかったが、めんどくさいから断ろうとする前にフィヨルドが答えた。

「ずいぶん乗り気だな?」

「面白そうだ。それに召喚者として名を売るチャンスだからな」

流れで俺も行くことになった。

「とりあえず先に昼メシ食わせてくれ」


「ワシに話とはなんじゃな?」

学園長室で書類作業をしているウン・エイに会いにやって来た。

「学園長先生はいまあちこちで起きている事件のことをご存じですか?」

「召喚獣事件のことかな?」

「単刀直入に言います。僕たちはこの事件を裏で操っている人がいて、その人物は第一級指名手配犯のアシスターであると思っています」

その名を聞いて学園長の表情が悲しそうに曇る。

「確かに。君のいうようにもし契約者と召喚獣の精神リンクに干渉して操っているのだとすれば、それができるのはそやつしかおるまいな」

話についていけない。アシスターは名前だけは聞いたことあるけど、実際にどんな罪を犯して指名手配されているのかすら知らない。

「おいジョセフ、どういうことか説明してくれよ」

「ワシから説明しよう。

フォックスとフィヨルドはシャルル・ルートヴィヒという名を知っておるか?」

「たしか稀代の天才魔法使いで学園長と一緒にこの学園を創立した人だっけ?」

「うむ。おぬしらの使う召喚魔法を開発したのもそのシャルルなのじゃ」

それはすごい。この世界と異世界を繋ぐ魔法なんて簡単に創れるような魔法じゃないことは俺でも分かる。

「シャルルはワシが勤めていた魔法学校の教え子だったんじゃ。

教え子といってもシャルルにとって学校は教わる場所ではなく、自らで学ぶ場であった。

わずか10才で学校の資料を全て読破してしまったまさに天才だった。

しかしあの子が12のとき、モンスターに両親を殺されてしまった。

天涯孤独となったシャルルをワシが引き取った。あの子はそれ以降、力のない者でもモンスターに対抗できる手段を研究し、そして召喚魔法を開発したのじゃ」

なるほど、そういう経緯で召喚魔法が創られたのか。

この魔法のおかげで俺はエメラダと会えたし、力のない人々も自衛できるようになった。

「ワシはあの子の想いを叶えるためにこの学園を設立した。

シャルル自身も数年間は自ら教壇に立っていたが、世界をまわって魔法の研究をしたいと言って旅に出た」

学園長は机の引き出しから手紙を取り出す。

「あの子が旅に出てからも手紙のやり取りをしとった。

ある年の手紙に自分と同じモンスターに家族を殺された者を助手にしたと書いてあった」

「それがアシスターなのですね」

「あぁ。ワシは会ったことはないが、手紙には確かに助手の名はアシスターと書いてある」

学園長は大切なものをしまうようにそっと引き出しに戻した。

「シャルルとアシスターの間で何があったのかは分からん。もしかしたら、はじめからシャルルの研究が目当てで近づいたのかもしれん。

召喚魔法はとても複雑で、どのような原理になっているのかワシにも分からぬ。

分かるのはおそらくシャルルと助手をしとったアシスターだけじゃろう」

「なるほど。それでジョセフはすぐにアシスターって奴が犯人だと思ったのか」

「アシスターは町を一つ滅ぼしたこともある危険人物なんだ。今回の事件もただ人を操って暴れさせているだけとは思えない。放っておいたらもっと大変なことになる。

学園長先生、アシスターについて他に知っていることはありませんか?」

「シャルルからの手紙には詳しいことは書かれていなかった。ワシにもアシスターのことはほとんど分からぬ。

アシスターについて知りたければ、彼らが研究所として使っていた施設に行ってみるといいだろう」

学園長から研究所の場所を教わる。この街から往復で一ヶ月以上かかりそうだ。

「フォックスよ、おぬしも行くのであれば休学扱いにしておこう」

俺は流れでついてきただけなんだが…

「兄さんたちも協力してくれないか?」

つい先日エメラダを倒そうとしといて都合のいい話だと思わなくもない。

それに神とジョセフだけでも事件は解決できる気がする。

「他の人間がどうなろうと興味ないわね。コイツが行かないのなら、アタシも力を貸す気はないわ」

エメラダの言葉に神の表情が一瞬険しくなった。

「フォックスさん、力をお貸しいただけませんか? もちろんお礼はさせていただきますので」

あっ、まずは俺を仲間に引き入れる気だ。

「学園長、俺は?」

「アシスターが精神リンクに干渉する(すべ)を持っているのであれば、おぬしとその召喚獣が操られる可能性は高い。SSR2体が暴れればその被害は甚大になる。

残念だが、おぬしは学園に残るのじゃ」

学園長の言葉に納得できないフィヨルド

「なんでコイツらならいいんだよ!

コイツらだって操られる可能性があるのは同じだろ」

「たかが人間ごときがこのアタシを操れるわけないわ」

「やはりそうか。

フィヨルドよ、この少女2人は人間ではない。人間よりも高位の存在だ。

その存在と精神の繋がりを持ったこの兄弟のリンクもまた特別だ。

いくらアシスターであってもこの2組に干渉することは不可能であろう」

さすが学園長、気づいていたのか。

ってか、エメラダとのリンクが普通のものとは違ってたなんて知らんかった…。

「何だって!?」

フィヨルドの握る拳がぷるぷると震えている。

「クソッ! 今に見てろ。俺も必ずお前ら以上の絶対的な存在を喚び出してやるっ!」

フィヨルドは先に学園長室を出ていった。

「ジョセフといったか。君たちの部屋を用意しよう。今日はこの学園に泊まるといい」

俺は旅に出るかどうか一晩考えることにした。

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